『ニュルンベルクの開拓者たち』サマリー

ニュルンベルクの開拓者たち Die Siedler von Nürnberg  (Klaus Teuber, 1999)
サマリー Summary


■概要

・    道を引き、家を建て、家から資源を得てさらに建設その他を行い点を得る、一定の点数を得たら勝ち、という大枠は同じ。13点先取。
・    どの家から資源を得るか決めるためにダイスを振るのではなく、イベントカードを1枚めくってそこに書かれたダイス目に従う形に変更。
・    通常の資源その他が出てくるマップ(盤の右側)に加え、建造物を作って3-1交換や2-1交換やその他諸々の能力を得たり勝利点を得たりするための「ニュルンベルク市内マップ」が盤の左側にできました


■内容物

・    ゲーム盤1枚
・    資源カード5種各20(いつもの5種)
・    イベントカード36枚(ダイスのかわり)
・    プレイヤー色(4色)ごとに道駒15(「関所 Zollbalken / Zollstationen」と呼ぶ)・家駒5(「集落 Siedlungen」と呼ぶ)・町駒4(「工房 Handwerksbetriebe」と呼ぶ)
・    城壁タイル 26枚(細長い台形)
・    塔タイル 16枚(いびつな六角形)
・    名声トークン(正方形 1が36枚、5が10枚
・    金貨 1が26枚、5が24枚
・    泥棒騎士駒 1(黒いプラの台座つき)
・    時間マーカー 1(紫色の円錐。木製)
・   Wegerecht(街道最高貢献)タイル:5種類の街道(Venedig=I, Frankfurt=II, Prag=III, IV, V)それぞれにつき1枚
・   Ratskarte(評議会=城壁最高貢献)タイル:勝利点4、勝利点3点、勝利点2 各1


■イベントカード

 『カタン』におけるダイスに相当するのがイベントカード。イベントカードには2~12までの数字がひとつと、1種類のイベントが書かれている。手番の開始時にイベントカードを1枚めくり、書かれている目にしたがったリソースを(『カタン』同様)受け取ってから、イベントを解決する。

 書かれている数字の配分については2D6の確率通り。36枚中、2が1枚、3が2枚、…6が5枚、Raubritter(泥棒騎士。『カタン』の出目7相当)が6枚、8が5枚、9が4枚、…12が1枚。

 イベントについては、
・ Wegezoll(通行料イベント)は14枚。内訳はVenedig(I)が3枚 ( 3 / 4 / 6 )、Frankfurt(II)が2枚 ( 5 / 5 )、Prag(III)が 2枚 ( 6 / 6 )、IVが 4枚 ( 4 / 6 / 6 / 9 )、Vが 4枚 (3 / 4 / 6 / 8 )
・ Kostenloser Lehm(無料粘土イベント。「金貨3枚=城壁」の絵)は4枚 ( 9 / 9 / 10 / 10 )
・ Der Markgraf greift ein(辺境伯介入イベント。城の絵)は4枚 ( 2 / 3 / 4 / 10 )
・ Die Jahre vergehen... (時間経過イベント。砂時計の絵)は3枚 ( 11 / 11 / 12 )
・ イベント無しは5枚 ( 8 / 8 / 8 / 8 / 9 )


■道駒(関所)と家駒(集落)の配置ルール

 道駒(関所)と家駒(集落)は右側マップに建てる。『カタン』のそれに近いが、推奨初期配置を見ると、家駒は道駒と離れて置かれており、通常のカタンとは置き方のルールが違うことがわかる。置き方のルールは以下の通り。
 右側マップには「ニュルンベルク」のへクスがあり、その頂点には「I」から「V」までの番号が割り振られている(番号が割り振られていない頂点も1つある)。この番号が割り振られたそれぞれの頂点からは、よくみるとへクスの辺に沿って、一筆書きの太い線が描かれている。これを「街道」と呼ぶ。街道は従って、「I」から「V」までの5本が存在することになる。なお、「I」「II」「III」の街道にはそれぞれ、「I: Vendig(至ベネチア)」「II: Frankfurt(至フランクフルト)」「III: Prag(至プラハ)」の別名が記されている。
 道駒(関所)は、街道沿いにしか置くことができない。まだ道駒(関所)が一本も置かれていない街道に道駒(関所)を置く場合は、「ニュルンベルク」へクスの頂点を含む辺にしか(つまり始点から先に延ばす形でしか)置けない。すでに道駒(関所)が置かれている街道に道駒(関所)を置く場合、いま道駒(関所)が置かれている先端を始点として、1へクス先に道を延ばす形でしか置けない。なお、通常のカタンと異なり、他人が置いた道駒(関所)を継ぐ形で自分の道駒を置いて全く問題ない。
 家駒(集落)は、自分が道駒(関所)を置いている街道沿いの頂点にしか置けない。1本の街道に対して自分が置ける家駒(集落)の最大数は、自分がいまその街道に対して置いている道駒(関所)の数に等しい。従って、自分の道駒(関所)を街道に置くごとに、その街道に自分が置ける家駒(集落)の数も増える。なお、家駒に「同一の街道沿いで」隣接する頂点には家は建てられない(むろん同じ頂点にも立てられない)が、別の街道上の頂点であれば、隣接とはみなさない。そして、上記のルールを満たしていれば、道駒(関所)に隣接していない場所であっても全く問題なく、家駒(集落)を建てることができる。
 町駒(工房駒)は左側マップに建てるものであり、上記のルールは適用されない。後述。


■Wegerecht(通行税徴税権者=街道最高貢献)タイル

 『カタン』の最長道路に相当。街道ごとに1枚、したがって合計5枚存在する。それぞれ1勝利点。通常カタンと異なり、1本目を引いたら直ちにもらえるので、初期配置中に獲得できる。だれかに追い抜かれるまでは持っておける点は『カタン』と同じ。
 1勝利点に加えて、I(Venedig)、II(Frankfurt)、III(Prag)については、これを持っていると、他のプレイヤーが「物を作り直ちに売って金貨を得る」を実施した際、関税として金貨を徴収できる場合がある。後述。


■ゲームの準備

・    盤を拡げ、イベントカードはよく切って伏せ山にする。
・    資源カード、城壁タイル、塔タイル、名声トークン、金貨、勝利点タイルは盤の脇にストックとして置く(3人ゲームの場合、勝利点タイルのうち、評議会の「2位=3点」のタイルは使わない)。
・    時間マーカーは盤上の最初のマス(「1355」)に置く。
・    泥棒騎士駒は、右側マップの左下に城の絵が描いてあるマスがあるので、そこに置いておく。
・    各プレイヤー、自分の担当色を決め、その色の駒を全て手元に置く。加えて、各プレイヤー、ストックから金貨2を受け取る。
・    適当な手段で初手番のプレイヤーを決める。最初のゲームでは初期配置は推奨があるのでこれに従う。各プレイヤー、道駒(関所)2本と家駒(集落)2個が置かれている。★が書かれているほうが2巡目に置いた家駒であり、資源獲得の対象となる。推奨初期配置を使わない場合、手番には道駒1本を、前述の配置ルールに従って置き、道駒を置いた街道沿いに、前述の配置ルールに従って家駒1個を置く。2巡行う点、2巡目が逆順になる点、2巡目に置いた家駒に従って資源を獲得する点は『カタン』と同じ。


■ゲームの流れ

 時計回りに手番を行う。
 手番プレイヤーは、前述の通り、手番開始時にイベントカードを1枚めくる。イベントカードに書かれた数字に従って全員が資源を獲得し(『カタン』と同じ)、その後イベントカードに書かれたイベントを処理する。
 これが終わったら、手番プレイヤーは貿易・建設・製造販売を任意に行う(『カタン』と同じ)。製造は『カタン』におけるカード購入の代替物だが、ルールは諸々異なる。貿易の際、手番プレイヤーは他のプレイヤーとの貿易を自由に行える点も『カタン』同様。4:1交換は『カタン』同様に可能。3:1交換や2:1交換は、左側マップのしかるべき場所に町駒(工房)を建てている場合のみ可能。
 以上が終わったら、左隣のプレイヤーに手番を移す。


■イベント

Wegezoll(通行料イベント) 14枚
 街道が1種類書かれている。書かれた街道について、その街道のWegerecht(通行税徴税権者=街道最高貢献)タイルを持っているプレイヤーは、その街道に家駒(集落)を置いている他プレイヤー各々から、1駒につき金貨1を受け取る(払えない場合は、不足する金貨1につき資源カード1枚を手札からランダムに選んで渡す。それでも足りなければそれ以上は支払い義務なし)。

Raubritter(泥棒騎士イベント)6枚
 『カタン』の出目7に相当。資源カードを8枚以上持っているプレイヤーは半分にする。加えて、手番プレイヤーは、泥棒騎士を任意のへクス(今いるのとは別のへクス)に動かし、そのへクスの頂点に集落を置いているプレイヤーから資源をランダムに1枚奪う。泥棒騎士のいるへクスからは資源が湧かない点も『カタン』と同じ。

Der Markgraf greift ein(辺境伯介入イベント。城の絵)4枚
 泥棒騎士が初期位置(右側マップの左下隅)に戻る。

Kostenloser Lehm(無料粘土イベント。「金貨3枚=城壁」の絵) 4枚
 全員、望むなら、金貨3枚のみ(粘土なし)で城壁を1つ建設できる。

Die Jahre vergehen... (時間経過イベント。砂時計の絵)3枚
 時間マーカーをトラック上、1つ先のマスに進める。マーカーが「1370」か「1385」のマスに来たら(つまり3枚すべての砂時計カードをめくったら)、イベントカードを全て切り直し、山札を作り直す。マーカーが「1400」のマスに来たら直ちにゲーム終了。


■建設と製造販売について

関所(道駒)の建設
 前述の通り。

集落(家駒。勝利点1)の建設
前述の通り。必要な資源は『カタン』の道駒や家駒と同じ。

工房(町駒。勝利点1)の建設
左側マップの、赤い丸で記された頂点(12カ所ある)にのみ置ける。当然、空いている頂点にしか置けない。ただし、隣接禁止のルールはなく、隣の頂点に工房が建っていても問題なく建てられる。工房を建てると、「任意の資源1種3枚→任意の資源1枚」交換や「指定の資源1種2枚→任意の資源1枚」交換(『カタン』の同種のルールに相当)の権利が得られたり(Hauptmarktのそれぞれ対応する頂点に建てた場合)、塔を建てる権利が得られたり(Bauhofへクスの頂点に建てた場合)、特定の品物を製造販売する際に得られる金額が倍になったり(特定の品物が描かれたへクスの頂点に建てた場合)する。必要な資源は『カタン』の町駒と同じ。

城壁(細長い台形のタイル)の建設
左側マップの外周(外縁のへクスの辺)に、指定された場所(下矢印が書かれている)から反時計回りに順々に置いていく。どこに置いたかは関係なく、単純に、1個建設するごとに、ストックから1名声ポイントを得る。城壁を1個建てるのに必要なコストは土1+金貨3。

塔(いびつな六角形のタイル)の建設
ゲーム開始時点では建てられない。城壁を3つ建てると、2つ目と3つ目の城壁の間に、V字形の隙間ができる(他のへクスと接していない頂点の右側と左側両方に城壁が建つと、その頂点のところに隙間ができる)。このできた隙間に、塔を建設できる。塔を建設する権利があるのは、前述の通り、Bauhofに接する頂点に工房を建てているプレイヤーのみ。塔を建てると、名声ポイント2をストックから得られる。塔の建設コストは土1+木1+金貨3。

製造販売
資源を払って金貨を得る行為。以下の5種類から任意に選択可。販売で得た金貨のうち、記された額の通行税を、販売先に対応する街道の「Wegerecht(通行税徴税権者=街道最高貢献)」タイル保有者に支払わなければならない。対応する場所に工房を建てていると、払う資源の量も払う通行税の量もそのままに、得られる金貨の量が倍になる。
・    Helm(兜):費用は木1+鉄2。販売で得られる金貨は4。販売先はFrankfurt=II。通行税は金貨2。
・    Zirkel(コンパス):費用は木1+鉄1。販売で得られる金貨は3。販売先はFrankfurt=II。通行税は金貨2。
・    Papier(紙):費用は羊2。販売で得られる金貨は2。販売先はVenedig=I。通行税は金貨1。
・    Tand(がらくた):費用は羊1+木1。販売で得られる金貨は3。販売先はVenedig=I。通行税は金貨1。
・    Rüstung(鎧):費用は木1+鉄3。販売で得られる金貨は6。販売先はPrag=III。通行税は金貨3。


■名声ポイントとRatskarte(評議会=城壁最高貢献)タイル

 『カタン』の最大騎士力に近い。
 名声ポイントを最初に3点取ったプレイヤーは、勝利点4のRatskarte(評議会=城壁最高貢献)タイルを取る。2番目に名声ポイント3点を取ったプレイヤーは、勝利点3のRatskarte(評議会=城壁最高貢献)タイルを取る。3番目に名声ポイント3点を取ったプレイヤーは、勝利点2のタイルを取る。なお、3人ゲームでは勝利点3のタイルを使わないので、2番目に名声ポイント3点取ったプレイヤーが得るタイルは勝利点2のものになる。
 名声ポイントで追い抜いたら、しかるべきプレイヤーとRatskarte(評議会=城壁最高貢献)タイルを交換する(自分がその時点でタイルを持っていない場合は、タイルを奪取する)。ただし、勝利点12以上になっているプレイヤーのRatskarte(評議会=城壁最高貢献)タイルを相手に指定してタイルを交換したり奪ったりはできない。複数のプレイヤーを同時に追い抜いた場合、どちらのプレイヤーを対象としてタイルの交換(奪取)をおこなうかは、追い抜いた側のプレイヤーが任意に選べる。


■ゲームの終了

・    手番プレイヤーが13点(以上)の勝利点に到達したら、そのプレイヤーの勝利で終了。
・    時間マーカーが「1400」のマスに到達したら直ちに終了。勝利点の最も高いプレイヤーの勝利。タイブレークは、より高位のRatskarte(評議会=城壁最高貢献)カードを持っているほうを優位とする。

Elfenland ヴァリアント 2種

 久しぶりに『エルフェンランド』をやりたいんですが、今やるには少しばかり空気が緩すぎるように思われ、いっぽう『エルフェンロード』だと付き合ってくれる人が誰もいなさそうなので、『エルフェンランド』と『エルフェンロード』の中間くらいの感じでいきたい、もっと言うとエルフェンロード的なゲームをエルフェンランドのゲーム時間でやりたいんですね。ということでヴァリアントをふたつほど考えてみました。

 

【ヴァリアント I 】ドラフテッド・エルフェンランド

(20250915更新)

 

〔必要なもの〕

  • 『エルフェンランド』(新版でも旧版でもデラックスでも)
  • 適当な石か何かのトークン3つ(ラウンド表示用に使用)
  • 可能なら『エルフェンゴールド』のラウンド表示カード(無いなら無いで構わない)
  • 可能なら、プレイヤー表示マーカー6色(黒赤青緑黄紫)各1(無いならないで構わない)

 

〔ゲーム人数〕

 4-6人。2-3人で遊ぶ場合については後述。

 

〔ラウンド数〕

 3ラウンド。

 (『エルフェンランド・デラックス』準拠)

 

〔使用するタイル〕

 移動手段タイルはドラゴン4、ユニコーン5、雲6、帆走車7、トロール8、大猪8の合計38枚。 (『エルフェンゴールド』拡張を参考にした)

 妨害タイルは各プレイヤーに1枚ずつ配る。

 

〔使用する移動カード〕

 6人ゲームでは72枚(いかだ12枚、他6種各10枚)全て使用。5人ゲームでは全種(7種)1枚ずつ抜いて65枚使用、4人なら全種3枚ずつ抜いて51枚使用。

 

〔目的地カード〕

 目的地カードあり。5-6人ゲームでは2枚ずつ、4人ゲームでは3枚ずつ配り、直ちに1枚を選択、選ばなかったものは伏せて返す。

(BGG Forum で mortego [@killerjoe1962] により提案されたヴァリアント。https://boardgamegeek.com/thread/1772904/my-variant-for-elfenroads-elfenland )

 目的地カードの選択は、全員に最初の手札を配り終わった後で行う。

 

〔手番順〕

  • 第1ラウンドの手番順は元のゲーム通り、ランダムに決めたスタートプレイヤーから時計回り。
  • 第2・第3ラウンドにおける手番順は、その時点での到達都市数の少ない順。同数のプレイヤー間では、ラウンド終了時点で手札に残した枚数の少ない順。それも同じなら、前のラウンドの逆順。
  • 手番順表示用にラウンド表示カードを用いる。ラウンド表示のため、別途、適当なトークンを3つ用意しておくこと。
  • 手番順表示は「スタートプレイヤーカードを持つプレイヤー」→「1のラウンド表示カードを持つプレイヤー」→「2」→「3」→「4」→「ラウンド表示カードカードを持たないプレイヤー」となる。(『エルフェンゴールド』拡張がある場合は、スタートプレイヤーカードを用いず、1~6のラウンド表示カードを使用してもよい。また、プレイヤー表示マーカーがある場合は、第2ラウンド以降は、プレイヤー表示マーカーを盤上「Elfenland」の巻物があるあたりに、左から一列に並べて手番順を示すとよりわかりやすい)

 

〔移動カードの配りかたと持ち越し〕

 第1ラウンド開始時、全員に(8枚ではなく)10枚ずつランダムに伏せて配る。

 ラウンド終了時に残しておけるカードは最大4枚。(作者Moon版ルール。The Game Cabinet掲載 http://www.gamecabinet.com/rules/Elfenland.html )

 第2ラウンド以降は、以下の形で移動カードを配る。どのプレイヤーも8枚ずつカードを受け取る形になる。

 よく切った移動カードの山札から、4枚1組の場札をゲーム人数×2セットだけ作る。場札の中身は全て公開。手番順に、残っている場札のうち1組4枚を取り、手札に加える。全員が1回ずつ行ったら、再び手番順1番のプレイヤーから順にもう1巡、1組4枚を取る手順を行う。

 

〔移動タイルのドラフト〕

 ランダムのタイル1枚配りと、場からタイルを3枚ずつ取るパートは廃止。かわりに、以下の手順によるブースタードラフトで5枚(4枚ではなく)のタイルを取る。(前のラウンドから1枚残しておけるルールはそのままなので、手元のタイルは最大6枚。通常のエルフェンランドよりも1枚多い点に注意)

  1. 各自、5枚のタイルを山から引き、自分だけ中身を見て、1枚を選び、伏せて自分の手元に置く。残りの4枚を伏せて左隣のプレイヤー(※第1ラウンドのみ右隣)に回す。
  2. (1を全員終えたら)隣から回ってきたタイルを受け取り、自分だけ中身を見て、1枚を選び、「中身を公開する形で」自分の手元に置く。残りは伏せて左隣(※第1ラウンドのみ右隣)に回す。
  3. (2)をあと3回、合計4回行う。これによって、このラウンドで各プレイヤーが受け取るタイルは「伏せ1枚・公開4枚」となる。

 

〔湖の移動〕

 小さい方の湖はいかだ1枚で移動可。

 (作者Moon版ルール。The Game Cabinet掲載 http://www.gamecabinet.com/rules/Elfenland.html )

 

〔妨害タイル〕

  • 各ラウンド、盤上に置ける妨害タイルは全員合わせて2枚まで。先着。
  • ゲーム終了時まで使わずに持っておいた妨害タイルは0.5ポイント。

 (BGG Forum で Bruce Linsey により定義された議論を参考にした https://boardgamegeek.com/thread/1112580/obstacles )

 

〔勝利条件〕

  1. 原則として、訪問都市数が得点、これに目的地からの距離を減点して総得点を算出するが、元のルールと同様、20都市訪問に成功したプレイヤーには目的地からの距離による減点が適用されない。
  2. 前述の通り、使わなかった妨害タイルは0.5点の得点になる。
  3. 総得点が同じプレイヤーの間では、元のルール通り、残したカードの枚数が多い方を優位とする。
  4. ポイント数も残手札数も同じプレイヤーの間では、最終ラウンドにおける手番順が遅いほう(つまり第2ラウンド終了時点で優位だったほう)を優位とする。

 

〔2-3人で遊ぶ際のルール〕

  • 1人2キャラクター持ち。移動タイル、目的地カード、移動カード、妨害タイルは2キャラクター共通。手番順はキャラクター単位で決定される(3人ゲームなら1~6番、2人ゲームなら1~4番までの手番順が存在する)。以下のルールを適用する。
  • ゲーム開始時に受け取る妨害タイルはプレイヤーごとに2枚。
  • 目的地カードはゲーム開始時に、3人ゲームなら4枚ずつ、2人ゲームなら6枚ずつ受け取り、そこから2枚を選ぶ。どちらのキャラクターがどちらの目的地に着くべきかは、ゲーム終了時に選択できる。
  • 移動カードは、ゲーム開始時に20枚伏せて配られ、これがまとめて手札となる。ラウンド終了時には8枚まで持ち越し可能。第2ラウンド以降の補充は16枚。ただし、手番順はキャラクター単位で決定されるため、各ラウンド、各プレイヤーごとに、4枚補充するタイミングが4回あることになる。
  • 移動タイルは毎ラウンド、「左隣に回す5枚のブースタードラフト」をおこなって5枚受け取った後、「右隣に回す5枚のブースタードラフト」をおこない、従って合計10枚受け取る形になる。ラウンド終了時に持ち越せる移動タイルは最大2枚。
  • 移動はキャラクターの手番順におこなう。ラウンド中、キャラクターごとの移動カードの使用可能枚数は最大12枚。
  • 勝利条件の決定の際は、2キャラクターのうち総得点が低いほうのキャラクターの、その総得点をプレイヤーの総得点とする。妨害タイルを1枚だけ余らせた場合は、総得点が低いほうのキャラクターに割り振る。妨害タイルが2枚余った場合は、両方のキャラクターに1枚ずつ割り振る。

 

 

【ヴァリアント II 】オークションド・エルフェンランド

(20250915更新)

 基本的にはヴァリアントIと同じ。以下、差異についてのみ記述。

 

〔必要なもの〕

  • 『エルフェンランド』+『エルフェンゴールド』拡張、または『エルフェンランド・デラックス(新エルフェンロード)』
  • 手番順表示マーカー6色各1(黒赤青緑黄紫)

 『エルフェンランド』のみで遊ぶ場合、以下を調達すること:

  • コイン 額面で300以上
  • 6面体ダイス19個+8面以上面数のダイス1個(町の価値を示すマーカーとしてのみ使用。その他のものでも代用可。わたくしは数字の書かれたシールを盤に貼っています)

 

〔準備〕

  • 盤上、町の価値を示すマーカーを下記のように置く。(『エルフェンゴールド』拡張準拠 http://www.gamecabinet.com/rules/Elfenland.html)
    • Al' Baran - 7
    • Kihromah - 6
    • Grangor, Mah' Davika, Jaccaranda. Erg' Eren - 5
    • Strykhaven, Dag' Amura, Yttar, Parundia, Usselen, Feodor - 4
    • Virst, Jxara, Wylhien, Throtmanni, Tichih, Rivinia - 3
    • Beata, Lapphalya - 2
  • 全員、ゲーム開始時点での所持金は20。所持金は公開。
  • 使用する移動タイルはヴァリアントIと同様。妨害タイルもゲーム人数と同じ枚数だけ使うが、妨害タイルはプレイヤーには配らない。盤の脇に置いておく。
  • ランダムにスタートプレイヤーを決め、そこから時計回りに2, 3, 4, 5, 6番手になる。盤上、「Elfenland」の巻物のあるあたりに、手番順に左から右に向かって、各自の手番順表示マーカーを左から右に一列に並べる。
  • 長靴駒は、第1ラウンドにおける各プレイヤーの担当色を決めるため、いったん各自の手元に置いておく。移動フェイズで自分の手番が来たら、Elvenholdに自分の長靴駒を置いて自分の手番を始める。

 

 

〔フェイズの順序〕

 通常のゲームやヴァリアントIと異なり、「移動カードの補充」フェイズは、「移動手段タイル獲得(ドラフト)」フェイズの後(「移動ルート設定(移動手段タイルを置く)」フェイズの前)に行う。また、移動カード補充フェイズの中で、手番順変更のための競りが行われる。

 

〔移動カードの配りかたと持ち越し・I〕

  • 第1ラウンドでも、固定10枚の補充ではなく、下記の手札補充ルールを適用する。
  • 手札補充フェイズでは、1組5枚ずつの公開場札を人数セット、加えて、1組1枚ずつ(第1ラウンドのみ1組3枚)の伏せ山を人数セット、用意する。さらに、以下の場札も用意する(これを「入札用場札」と呼ぶ):
    • 6人ゲームの場合:4枚組の公開場札を1組、3枚組の公開場札を1組、2枚組の公開場札を1組、2枚組の伏せ場札を1組、1枚組の公開場札を1組の合計5セット
    • 5人ゲームの場合:4枚組の公開場札、3枚組の公開場札、2枚組の伏せ場札、1枚組の公開場札を各1組の合計4セット
    • 4人ゲームの場合:4枚組の公開場札、2枚組の公開場札、2枚組の伏せ場札を各1組の合計3セット
  • 以上を用意したら、手番順変更の競りを行う(第1・第2・第3ラウンド共通)。次項参照。

 

〔手番順変更の競り〕

  1. 競りは常に、パスしていないプレイヤーのうち手番順が最も遅いプレイヤーが「金を払って手番順を先頭に動かす」か「パス」するか選ぶ形で行う。1人を除く全員がパスするまで何周でも行う。競り値を付ける順番が回ってきたプレイヤーは、以下のいずれかを行う。
    1. この競り中に付けられたそれまでの最高値よりも高い値(自然数)を宣言し、直ちにその金額を銀行に支払って、自分の手番順表示マーカーを先頭に持っていく。
    2. パスする。いったんパスしたらもう競りに復帰できない。(いわゆるハードパス)
  2. 一人以外全員パスで競り終了。その時点における、場の列上の手番順表示マーカーの順番が、以降の新しい手番順となる。
  3. 以上の競りが終わったら、移動カードの分配の手続きに戻る。次項参照。

 

〔移動カードの配りかたと持ち越し・II〕

 手番順に、以下を行う。

  • その時点で残っている1枚組(第1ラウンドのみ3枚組)伏せ山の中身を全セット分確認した後、1セット5枚の公開場札から1セット、1枚組(第1ラウンドのみ3枚組)の伏せ山から1セットを任意に1つずつ選ぶ。公開場札は自分の手元に晒して公開手札とし、伏せ場札は自分の手元に持って非公開手札とする。使用においては、自分の公開手札と非公開手札は任意に組み合わせることができる。

 以上が終わったら、残った入札用場札を巡って、入札を行う。全員、所持金から手の中に任意の金額のコインを握り、一斉に公開する。入札額が高い順に、「入札用場札から好きなものを1セット取って手札とし(公開場札なら公開手札に、伏せ場札なら非公開手札に)、握った金額を銀行に支払う」か「場札を取らず、握った金額を手元に戻す」のいずれかを選択する。同値の場合は手番順が早いほうを優位とする。誰も取らずに場に残った入札用場札がある場合は捨て札とする。

 

〔タイルの配置と割り込み〕

 基本的には手番順に行うが、割り込みをおこなうことができる。

 割り込みは、誰かが手番を行った直後(つまりタイルを置いた直後)、次の手番が始まる前に、手を上げることで宣言する。手を上げる際は、割り込みのために銀行に支払う金額を宣言する。割り込みは誰でも行える(手番プレイヤー自身が行ってもよい)。割り込みのために宣言する金額は、自分が銀行に支払える金額でなければならない。加えて、このラウンド中に割り込みのために宣言されたどの金額よりも高い値でなければならない。

 この割り込みに異論があるプレイヤーは、割り込みに対して割り込みをおこなう。再割り込みは割り込みと同様、手を上げ、金額を宣言する形で行う。それまでに宣言された金額を上回る金額しか宣言できない。再割り込みも誰でも行える(いま最高値で割り込みを宣言しているプレイヤーであっても可)。割り込みの宣言が同時と思われる場合、本来の手番プレイヤーが判定をおこなうこと。

 割り込みに対して異論がない場合は、割り込みが成立する。成立した割り込みをおこなったプレイヤーは、宣言した金額を、盤上のラウンド表示用のスペースに置く。これは「このラウンドで割り込みのために宣言されたこれまでの最高値」を表示しておくためのもの。従って、すでにそこに(以前の割り込みによって)コインが置かれている場合は、先にこれを銀行に全て入れてから、今回の割り込みの金額をそこに置く。

 割り込みが成立したら、直前に(本来の手番のプレイヤーによって)置かれたタイルは、「(a) キャンセルされ、本来の手番プレイヤーの手元に戻る」か「(b) そのまま置いておく」か、割り込みを成立させたプレイヤーが選択する。その後、成立した割り込みをおこなったプレイヤーが、手元から移動手段タイルを1枚取って盤上に置くか、盤の脇から妨害タイルを1枚取って盤上に置く。妨害タイルは割り込みによってしか置くことができない(なお、「妨害タイルはラウンド中2枚まで」の制約はヴァリアントIと同様)。成立した割り込みによって置かれたタイルに対しては割り込みを行えない。

 成立した割り込みの処理が終わったら、(a) の場合は本来の手番プレイヤーが再び手番をおこなう。(b) の場合は、本来の手番プレイヤーの次のプレイヤーが手番を行う。

 

〔コインの受け取り〕

 移動中、訪問した町に訪問地駒を置く際は、その町の価値マーカーで示されただけの金額を銀行から受け取る。(『エルフェンロード』および『エルフェンゴールド』拡張準拠)

 

〔勝利条件〕

 第3ラウンド終了でゲーム終了。総得点が同じプレイヤーの間では、所持金の多いほうを優位とする(残り手札よりも上位のタイブレーカーとなる)。所持金も残り手札も同じプレイヤーの間では、最終ラウンドにおける手番が早いほうを優位とする。

 

Election [aka Election X] (Drakes Javis Walsh & Gluck Limited., 1972) ルール和訳

ELECTION (aka. ELECTION X)

エレクション (aka エレクションX)

3-6人用

 

Designers: Drakes Jarvis Walsh & Gluck Limited.

Publisher: Intellect games

Illus.: David Baxter

 

 

■内容物

 

ルールブック 1

ゲーム盤 1

キャンペーンカード 49

人気マーカー 6色各1

党首駒 6色各1

浮動票識別マーカー 6セット(各色16枚)

トークン 205枚

 1) 選挙トークン 6色各18枚(裏に「X」と書かれています)

 2) 空虚な約束 6色各5枚(裏に「X」がありません)

 3) 浮動票トークン 42枚

 4) 不在者票トークン 25枚

 

 

■準備

 

キャンペーンカードをよく切って、各プレイヤーに5枚ずつ配ります。配られたカードは手札とし、ほかのプレイヤーに中身を見せないようにします。残りは伏せて山札にしておきます。

各プレイヤー、自分の担当する政党を1つ選び、対応する色の党首駒を取ります。労働党 Labor は桃色、社会党 Socialists は赤、自由党 Liberals は黄色、独立党 Independents は緑、保守党 Conservatives は青、国民党 Nationalists は茶色です。

各プレイヤー、自分の色の支持層トークンを23枚(選挙トークン18枚と空虚な約束5枚)を受け取り、自分の手元に置きます。選挙トークンと空虚な約束は裏に「X」が書いてあるか否かでしか判別できません(「X」が書いてあるほうが選挙トークン)。自分だけが区別がつくようにしておきましょう。

各プレイヤー、自分の色の浮動票識別マーカー24枚【と書いてあるがそんなに入っていない。16枚】を受け取ります。これは選挙が公示されたあとにのみ、自分が浮動票を置く場合に限って使います。

不在者票トークンはマップ上のそれぞれ対応するマスに置きます。

盤上の人気インデックス上、白い人気マーカーを上下させることで、各党の人気を表します。ゲーム開始時は各党とも最下段【ゼロ。1よりも下】に置きます。

薄黄色の浮動票トークンは、層の種類ごとに分けて盤の脇に置き、ストックとします。【10種類ある層のうち、農家層Farmersと雇用主層Employers以外の8種類の層についてトークンがある】

 

 

■初期配置

 

誰からゲームを開始するか決めます。最初に「《どこかのエリアで》Votes stans firm」のカードを配られたプレイヤーを初手番とするとよいでしょう。【エリアのどのマスに、あるいはマス以外の場所に置くのかは書かれていない】

選んだ好きなエリア(のマス)に自党の党首駒を置きます。(好きなエリアから開始できます。なんなら全員が同じエリアからスタートしてもかまいません。)

ゲームは「キャンペーンステージ(選挙公示前)」と「選挙中(選挙公示後)」に分かれています。「キャンペーンステージ」から始まり、いずれかの党の人気(人気マーカーで示されます)が人気インデックスの上限値である20に達すると選挙公示がなされて「選挙中」ステージに移行します。

 

 

■ボード上のマスについて

 

ゲーム盤上のマップは10個のエリアに分かれています。各エリアには「支持層マス(薄赤)複数」「支持層マス(薄黄)複数」「キャンペーンマス1マス」「不在者票マス1マス(ただしウェールズWalesを除く)」「浮動票マス1マス」があります。

 

支持層マス:薄赤と薄黄の二種類あります。薄赤はキャンペーンステージでのみ使われるもので、選挙トークンを取るためのものです。薄黄は浮動票トークンをとるためのもので、選挙公示後しか使いません。どの支持層マスも、10種類ある層のうちひとつが示されており、その層の有権者20万人を意味しています。

キャンペーンマス:このマスに入ったら、キャンペーンカードを伏せて出すか、あるいは取るかしようとしていることを意味します。

浮動票マス:このマスに入ったら、すきな浮動票トークン(場合によっては複数)をトレーから取ります。

不在者票マス:ウェールズ Wales 以外のエリアには、不在者票マスがあります。このマスに、そのエリアの不在者票トークンを積んでおきます。これらのトークンは、キャンペーンステージにおいて、人気を上げることでのみ獲得できます。

 

 

■キャンペーンステージにおける手番

 

「キャンペーンステージ」の手番中は、任意のタイミングで、下記をそれぞれ1回まで行えます。

  • キャンペーンカードを手札から1枚プレイする
  • 自党の党首駒を道路で繋がった隣接エリアに動かす

そして、以下の四種類のうち、任意の組み合わせでアクションを2回まで行えます。

  • 自分の手元の選挙トークン(または空虚な約束)を1枚、自党首駒のいるエリアまたはその隣接エリアの、空いている、かつマークが対応している薄赤色のマスに置く・選挙トークンと空虚な約束のどちらが置かれたかは、置いたプレイヤー以外からはわからない
    • このアクションを重ねて行う場合、2回のうち1回は自エリアに置く必要があり、かつ、2枚のトークンは同一か隣接エリアに置かれる必要があります。
    • トークンを置くたびに、自党の人気を1上げます。
  • 好きな浮動票トークンを1枚、ストックから取って自分の手元に置く
  • キャンペーンカードを山から1枚引いて手札にする
  • 2枚目のキャンペーンカードを手札からプレイする
    • このアクションのみ重ねて行えません。

 

■選挙中(選挙公示後)の手番

 

「選挙公示後」の手番中は、以下の二種類のアクションを、任意の組み合わせで2回まで行えます。

  • 自分の手元の浮動票トークンを1枚、任意のエリアの、空いている、かつマークが対応している薄黄色のマスに置く。
    • 自党の浮動票であることがわかるよう、置いたらその上に自分の浮動票識別マーカーを1枚載せます。
    • キャンペーンステージの選挙トークンと異なり、重ねてこのアクションを選ぶ際も、2枚が隣接する必要はない。
  • 好きな浮動票トークンを1枚、ストックから取る

選挙が公示された後は、浮動票ではない選挙トークンは置けなくなり、キャンペーンカードは出せなくなります。

どちらのアクションも行えない場合はパスになります。

 

 

■キャンペーンカードについて

 

キャンペーンカードは以下の四種類に大別されます。

  • 「Voters in 《エリア名》 stand firm for one round」1ラウンドの間、《どこか特定の1エリア》について、他者からキャンペーンによる攻撃を受けない。10エリア各1枚。
  • 「~200,000 《支持層》~」他プレイヤーを1人指名し、そのプレイヤーが置いた《支持層》のトークンから任意に1枚剥がす。学生 Student 以外の支持層9種類各1枚。
  • 「~200,000~」他プレイヤーを1人指名、そのプレイヤーが置いたトークンから任意に選んで1枚剥がす。20枚。
  • 「~400,000~」他プレイヤーを2人指名し各プレイヤーが置いたトークンから任意に選んで1枚ずつ剥がすか、1人指名して2枚剥がす。10枚。

トークンを剥がす場合、はがされたトークンは元の所有者の手元に行きます。どのトークンを剥がすかはカードを出したプレイヤーが選びます。

使ったカードは効果が切れたら山札の一番下に行きます。

 

 

■人気インデックス

 

選挙トークン(空虚な約束を含む)を1枚置くたび、その党の人気マーカーを1上げます(キャンペーンカードで1枚剥がれたら1下がります)。

人気が上がって特定の位置を踏むたび(通過含む)、その位置に書かれた指示に従います。指示には以下のものがあります。

  • Gain《x》Absentee Token(s) of your choice -- 任意の不在者票トークンを《x》枚もらえる
  • Gain 2 Floating Vote Tokens of your choice -- 好きな浮動票トークンを2枚もらえる
  • Bonus: place down 1 more token -- もう1枚トークンを置ける
  • Leading party can place down one token -- 人気が最も高い党がトークンを1枚置ける【タイブレークの指示なし】

なお、人気マーカーがいったん下がってまた上り、指示の書かれた位置を再び踏んだ場合、また指示に従います。

 

 

■開票

 

すべての浮動票マスが埋まったエリアは開票されます。選挙トークン、浮動票トークン、取得した不在者票トークンが票としてカウントされます。「空虚な約束」タイルはカウントされません。

カウントされる票のあるプレイヤーの人数と、そのエリアの票としてカウントされる票数(トークン枚数)の順位によって、票に示された通りに獲得議席数が決まります。

票数(トークン枚数)がタイの場合は等分し、端数はその時点で獲得議席数の少ないほうのプレイヤーに行きます(それが同じなら、どちらにも端数の議席は与えられません)。

 

 

■ゲーム終了

 

すべての浮動票トークンが盤上に置かれ、全エリアの開票が終わったらゲーム終了です。獲得議席数の最も多いプレイヤーが勝者となります。

 

 

〈ルールに関する疑問など〉

  • 選挙トークンを置けるエリアに関するルールは、単純に「党首がいるエリアに置ける」でよいのではないか?
  • 党首がエリアのどこにいるべきなのか不明瞭だが、「いずれかのマスの上」でよいものと思われる。ルール上、同一のマスに複数の党首が入ってはならないというルールはないが、ヴァリアントとしてこのルールを設けることで、キャンペーンマスや浮動票マスについて若干の制約をかけるようにしてもよいだろう。(なお選挙公示後はそもそも党首駒に意味がなくなる)
  • 手番中に選挙公示が行われた際、手番を続行できるか不明。残りアクション数で続行できるとしてもルール上は問題ないが、選挙公示に到達したプレイヤーの優位性を考えると、選挙公示により手番終了としたほうがよいだろう。
  • 先手番有利のゲームであり、キャンペーンカードで攻撃できることで補正する必要は確かにあるが、あまりに無体なのでもう少し何かしら手当てしたほうがよさそう。

 

議席数表

 

SCOTLAND スコットランド

・一党独占: 69

・二党存在: 46 / 23

・三党存在: 39 / 20 / 10

・四党存在: 37 / 18 /  9 / 5

・五党存在: 36 / 18 /  9 / 4 / 2

・六党存在: 35 / 18 /  9 / 4 / 2 / 1

 

  1. IRELAND 北アイルランド

・一党独占: 12

・二党存在: 8 / 4

・三党存在: 7 / 3 / 2

・四党存在: 6 / 3 / 2 / 1

・五党存在: 6 / 3 / 2 / 1 / 0

・六党存在: 6 / 3 / 2 / 1 / 0 / 0

 

NORTH WEST ノースウェスト

・一党独占: 81

・二党存在: 54 / 27

・三党存在: 46 / 23 / 12

・四党存在: 43 / 22 / 11 / 5

・五党存在: 42 / 21 / 10 / 5 / 3

・六党存在: 41 / 21 / 10 / 5 / 3 / 1

 

NORTH EAST ノースイースト

・一党独占: 81

・二党存在: 54 / 27

・三党存在: 46 / 23 / 12

・四党存在: 43 / 22 / 11 / 5

・五党存在: 42 / 21 / 10 / 5 / 3

・六党存在: 41 / 21 / 10 / 5 / 3 / 1

 

MIDLANDS ミッドランド

・一党独占: 114

・二党存在: 76 / 38

・三党存在: 65 / 33 / 16

・四党存在: 61 / 30 / 15 / 8

・五党存在: 59 / 29 / 15 / 7 / 4

・六党存在: 58 / 29 / 14 / 7 / 4 / 2

 

WALES ウェールズ

・一党独占: 36

・二党存在: 24 / 12

・三党存在: 21 / 10 / 5

・四党存在: 19 / 10 / 5 / 2

・五党存在: 19 /  9 / 5 / 2 / 1

・六党存在: 18 /  9 / 5 / 2 / 1 / 1

 

GREATER LONDON AREA グレーターロンドン

・一党独占: 92

・二党存在: 61 / 31

・三党存在: 53 / 26 / 13

・四党存在: 49 / 25 / 12 / 6

・五党存在: 47 / 24 / 12 / 6 / 3

・六党存在: 47 / 23 / 12 / 6 / 3 / 1

 

ANGLIA アングリア

・一党独占: 34

・二党存在: 23 / 11

・三党存在: 19 / 10 / 5

・四党存在: 18 /  9 / 5 / 2

・五党存在: 18 /  9 / 4 / 2 / 1

・六党存在: 17 /  9 / 4 / 2 / 1 / 1

 

WEST COUNTRY ウェストカントリー

・一党独占: 57

・二党存在: 38 / 19

・三党存在: 33 / 16 / 8

・四党存在: 30 / 15 / 8 / 4

・五党存在: 29 / 15 / 7 / 4 / 2

・六党存在: 29 / 14 / 7 / 4 / 2 / 1

 

SOUTH サウス

・一党独占: 59

・二党存在: 39 / 20

・三党存在: 34 / 17 / 8

・四党存在: 31 / 16 / 8 / 4

・五党存在: 30 / 15 / 8 / 4 / 2

・六党存在: 30 / 15 / 7 / 4 / 2 / 1

 

 

■層の内訳(エリア別)

 

〈合計〉(固定支持層 + 浮動票)

産業労働者 Industrial Workers 37 + 15

主婦 Housewives            23 + 10

ホワイトカラー White Collar   12 +  5

引退者 Retired              12 +  5

エグゼクティブ Executives    7 +  2

専門職 Professionals            6 +  2

自営業者 Small Business        2 +  2

雇用主 Employers              3 +  0

農家 Farmers                  3 +  0

学生 Students                  0 +  1

 

 

Scotland (69)

Industrial                  4+2

Housewives              2+1

Retired                 1+1

White Collar             1+0

Professionals             1+0

Executives               1+0

 

Northern Ireland (12)

White Collar              1+0

Industrial                 1+0

Housewives             1+0

Retired                  1+0

 

North West (81)

Industrial               6+3

Housewives             3+2

White Collar            1+1

Retired                1+0

Small Business          1+0

Executives              1+0

 

North East (81)

Industrial               6+4

Housewives           3+1

White Collar            1+1

Executives              1+0

Retired                1+0

Small Business          0+1

 

Wales (36)

Housewives             2+0

Retired                  2+0

Farmers                 1+0

Industrial                 1+0

White Collar              1+0

 

Midlands (114)

Industrial               9+2

Housewives           4+2

White Collar            1+1

Small Business          1+1

Executives              1+1

Employers             1+0

 

Anglia (34)

Industrial                 2+0

Retired                  1+2

Housewives             1+1

White Collar              1+0

Farmers                 1+0

Professionals             1+0

 

Greater London (92)

Industrial                4+0

Housewives            2+2

White Collar             2+1

Professionals             2+1

Executives               1+1

Retired                 1+0

Employers              1+0

Students                0+1

 

West Country (57)

Retired                 3+1

Housewives            3+0

Industrial                1+1

White Collar             1+1

Professionals             1+1

Executives               1+0

Farmers                1+0

 

South (59)

Industrial                3+3

Housewives            2+1

White Collar             2+0

Retired                 1+1

Executives               1+0

Employers              1+0

Professionals             1+0

 

 

 

■固定支持層

 

労働党 Labor (桃)

・産業労働者 Industrial Workers 13+3

・主婦 Housewives 4+2

・引退者 Retired 1

 

社会党 Socialists (赤[橙])

・産業労働者 Industrial Workers 7+2

・主婦 Housewives 6+2

・引退者 Retired 5+1

 

自由党 Liberals (黄)

・産業労働者 8+3

・主婦 4+1

・ホワイトカラー 3+1

・エグゼクティブ 2

・専門職 1

 

独立党 Independents (緑)

・産業労働者 Industrial Workers 6+2

・主婦 Housewives 4+1

・ホワイトカラー White Collar 3+1

・引退者 Retired 2+1

・エグゼクティブ Executives 2

・雇用主 Employers 1

 

保守党 Conservatives (青)

・専門職 Professionals 4+2

・ホワイトカラー White Collar 3+2

・エグゼクティブ Executives 3+1

・主婦 Housewives 2

・自営業者 Small Businessmen 2

・雇用主 Employer 2

・農家 Farmers 2

 

国民党 Nationalists (茶)

・引退者 Retired 5+2

・主婦 Housewives 3+1

・ホワイトカラー White Collar 3+1

・産業労働者 Industrial 3+1

・専門職 Professionals 2

・自営業者 Small Businessmen 1

・農家 Farmers 1

John Company, 2nd ed. (Cole Wehrle / Wehrlegig Games, [2017]2022) ルール抄訳

John Company: Second Edition
Game design by Cole Wehrle

 

ジョン・カンパニー第二版 ルールブック日本語抄訳(1710年ルールのみ)

 

本作のルールブックはクリエイティブコモンズライセンス BY-NC-SA 4.0 のもと、非営利の翻案・共有が認められており、この抄訳はこれに基づいて公開されたものです。

従って、この抄訳についても、クリエイティブコモンズライセンス BY-NC-SA 4.0 が継承されます。適切なクレジットを表示し、また同ライセンスを継承する限りにおいて、非営利の翻案・共有が認められます。なお、追加的な制約を課すことはできません。ライセンスの詳細は https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja をご覧ください。

 

翻訳の底本として、著者Cole WehrleがBoardgamegeekに公開しているPDFファイルを用いています。

boardgamegeek.com

 

本作の著者Cole Wehrleによるデザイナー・ダイアリーの日本語訳が、下記のURL(訳者べよ氏 behonest00033 の note ページ)で公開されています。

https://note.com/behonest00033/n/n266ae284c290

 

本作は1~6人用のゲームですが、1~2人で遊ぶためのルールについては、この抄訳では翻訳していません。

 

 

 

■ 内容物 ■

 

◇ 盤

 

メインエリアが4つある。左端には報賞Prize枠が5つあり、プレイヤーは自らの主要な得点をここに記録する。中央左側にはザ・カンパニーの健全性を示す複数のトラックと、諸々の駒やカードを置いておく様々な枠がある。右側のマップはインドにおける政治的ステータスと潜在的利潤を示している。最後に、左上から始まり盤の縁を下側に進みベンガル湾で終わる、赤いリボンがある。このリボンはフェイズによってゲームの流れとザ・カンパニーの様々なオフィス(部局)のオペレーションをチャート化したものだ。(赤いリボンは左上部にある1~8までの8マスで構成されたターントラックと、それ以外のフェイズトラックの2つの部分で構成される。)

 

◇ ルールブックとエイド

 

本書と「クラウンハンドブック」の二冊。後者はソロおよび二人ゲーム用(この抄訳ではソロおよび二人ゲームについては訳さないので、クラウンハンドブックについても翻訳の対象外)。その他、大プレイヤーエイド二枚と小プレイヤーエイドカード二枚が入っている。

 

◇ プレイヤー駒類

 

ゲームにはファミリーが六つ登場する(ファミリーはそれぞれ一色で表される)。プレイヤーはそれぞれ、ひとつのファミリーに扮する。各ファミリーにつき、ファミリーメンバー18枚(顔が描かれた楕円)、勝利点マーカー1枚(小さい円盤)、約束Promiseカード6枚、ガラスの機会opportunityマーカー1枚、ファミリーボード1枚、ファームキューブ2個、ファーム戦略firm strategyカード4枚がある(ファームfirmはザ・カンパニーではない、株式非公開の貿易会社。ファームは1710年ルールには登場しないので、以降は説明しない)。

プレイヤーのファミリーメンバーは最も重要なリソースであり、ザ・カンパニーの株、購入した不動産、ザ・カンパニーの諸々のポジションの占有、といったものを表す。

 

◇ インド駒類

 

塔階層Tower level駒20と、塔屋根dome駒が8個(地域Regionごとに1個。ただし地域ごとにユニークというわけではなくどれも同じ)存在する。金属の旗flagが3組あり、このインド亜大陸に現れる帝国の大きさを示す。20枚のイベントタイル(円形)によってイベントの解決を行う。管理/略奪トークンcontrol/loot token8枚(地域ごとに1枚。ユニーク。地域に対応する色が塗ってある)により、ザ・カンパニーによってどの地域が略奪されているかが示される。最後に、レジンの象Elephantがひとつあり、これは迫り来る政治的危機looming political Crisisを示す。

 

◇ 木のポーンとキューブ

 

諸々のトラックに置くポーンが三色計六つある。赤ポーンはザ・カンパニーの評価Standing、残高Balance、債務Debtを示す(ゲーム盤上に評価、残高、債務各トラックはザ・カンパニーのもの以外には存在しないので、以降は単に評価トラック、残高トラック、債務トラックと呼ぶ。それぞれ、ここに置かれた赤ポーンが、現在のザ・カンパニーの評価/残高/債務を意味する。いずれのトラックでも、右に進むほど量が多い/高い。以降、例えば評価トラック上で赤ポーンを一段階右に進める/左に戻すことを、ザ・カンパニーの評価を1上げる/下げる、と呼ぶ)。黒ポーンはゲームのターンと票voteを示す。銀ポーンは現在のフェイズを記すために使う。

木のキューブが30個ある。橙のキューブはオフィスカードの上に載せたら疲労fatigueを意味し、ザ・カンパニーが管理する地域の上に載せたら社会不安unrestを示す。赤いクラウン約束キューブはソロおよび二人ゲームで用いる。

 

◇ マネーサプライ

 

1ポンド40枚、2ポンド20枚、5ポンド20枚、10ポンド10枚。金銭量は無限に存在する扱い、とはいえこれで足りるはず。

 

◇ クラウンAIカードおよびボード

 

クラウンAIカード10枚とクラウンボード1枚があり、これはソロゲームおよび二人ゲーム用。この抄訳では触れない。

 

◇ 事業(小カード)

 

事業Enterpriseカードは57枚あり、三種類に分かれる。造船所shipyard22枚(運輸 Shipping 系事業とも呼ばれる。錨マーク)、工房workshop20枚(製造 Manufacturing。歯車マーク)、贅沢品luxury15枚(社会 Social。シルクハットマーク)。各カード、左上が費用cost、左下が収入income、右上が事業の種類、下中央が票vote。なお、三種類それぞれの中ではカードの内容に差異はない。

 

◇ オフィスカード

 

どのプレイヤーがどのオフィス(部局)を自らのものとしているか示すためのオフィスカードが17枚ある。だれも占有していないオフィス(部局)については、そのオフィスカードは伏せて盤上の空きオフィスVacant Office枠に置かれる。ゲームスタート時に登場しない何枚かのオフィスカードは、盤の近くに置いておく。

 

◇ 名声カードと恐喝カード

 

名声Prestigeカード20枚と恐喝Blackmailカード10枚は通常はロンドンシーズン中に獲得されるもので、スペシャルボーナスがもらえる。名声カードは配偶者系(10枚)と事業系(10枚。右上にアイコンが記されている)に分けられる。事業系名声カードは事業として勘定に入れられる。これらのカードの多くは特殊な力があり、カードにテキストが書かれている。(恐喝カードは例外もあるが概ね他人に対する攻撃として使えるカード)

 

◇ 法案カード

 

法案lawカード26枚は首相Prime ministerプレイヤーによって国会フェイズ中に使われる。これらのカードはゲームの基本的なルールを変えるものだったり、プレイヤーたち全員が共に直面する挑戦が記されたりする。法案が可決したら、内容面を表に向けて盤の近くに置いておく。残りの法案カードはひと山にまとめて首相の近くに置いておく。法案カードのうちの一枚である「規制緩和Deregulation」(裏には「債務者監獄Debtor's Prison」が記されている)は特定のシナリオでしか使われない(1710年シナリオではあらかじめ抜いておく)。

 

◇ ザ・カンパニー失敗カード

 

本作はザ・カンパニーの成功か失敗で終わる。ザ・カンパニーが成功したら、プレイヤーは追加の点数を得られる引退をめぐって争う。ザ・カンパニーが失敗したら、ザ・ランダムにザ・カンパニー失敗Company Failureカード(6枚)から一枚めくって、気まぐれな公衆がこの災厄の責を誰に帰すか決める。大抵の失敗カードは点数に関するペナルティを科すものになっている。

 

◇ 準備カードとシナリオカード

 

本作には複数のシナリオが用意されており、3枚のシナリオカードにこれが書かれている。プレイヤーは各シナリオに対応する準備カード(合計18枚)を使って初期設定を行う。

 

◇ 船

 

プレイヤーに所有される船Shipは22枚ある(全て三角形の駒)。船は未艤装unfittedの状態で造船所に置かれ、その後に艤装fitが行われると、マップ(または、ファームありのシナリオで遊んでいる場合は、ファーム)に置かれる(艤装は船の室内外の各種装備を取り付ける工程のこと)。疲労した船は疲労Fatigue面を表にする。これ以外に、ザ・カンパニーが所有する船が14枚ある。片面に書かれているのは追加船で、これは短期リースで1ターンのみ貿易の為に用いられ、その後はサプライに戻る。もう片面にはザ・カンパニーが建造し維持するザ・カンパニー船が書かれている。

 

◇ 首相

 

常にプレイヤーのうち一人が首相を担当し、首相ダイヤル(針=腕が取り付けられた円盤)を自分の手元に置く。首相の腕を使って、現在の法案が可決したら実行されることになる政策を示す。

 

◇ 連隊と地方同盟

 

連隊Regimentが20枚(四角いチット)と地方同盟Local Allianceが7枚(六角形のチット)あり、これらはザ・カンパニーの軍隊を強化する。

 

◇ クローズした/満たされた注文

 

17枚の注文駒があり、これはインドにおけるクローズ(閉業)した注文Closed orderや、ザ・カンパニー(ないし、ファームありのルールで遊ぶ場合は、ファーム)によって満たされた注文Filled Orderを示すために用いられる。

 

◇ パワートークン

 

パワートークンが4枚あり、事業三種類そしてザ・カンパニーのそれぞれの、パワーのステータスを記録するために用いる。パワートラックに置く。これが動くのは概ね、特定の法案の可決によってである。

 

◇ オフィス・オーバーレイ

 

Overlayは上被せの意。知事Governorオーバーレイが8枚(地域ごとに1枚。ユニーク)あり、これはある地域がザ・カンパニーによって管理されることになった場合に、マップに置かれる。知事の役務につくファミリーメンバーをオーバーレイの上に載せる。加えて、中国貿易監督Superintendent of Trade in Chinaというオーバーレイが一枚あり、これはこの地位についたファミリーメンバーと、中国貿易に割り振られた船の両方を保持するために用いられる。さらに、総督Governor generalオーバーレイが一枚あり、これはそのオフィスが場に出ている(in-play)とき、リボンの上に置く。


◇ その他の駒やマーカーやダイス

 

ディバイダが6枚あり(横棒線が一本だけ描かれた細長い四角タイル)、これは書記官所属writer affiliationを示すために使う。チェアマン(会長)Chairmanマーカーが1枚と(法案)反対派リーダーOpposition Leaderマーカーが一枚ずつあり、これはそのオフィスないし称号についたプレイヤーに与えられる。シナリオによっては、ザ・カンパニー株勝利点トークンも用いられる(1710年シナリオには登場しない)。トロフィー/可決法案トークンが18枚ある(六角形チット)。最後に、普通のダイスが10個と、嵐ダイスが1個ある。

 


■ 準備 ■

 

◇ 準備手順

 

ルールブックの準備手順は12ステップで構成されている。

1~5. 全シナリオ共通の共通物品初期配置
  1. ゲーム盤と内容物トレーを置く。
  2. インドイベントタイル20枚をシャッフルしてゲーム盤の横に置く。
  3. 地方同盟タイル7枚をアーミー枠の対応する場所に置く。(アーミーArmy枠はArmy of Bombay, Army of Madras, Army of Bengalの3つあり、色づけされている。地方同盟タイルにも、それぞれ、対応する枠を示す色が塗られている)
  4. ゲーム盤の下端、残高トラック(0~40までの数字マスが用意された横一線のトラック)の5のマスにマーカーを一つ置く。
  5. パワートークン4枚を、パワートラック上、示された位置に置く。(盤の左上。社会系事業が最上段、ジョン・カンパニーが中断、運輸系事業が下段左、製造系事業が下段右)
6. プレイヤー用具の受け取り

各プレイヤーは自分のプレイヤー駒一式を受け取り、手元(プレイエリア)に置く。自家の勝利点マーカーを勝利点トラック(盤の左上、-3から20まであるトラック)上「0」のマスに置く。

7. インド関連の駒をサプライへ

塔階層駒、塔屋根、旗をゲーム盤の右横(インドのマップの近く)に置く。

8. カード類をいったんサプライへ

法案、オフィス、名声、恐喝、準備、の各カードをゲーム盤の近くに置く。

9. シナリオ選択

シナリオを下記からひとつ選ぶ。

  • 1710年シナリオ。初回用。
  • 1758年シナリオ。1710年シナリオを二三回遊んだらこちらを推奨。ザ・カンパニーが独占に成功している状況から始まるが、インドがファームに門戸を開くことでこの独占は崩され得る。この抄訳では取り扱わない。
  • 1813年シナリオ。最も上級のシナリオ。ザ・カンパニーが独占していない状態から始まる。そしてプレイヤーはファームを始めることができる。5-6人がベスト。この抄訳では取り扱わない。
  • 1710年長期シナリオ。ザ・カンパニーの全史を遊ぶだけの時間があるプレイヤー向け。1710年シナリオと同様に始まるが、規制緩和という道具がプレイヤーに与えられる。最大8ターンあり、しばしば他のシナリオの倍の時間がかかる。この抄訳では取り扱わない。

シナリオを選んだら、シナリオに対応する準備カードを取り、その指示に従い(指定の場所にポーンを置いたり必要な内容物を取ったりする)、カードの指示に従ってインドの地域の準備を行う。ターントラックの対応する年の位置(1710年ゲームの場合は第1ターン)に黒ポーンを置き、首相の腕を対応する年の位置に向ける。

続いて、シナリオに対応するプレイヤー準備カードを取る。5人ゲームの場合、そのシナリオのエクストラカード3枚を加える。6人の場合は6枚を加える。これをシャッフルして、各プレイヤーに同じ枚数ずつ配る。カードを受け取ったプレイヤーは、そこに書かれたものを全て受け取る。オフィスが書かれていたら、ファミリーメンバー1枚をそのオフィスのマスに置き、対応するオフィスカードを受け取る。現金が書かれていたら、銀行からその額を受け取る。残りのアイコンについては、羽根ペンを持つ手が書記官Writer、銃が士官Officer、建物を背景に描かれた銃が見習士官Officer-in-training、帽子が指揮官Commanderを意味する。それぞれ、盤上の対応する枠BoxやマスSlot※に、ファミリーメンバーを置くこと。

(※Slotは楕円形のマスを指し、通常はファミリーメンバーを1枚だけ置いておける場所)。指揮官については、対応する軍隊の枠に置く(指揮官については、オフィスカードは無い)。

10.プレイヤーが地位につかなかったオフィス

残りのオフィスカードはゲーム盤の近くに置く。

11.ロンドンシーズン山札と場札

ロンドンシーズン場札London Season Displayを作る(ゲーム盤の中央部左上に枠がある)。名声カードと恐喝カードを一緒に混ぜてシャッフルし、上から三枚取って場札とする。この場札について、名声カードは内容面を表にし、恐喝カードは内容面を伏せて置く。

12.法案カード山札

残りの法案カードをシャッフルしてゲーム盤の近くに置く。

 

◇ ドラフト・ヴァリアント

 

プレイヤー準備カードをランダムに配るのではなく、一枚ずつピックして左隣に回していくドラフトをおこなってもよい。

 

◇ 1710年シナリオのインドの初期配置

 

塔階層はパンジャブPUNJABが0階、マラサMARATHAが2階、他はすべて1階。

デリーDELHI・パンジャブ・マラサが同一の帝国を形成(デリーが首都)。

ザ・カンパニー管理下の地域はない。

象はマラサからデリーへの向き。

下記の注文はクローズ。

  • パンジャブ唯一の注文
  • デリーのうち北端£5を除く注文2つ
  • ボンベイBOMBAY中央東側£3の注文1つ
  • マラサ西側£3の注文1つ
  • ハイデラバードHYDERABAD唯一の注文
  • マドラスMADRASのうち南側の注文1つ

 

◇ 1710年シナリオの準備カード

 

  • 評価は期待額£10のマスに置く。債務はゼロ。
  • ザ・カンパニーの各(オフィスの)金庫に£3ずつ置く。
  • 法案「Royal Protection 王室の庇護」は可決しているものとして、盤の近くに置いておく。
  • 連隊の配置:ボンベイ州 Presidency of Bombay・マドラス州 Presidency of Madras・ベンガル州 Presidency of Bengal のアーミーArmy 枠に各1枚置く。
  • ザ・カンパニーの船は初期配置では存在しない。

 

◇ 1710年シナリオのプレイヤー準備カード

 

  • チェアマン/株仲間1人/£1
  • 運輸部長/株仲間1人/£2
  • ベンガル州長官/株仲間1人
  • マドラス州長官/株仲間1人/£1
  • ボンベイ州長官/株仲間1人/£1
  • 首相/恐喝カードをランダムで1枚
  • 造船所1枚、加えてW海域に船一隻/£4
  • ボンベイ州アーミー指揮官/ボンベイ州書記官1人/£4
  • マドラス州アーミー指揮官/マドラス州書記官1人/£3
  • ベンガル州アーミー指揮官/ベンガル州書記官1人/£3
  • 貿易局長/造船所1枚、加えてS海域に船一隻/£1
  • 軍務/造船所1枚、加えてE海域に船一隻/£1
  • (エクストラ)見習士官3枚/£2
  • (エクストラ)未艤装の造船所2枚
  • (エクストラ)恐喝カードをランダムで1枚/£3
  • (エクストラ)恐喝カードをランダムで1枚/£3
  • (エクストラ)株仲間1人/£3
  • (エクストラ)贅沢品1枚/£2

 


■ 概念と重要用語 ■

 

◇ 内容物制限とトラックの無限性

 

本作のほとんどの内容物は駒数通りに有限のリソースとして扱われる。サプライが空になる場合、やれるだけのアクションまでやる。ただし、現金、トロフィー/可決法案トークン、ダイス、連隊については無限として扱う。、勝利点、票数、ザ・カンパニーの残高の各トラック(票数トラックはゲーム盤右端、縦に伸びた、可決Pass(賛成)10から否決Fail(反対)10まで21マスで構成されるトラックのこと)は無限に伸びているものとして扱う。

(なお、数に関する注意として、このルールブックでは、通常の廃棄とゲームからの永久除去との差異が曖昧な部分が多い。基本的にはゲームからの永久除去と明示されていない限り、廃棄は一律でサプライに戻す扱いで良いものと思われる)

 

◇ プレイエリアと秘匿情報

 

自分の所有する全てを自分の手元(プレイエリア)に置いて保持する。伏せられた恐喝カードを除いて、全ての情報(捨て札の中身を含む)は公開情報。

 

◇ キャッシュフロー

 

本作において、現金には常にそれを置く場所があり、どこに置かれているかによってどのように消費・取引・支払いができるかが決まっている。ファミリーの金庫に置かれた現金はファミリーのアクションや引退や維持や税金や交渉に使える。ザ・カンパニーのオフィス枠内に置かれた現金(これをザ・カンパニーの金庫と表現する場合がある)は、そのオフィスの支払いにしか使えない。

 

◇ 州

 

英国東インド会社はインドを3つの行政区に分け、これを「州 Presidency」と呼んだ。それぞれの州の名前は、その活動開始拠点となった港のある地域の名前から取っている(ベンガルBengal, マドラスMadras, ボンベイBombay。このため、本作では、ベンガル・マドラス・ボンベイ各地域を、ベンガル州・マドラス州・ボンベイ州の本拠地域Home Regionと呼ぶ場合がある)。本作では、州はそれぞれに独自の軍隊と書記官組織と船団と(ゲーム後半には)従属オフィスを持つ、特殊なオフィスとして扱われる。これらのリソースはオフィスの枠内か、枠の近くのインド洋Indian Oceanに置かれる。

(なお、前述の通り、ベンガル州、マドラス州、ボンベイ州はそれぞれベンガル地域、マドラス地域、ボンベイ地域にある港を拠点として活動を開始しているが、1710年ゲーム開始時点では各地域はまだ英国東インド会社の管理下になく、従って州の一部であるとは言えない。どの地域がどの州の管理下に置かれることになるか、あるいはどの州の管理下にも置かれないままになるかは、ゲームの展開によって決まる。ただし、ベンガル・マドラス・ボンベイ各地域に限っては、もし管理下に置かれることになるとすればそれぞれ同名の州に対してということになる)

 

◇ インドのマップとその見方

 

インドのマップは八地域に分かれている。

  • 各地域にはストレングスが設定されており、これは通常、その地域に置かれた塔によって示される。塔の階数がその地域のストレングスとなっている(屋根は勘定に入れない)。ストレングスはその地域の攻撃値および防御値を決めるために用いられる。
  • 各地域の中にいくつか、点線で繋がれた楕円が書かれており、これは注文Orderと呼ばれる。注文の楕円の内部に記された数字はその注文の価値を意味する。注文はプレイヤーにとっては経済的好機を意味する。
    • 黒い太線の楕円で書かれた注文は母港Home Portと呼ばれる。プレイヤーはここから更にインド奥地の他の注文へ分け入っていく。
    • 注文がクローズしたら、「クローズされた注文」トークンでその注文を覆う。これは貿易の妨害や反ザ・カンパニー傾向を表現している。
  • 各地域には政治属性がある。主権地域Sovereign、または被支配地域dominatedのどちらかだ(正確に言えば、ザ・カンパニー管理下の地域があり、これは被支配地域とは区別される。原文ではcontrolled by the Company、またはassociated with their Presidencyと称されており、どちらも同じ意味で用いられているため、この抄訳では訳し分けない)。主権地域は、屋根に旗が立っていない(帝国でもなく帝国に支配されてもいない、またザ・カンパニーの管理下にもない地域を意味する。次項参照)、または大きな旗が立っている(帝国の首都地域の意。次項参照)ことで示され、近隣を侵略しようとする。被支配地域は屋根に小さな旗が立っていることで示され、主権を再獲得するため反乱を試みる。

 

◇ 帝国

 

ある地域が別の地域を制服したら、それにより帝国Empireが形成される、またはすでに帝国であればその帝国が拡張する。帝国は首都となる地域ひとつ(星つきの旗で示される)と、最低一つの被支配地域(同じ種類の旗の小型版で示される)によって構成される。多くの場面で、攻撃や防御の際、帝国は自らを構成する地域のストレングスを足し合わせる(後述)。

帝国は首都1地域のみになったら、もはや帝国ではないので、旗をサプライに返却する。

 

◇ 迫り来る危機(象)

 

象はインドに迫り来る危機 Crisis を示す。象は常に場に出ている。インドには以下の二種類の危機がある。

  • 差し迫る侵略 Invasion。象がふたつの地域の境界に置かれたら、象の尻尾側にある地域が、象の頭側にある地域の侵略の準備ができていることを意味する。
  • 差し迫る象が地域の真ん中に置かれるか、あるいはその地域を支配する地域に顔を向けておかれた場合、その(被支配)地域が支配地域(であるところの主権地域)に対して反乱 Rebellion の準備ができていることを意味する。(地域の真ん中に置かれた場合、通常は、ザ・カンパニーの管理下にある地域がザ・カンパニーに対する反乱の準備をしていることを意味する)

侵略invasionと反乱rebellionは「インドのイベント」フェイズで後述する。

 


■ 交渉 ■

 

本作は交渉ゲームであり、プレイヤーは様々な資産を他プレイヤーとやりとりできる。具体的には事業、伏せた恐喝カード、ファミリーの金庫にある現金、株、約束カードを譲渡できる。譲渡「できない」のは、オフィス持ち※、書記官writer、士官officer、報賞枠に載っている駒、配偶者、可決した法、プレイ済みの恐喝カード、首相ダイヤル、トロフィーだ。

※Officeholder。官吏の意だが、ゲーム上は「オフィスを割り振られたファミリーメンバー」の意味であり、原文に注釈がないことを加味すると、第一義的には字面通りに「オフィス持ち」として受け取ることが期待されているものと考えられる。以上の理由により、この訳では「オフィス持ち」で通す。

 

◇ 約束カード Promise Cards

 

交渉の過程で他プレイヤーに渡すことのできる約束カードを、どのプレイヤーも五枚持っている。他プレイヤーに対して約束カードの履行を要求し、これをもって約束を守れる限り守ることを保証させることもできる。ただし重要な点として、ゲームが終了し最終決算に入ってしまったら、約束カードの履行要求はできない。複数のプレイヤーが約束の履行要求を同時に行い、しかし両方の約束を同時に満たすことはできないという場合、どちらの約束を優先して守るかは約束を出したプレイヤーが選べる。どの約束カードにも、背面に、詳細な使い方が書かれている。

  • My consent for nepotism「縁故主義ルールにおいて、私の合意はとれたものとしてよい」いずれかのオフィスの雇用処理中に使用。なお、指揮官はオフィスではないのでこのカードの対象にならない。また、チェアマンの決定は雇用ではないのでこのカードの対象にならない。
  • Vote with my enterprises as if you owned them「私の事業を、君が所有するかのように使って票を入れてよい」審議対象の法案カードが選択され、ダイヤルを回す処理が行われ、まだ一票も投票されていないタイミングで用いる。首相の事業(ひとつでも複数でも)を使って、反対票を入れることができる。この票を他の誰にも使わせないことを選択可能。
  • Take my officeholder's bonus「私のオフィス持ちのボーナスを持っていってよい」ザ・カンパニーのフェイズ中、いずれかのオフィスの行動が終わった直後に使う。このカードでは、略奪の分け前は受け取れない。知事が破滅的失敗で取り除かれた場合、そのオフィスがこのターンに得ていたかもしれないボーナスは受け取れない。
  • Take £2 or less from me「私から£2まで持っていってよい」いつでも使用可能(維持コスト支払いのタイミングで使って、維持できなくさせてもかまわない)。ファミリーフェイズで使って購入を妨げた場合、妨げられた側は、行おうとしていた購入をとりやめて別のものを買おうとすることは可能。
  • Take my card from the London Season Display「私のカードをロンドンシーズンの場札から持っていってよい」(おそらく、ロンドンシーズンの場札からカードを取る権利の譲渡の意)ロンドンシーズンフェイズの最後のステップ中に使用。場札内の恐喝カードの中身を覗き見てよい。このカードは、あなたが自分自身の引退者を通じてカードを獲得したり、別の人から渡された同じ約束カードによってカードを獲得したりするのを妨げるものではない。Becky Sharpの能力は、Beckyを保有するファミリーにしか適用されない。

リソースを譲渡する場合、ゴールデンルールがひとつある。つまり、「譲渡された物をふたたびアクティベートすることはできない」。例えば、ボーナスフェイズである工房から£1を受け取ったプレイヤーが、この工房を直ちに別のプレイヤーに売却したとして、同一ラウンド中に購入者がこの工房の£1を受け取ることはできない。

交渉において、直ちにリソースを譲渡する合意には拘束力がある。それ以外の合意には拘束力が無い。

譲渡に関するその他のルールは以下の通り。

  • 事業カードと恐喝カード。事業カードはどれでも自由に取引可能。自分の伏せた恐喝カードの中身を他人に覗かせることはかまわないが、内容面を表にして取引してはならない。なお、贅沢品を取引する場合、勝利点合計の調整を忘れないこと。
  • ファミリーの現金。自分のファミリーの金庫から他人のファミリーの金庫へ金銭を移してかまわない。
  • 株。株の所有権を移転する場合、元の持ち主の株の駒をサプライに戻し、自分の駒を同じ場所にかわりに置く。チェアマンは移転できない。
  • 約束カード。約束カードも取引可能。元の発行者に返す取引もできるし、第三者へ譲渡するのも可能。

 


■ ゲームの終了 ■

 

シナリオごとに定められた最終ターンが終了するとゲーム終了となる※。また、ザ・カンパニーの評価Standingが最低(トラック左端)になった場合はただちにゲーム終了する。

※1710年シナリオでは第5ターン(1758年シナリオでは第7ターン、1813年シナリオと1710年長期シナリオでは第8ターン。1758年シナリオと1813年シナリオではゲーム開始が第1ターンではない点に注意)。

ゲームが終了したら、もうプレイヤーは交渉できず、約束を換金できず、恐喝カードをプレイできない(カードが明示的にプレイを認めている場合を除く)。最終決算に進むこと。

最終決算の結果、勝利点の最も高いプレイヤーの勝利。同値の場合、(引退者を置いた報賞枠および贅沢品の)窓税アイコンの多い方を優位とする。それも同じなら、首相に時計回りで見て近い方を優位とする(首相が最も優位)。

 

◇ 最終決算

 

最終決算で勝利点の勘定に入るのは下記の要素。

1. パワー上位2名への勝利点

各プレイヤーは自らの以下のパワーを合計する。

  • パワートラック。各事業およびザ・カンパニーの株は、1つにつき、パワートラック上、その事業/ザ・カンパニーが置かれた位置に対応した数字と同じだけのパワーとなる。(四枠のうち、上段の1枠が2、中段の1枠が1。下段の2つは無価値)
  • 首相と法案。自分のプレイエリアにある可決法案トークンは1つにつきパワー+1の価値がある。首相はその持ち主にパワー+2をもたらす。
  • カード。一部の恐喝カードと1人の配偶者はパワーを生む(事業系名声カードにもパワー付きのものが1枚ある)。恐喝カードのパワーは、カードが伏せていても表になっていても、手に入る。
  • トロフィー。自分のプレイエリアにあるトロフィーは1枚につきパワー+1。

最多パワー保持者と第二位のプレイヤーは勝利点を得る。得られる勝利点の量は、ゲームが第何ターンで終了したかで変わり、盤上に記されている。(1-3ターンなら3/1、4-6ターンなら5/2、7-8ターンなら8/4)

1位が同値の場合は2位扱い。2位が同値の場合は点数なし。

2. 役員会Courtと工房。

ザ・カンパニーが生存したら、ザ・カンパニーの1株につき、役員会で示されただけの値を得点する。ザ・カンパニーが失敗したら、1株につき、役員会で示されただけの値が失点となる。工房は所有する1つにつき得点1。総勝利点は負の値になり得る。

3. 引退、または失敗の結果。

ザ・カンパニーが生存したら、全員が消耗判定を行った後、年金生活者pensioner引退処理を行う(I.ロンドンシーズンの項で後述)。名声カードは獲得できない。ザ・カンパニーが失敗したら、ザ・カンパニー失敗カードを一枚めくり、これを解決する。

 

◇ ザ・カンパニー失敗カード

 

  • COURT OF DIRECTORS BLAMELESS! 「役員会の責にあらず」ザ・カンパニーの株は、ザ・カンパニーが成功したのと同じ扱いにする。
  • CARELESS SHIPBUILDERS INDICTED! 「雑な造船業者が起訴された」造船所を1枚持っているごとに勝利点マイナス1。
  • INDUSTRY's GREED CONDEMNED! 「工業界の強欲が糾弾された」工房の勝利点は無いものとする。
  • PARLIAMENT EXPOSED! 「国会が摘発」首相は勝利点マイナス2。可決した法案のカードを1枚持っているごとに勝利点マイナス1。
  • MILITARY REBUKED! 「軍が譴責」士官・見習士官・トロフィーの合計数の半分(端数切り捨て)だけ勝利点を失う。
  • THE BRITISH DESPOT OF INDIA! 「イギリスのインドへの横暴」知事1人につき勝利点マイナス2。総督ならマイナス4。最終ターンで地域の管理権を喪失し知事のマーカーを取り除かれた者は、取り除かれた1枚につき勝利点マイナス2。

 

 

■ ゲームの流れ ■

 

本作『ジョン・カンパニー』は複数のターンによって構成され、各ターンでは以下のフェイズを順に追ってプレイする。

  • I.ロンドンシーズン。オフィス持ちが引退し、名声カードをめぐって争いが起きる。
  • II.ファミリー。プレイヤーはザ・カンパニーに投資し、持ち分を増やす。その後、ザ・カンパニーの新たな株が作られる。
  • III.雇用。ザ・カンパニーが空いているポジションを全て埋める。
  • IV.ザ・カンパニーの運営。ザ・カンパニーの各オフィスが、赤いリボンに示された通り(左から右に)の順番で、運営を行う。
  • V.ボーナス。プレイヤーはボーナス収入を得る。
  • VI.歳入。ザ・カンパニーは費用の支払いを行い、チェアマン(会長)は配当を出したければ出し、ザ・カンパニーの評価の調整を行う。
  • VII.インドのイベント。インドのイベントと嵐の解決を行う。
  • VIII.国会。国会で法案1つの票決を行う。
  • IX.維持更新。プレイヤーは自分の報賞の維持を行い、次のターンのために準備する。

なお、フェイズトラック(赤いリボン)には、II.ファミリーとIII.雇用の間に「ファーム Firm」のフェイズが存在するが、これは1710年シナリオでは常にスキップする。

 


■ I.ロンドンシーズン London Season ■

 

ロンドンシーズンのフェイズは、衰弱、引退、名声カードの3ステップで構成される。第1ターンにはこのフェイズは行わない。

※イギリスでは16世紀末以降、地方の地主貴族、ジェントルマンが5-7月頃にロンドンに滞在して社交生活を送る「ロンドン・シーズン」の風習が生まれており、このフェイズ名はこれを指している。(参考:平凡社世界大百科事典「ロンドン」)。

 

◇ I-1.衰弱 Attrition

 

衰弱ステップは全プレイヤー同時に行う。

自分が保持するオフィスカードのそれぞれにつき、ダイスを1個を振る。出目に対し、対象オフィスカードに載った疲労1個につき+1の修正を加える。その結果が

  • 1-2:なにも起きない
  • 3-4:対象オフィスカードに疲労を(もう)1枚載せる
  • 5以上:そのオフィス持ちは引退する。そのオフィス持ちのファミリーメンバーを、盤上、年金生活者Pensionersの枠に移す。その後、対象のオフィスカードを裏返し、「空きVacant」の面を表にして、ゲーム盤上「空きオフィス Vacant Offices」枠に置く。そのオフィスカードに載った疲労(橙のキューブ)は全てサプライに戻す。

 

◇ I-2.引退 Retirements

 

チェアマンから時計回りに(チェアマンのオフィスが空きになっているなら前チェアマンから)、各プレイヤーは自家の年金生活者Pensionerたち(年金生活者枠に置かれている自家のファミリーメンバー)を引退させることができる。各年金生活者について、盤の左端にある5つの報賞枠のうちひとつを選び、その枠の左上に記された費用を払って、対象の年金生活者をその枠に移す。自家の勝利点マーカーを、枠(の右上)に記されただけ進める。

なお、ほとんどの報賞枠の左上には、入るときの一時金(黒背景に白字)に加え、毎ターンの維持更新フェイズに支払うべき維持費が書かれている。さらに、多くの報賞枠には、枠の中央上部に、国会フェイズで支払いが必要になる、窓税Window Taxアイコンも記されている(窓税の詳細は後述)。

ところで、この支払いは銀行へ行うのだが、直ちに銀行に入れるのではなく、いったん自分のプレイエリアに支払額を置いておくこと。この額で次のステップ(名声カード)の手番順が決定されるため。支払いはロンドンシーズンの終わりに行う。

 

◇ I-3.名声カード Prestige Cards

 

このターンに引退のために最も多くの現金を費やしたプレイヤーから順に、このターンに最低ひとりの年金生活者を引退させたプレイヤーは、必ず、ロンドンシーズンの場札London Season Displayから1枚取って手に入れるか、1枚選んで捨てるか、どちらかを行わなければならない。同額の場合は、これまでに獲得した窓税アイコンの総数(このターンの分も過去の分も含む)の多い方を優位とし、それも同じなら首相に時計回りで近いほうを優位とする(首相が最も優位)。

手番のプレイヤーは、ロンドンシーズン場札にある恐喝カードの中身を覗いて確認して良い。

場札が空になったら、以降はスキップ。

以上が終わったら、場札(まだあれば)を全て捨て札にしてから、山から場札を3枚補充する。恐喝カードは伏せて置くこと。通常の名声カードは内容面を表にして置く。なお、この場札の更新は、誰も場札を取る権利がなかった場合も行う。

最後に、まだ年金生活者枠に残っているファミリーメンバーはすべて、サプライに戻す。

 

◇ 名声カードと恐喝カードの詳細

 

名声カードや恐喝カードにはいろいろな種類がある(抄訳末尾で全て紹介する)。

配偶者 Spouses

配偶者Spouseが書かれた名声カードは通常、自家の勝利点を増やすが、大抵は以降ゲーム中ずっと守らなければならない制約が付いてくる。配偶者は譲渡「できない」。制約が事業や株を捨てなければならないものであれば、プレイヤーはその配偶者を取ったあと直ちにその調整を行わなければならない。「Violet Effingham」カードについては、戻ってきた造船所につながった全ての艤装済の船は場に出たままとするが、そのつながった造船所については、その船が場に出ている限り、ファミリー・アクションのフェイズで購入することはできない。

ほとんどの配偶者は、引退割引効果を持っており、カードに示された額だけ、引退に必要な費用を下げる。複数の配偶者の効果を累積させることができるが、各配偶者の効果は各ステップ(および最終決算)につき一回しか適用できない。なお、名声カードステップの手番順は実際の支払額で決まる点に注意。

事業 Enterprises

事業が書かれた名声カードは、プレイヤーが使える特殊能力をもたらす。ゲーム終了時には、他の事業と同様、パワーとしてカウントされる。また、国会フェイズで政策による影響も、他の事業と同様に受ける。この事業は譲渡可能。

恐喝カード Blackmails

恐喝は一回限りの効果をもたらす。使用したら自分のプレイエリアに内容面を表に向けて置いておく。使用済みの恐喝は譲渡できない。最終決算時、自家のプレイエリアにある恐喝カードは(使用済みであっても伏せてあっても)パワーになる。

 


■ II.ファミリー Family ■

 

ふたつのステップで構成される。まず、全員、自家のファミリーアクションを行う。その後、ザ・カンパニーの新株発行が行われる。

 

◇ II-1.ファミリーアクション Family Action

 

チェアマンのプレイヤーから時計回りに、各プレイヤーは後述する選択肢のうちひとつ、ファミリーアクションを選ぶ。選んだアクションのところに、自家の(ガラス製の)機会マーカーを置くこと。(ゲーム開始時には、この機会マーカーはどのアクションの上にも載っていない)

このステップ開始時にすでに機会マーカーが載っているのと同じアクションをこのターンにも選んだ場合、そのアクションを2回行える。(そうでないアクションを選んだ場合は1回のみ)

  • 追加アクションについて。法案の一部には、プレイヤーに対して、メインアクションを行った後で追加アクションをおこなうことを認めるものがある。そのような法案が複数可決している場合、最も近年に可決した追加アクションのみが実施可能。この法案による追加アクションは、機会マーカーによる2回実施の対象にならないし、また、追加アクションを実施したからと言って、追加アクションのところに機会マーカーを動かすわけでもない。
  • ファミリーメンバーの駒を置く必要があるが足りないという場合、報賞から一枚取ってきて使っても良い。この場合、報賞に記された分の勝利点が失われる。
書記官を入れる Enlist Writer

3つある地域書記官枠のいずれかに自家のファミリーメンバーを1枚入れる。空きオフィスが4つかそれ以上あった場合、追加でもう1枚、地域書記官枠に送り込める。

(見習)士官を入れる Enlist Officer

自家のファミリーメンバーを1枚、見習士官officer-in-training枠に入れる。

贅沢品の購入 Purchase Luxury

銀行に£4払い、贅沢品Luxuryを1枚取る。贅沢品を1枚保有していると、保有している間、勝利点2点が入る(勝利点トラック上のマーカーを動かすこと)。どの贅沢品にも窓税アイコンが1つ書かれており、国会フェイズでの展開によっては税金を支払う必要がある。どの贅沢品も、社会系事業1つとして勘定に入れる。

造船所の購入 Purchase Shipyard

銀行に£2払い、造船所Shipyardを1枚取る。対応する船トークン1枚を取って、その造船所に載せる。造船所は、その船が艤装済fittedのものであれば毎ターン£1のボーナスをもたらし、また国会フェイズでは1票をもたらす。どの造船所も、運輸系事業1つとして勘定に入れる。

工房の購入 Purchase Workshop

銀行に£5払い、工房Workshopを一枚取る。工房は毎ターン£1のボーナスをもたらし、国会フェイズでは2票をもたらす。ザ・カンパニーが失敗におわった場合、最終決算において勝利点1をもたらす。どの工房も、製造系事業1つとして勘定に入れる。

株をもとめる Seek Share

ファミリーメンバーを一枚、株式市場Stock Exchangeトラック(Court of Directorsの上、£2/£3/£3/£4/£5の5マスで構成された枠)のうち(ルール上明示されていないが、おそらく「任意の」)空きマスに置き、そのマスに書かれた額を銀行に支払う。このファミリーメンバーは、次のステップで株仲間になる可能性がある。株仲間になったら、配当金として収入をもたらすかもしれないし、ザ・カンパニーが生存したら、ゲーム終了時に勝利点が加算される。ザ・カンパニーが失敗に終わったら、勝利点が減算される。

 

◇ II-2.新株発行 New Company Shares

 

ザ・カンパニーの債務がゼロではない場合、株式市場トラックで一番右側に置かれているファミリーメンバー1枚を直下の役員会Court of Directors枠に移し、債務を1減らす。まだ債務がゼロになっておらず、株式市場トラックにファミリーメンバーもいる場合、これを(債務がゼロになるか、ファミリーメンバーが全て役員会に入るまで)繰り返すこと。

債務がゼロになってもまだファミリーメンバーが株式市場トラックにいる場合、この残ったファミリーメンバーを、株式市場トラックの右側のマスに(ファミリーメンバー同士の相対的な位置関係は保ったまま)詰める。

 


■ III.雇用 Hiring ■

 

このフェイズでは、ザ・カンパニーの空きオフィス全てにつき、雇用によりポジションを埋める(埋めようとする)処理を行う。

なお、各州のアーミーの指揮官Commander(Army of Bombay, Army of Madras, Army of Bengal各枠に1つずつ用意されたマスSlot)は、オフィスではない。

 

◇ 雇用一般手順

 

オフィスカードには背面に番号が振られており、この番号が若い順に雇用を行う。空きオフィスへの雇用は、そのオフィスへの採用権を持つオフィスの主(オフィス持ち)が、定められた候補者プールから選択することで行う。どのオフィスが採用権を持ちどこを候補者プールとするかは、そのオフィスカードの背面に書かれている。候補者からひとり選ばれ雇用されたら、そのファミリーメンバーを新しいオフィスのところに移し、その担当プレイヤーに対応するオフィスカードを渡す。

  • 縁故主義 Nepotism。自家のファミリーメンバーを雇用してよいが、そのオフィスの候補者プールにファミリーメンバーを置いた全ての他プレイヤーの口頭による同意が必要(合意が得られない場合は自家以外から選ばなければならない)。このルールはチェアマンの選挙には適用されない。
  • 昇進。一部の高級なオフィス(貿易局長 Director of Tradeなど)は、オフィス持ちから雇用される。これによってファミリーメンバーが昇進した場合、元々のオフィスは空きになるので、裏返して空きオフィスVacent Office枠に置かれる(このフェイズ中、番号順でふたたび雇用の処理が行われる)。なお、昇進したオフィス持ちの疲労キューブは新たな役職に持ち越される。
  • 候補者がいない場合、そのオフィスは空きのままになり、そのオフィスについてのアクションは行われない(そのオフィスが採用権を持つ雇用も行われない)。

それぞれのオフィスで、異なる採用ルールが適用される。

 

◇ III-1.チェアマンの選出 Chairman

 

ザ・カンパニーに株を持つプレイヤーはだれでも新しいチェアマン(会長)になろうとすることができる。新チェアマンに選出されるためには、合意する株仲間の数が現在のザ・カンパニーの過半数に達しなければならない。

選挙の開始時、前チェアマンが、過半数を得るために必要な株数を宣言する。その後、どのプレイヤーも立候補し、選挙活動してよい。ある立候補者に同意するプレイヤーの株が過半数に達したら、そのプレイヤーが新チェアマンとなる。

新チェアマンはチェアマンマーカーを受け取り、自家の株仲間のうちひとつを盤上にあるチェアマンのマスに移す。このチェアマンも引き続き1株としてカウントされるが、交渉材料として使うことはできない(この抄訳の対象である1710年シナリオでは関係ないが、規制緩和ルール付きでプレイしている場合、ファーム投資の材料として使うこともできない)。

誰も過半数を集められなかったら、前チェアマンが、最低でも一株を持っているプレイヤーの中から一人、新たなチェアマンを選ぶ(自分自身を選んでもよい)。これは縁故主義ルールの対象外となる。

なお、役員会が空の場合、前チェアマンのプレイヤーがそのまま次のチェアマンとなり、そのプレイヤーがサプライからファミリーメンバーを一枚取ってチェアマンのマスを埋める。

チェアマン以外の雇用はほとんどの場合、簡単に進む。

 

◇ III-2.貿易局長の雇用 Director of Trade

 

チェアマンが、自身(チェアマン)と知事Governorたちを除くすべてのオフィス持ちから、ひとり選んで雇用する。全てのオフィスが空きだった場合は、書記官Writerから任意に選ぶ。なお、指揮官Commanderはオフィス持ちではないので注意すること。
(なお、後述するゲームの展開により、組織が改組され、貿易局長が総督Governor Generalというオフィスに変化することがある。詳細は後述するが、総督の雇用に関するルールは貿易局長の雇用のルールと同じ。)

 

◇ III-3.運輸部長の雇用 Manager of Shipping

 

チェアマンが書記官Writer(Presidency of Bombay, Presidency of Madras, Presidency of Bengalの各枠に置かれたファミリーメンバー)から任意に選ぶ。

 

◇ III-4.軍務の雇用 Military Affairs

 

チェアマンが、各州のアーミーの指揮官Commander(Army of Bombay, Army of Madras, Army of Bengal各枠に1つずつ用意されたマスSlotに置かれたファミリーメンバー)の中から、任意に選ぶ。どの州にも指揮官がいない場合、士官から任意に選ぶ。それもいなければ、見習士官(Military affairsの枠に置かれたファミリーメンバー)から任意に選ぶ。

 

◇ III-5~7.州長官の雇用 Presidents

 

ボンベイBombay, マドラスMadras, ベンガルBengal の3つのオフィスの雇用をこの順で行う。貿易局長が、その州の書記官およびその州に従属する知事の中から任意に選ぶ。

 

◇ III-9~16.知事の雇用 Governor

 

八つある地域のうち、ザ・カンパニーが管理するところに設けられるオフィス※。その知事が従属する先である州長官が、その地域の書記官および士官から任意に選ぶ。知事に選ばれたファミリーメンバーは、対応する知事オーバーレイの上に移す。なお、指揮官Commanderは士官Officerではないので、知事には選ばれない。

(※ただし、ゲームの展開により、貿易局長が総督に改組された場合、知事というオフィスは消滅する)

ボンベイBombay, マドラスMadras, ベンガルBengal、パンジャブPunjab、デリーDelhi、マラサMaratha、ハイデラバードHyderabad、マイソールMysoreの順で処理する。

 

◇ (III-8).中国貿易監督 Superintendent of Trade in China

 

後述する特定の状況になった時にのみ設けられるオフィス(内容物の中に中国貿易監督オーバーレイがある)。チェアマンが書記官から任意に選ぶ。

 


■ IV.ザ・カンパニーの運営 ■

 

ゲーム盤上の赤いリボンに示されている順番に従い、チェアマンから順に、各オフィスの運営を行っていく。なお、チェアマンがこのフェイズの迅速な進行とステップ実施者の把握に責任を負う。小槌やベルを使うと良い。

  • 空きオフィス。空きオフィスがある場合、そのオフィスの運営はスキップする。
  • 空アクションの禁止。効果が無い、または成功率がゼロのアクションは実行できない。

 

◇ 成功判定

 

多くのアクションには成功判定が要求される。成功判定の際は、まず、消費するリソースの量を宣言する。オフィスカードに、消費リソース量と与えられるダイスの関係が示されているので、示されているだけのダイスを受け取る。何らかのペナルティがある場合は、そこからペナルティ分のダイスを減らす。ダイスを振り、最も低い目を見る。その目が、

  • 1か2:成功。
  • 3か4:失敗。十分な量のリソースがあるなら、これを消費してもう一度成功判定を試みることができる。
  • 5か6:破滅的失敗。このオフィスでこれ以上の成功判定は行えない。このオフィス持ちは直ちにサプライに戻され、オフィスカードは裏返って空きオフィス枠に移される。そのオフィスカードに載っていた疲労キューブはサプライに戻される。

(なお、一部のオフィスではこれとは異なる判定ルールが適用される)

 

◇ IV-1.チェアマンの活動 Chairman

 

チェアマン(会長)は、まず、望むなら、債務を3段階まで(他プレイヤーの許可なしでも増やすことができる(債務Company Debtトラック上、赤ポーンを右に進める)。1段階進めるごとに、残高トラックCompany Balance上のポーンを右に五マス(£5)進める。それより先に進めたい場合は、株式過半数の合意を取る必要がある(この際には、チェアマンも1株の扱いになる)。債務トラック右端(第8段階)を超えて債務を増やすことはできない。

その後、ザ・カンパニーの残高全額を、他のオフィスの各金庫に割り振る。(必ず全額使い切ること。割り振るごとに残高トラックのポーンを対応する額だけ左に動かす)。

 

◇ IV-2.貿易局長の活動 Director of Trade

 

貿易局長は、望むなら特命公使 Special Envoy アクションを実行することができる。その後、各州の間で、書記官や船を移動させることができる。特命公使アクションは複数回行える。

特命公使 Speical Envoy

成功判定を行う。(オフィスの金庫から)£1払うごとにダイス1個。ペナルティはない。成功したら、以下のいずれかを行える。

  • 中国との貿易の開始。中国貿易監督Superintendent of Trade in Chinaオーバーレイをベンガル州Presidency of Bengalの右横に置き、サプライから対応するオフィスカードを取って、中国貿易監督オフィスを開設する。このオフィスへの雇用は直ちに行われる。
  • 注文のオープン。インドにおける、ザ・カンパニーが管理「していない」地域の、クローズした注文を一つ選び、これをオープンする。
輸送 Transfer

その後、「輸送」アクションを2回まで行える。一回の輸送では、船ひとつまたは書記官ひとつを、ひとつの州または沿岸地域から、別の州または沿岸地域へ移動できる。

 

◇ IV-3.運輸部長の活動 Manager of Shipping

 

運輸部長は、ザ・カンパニーの代理人として、船を艤装し、購入し、リースすることができる。

オフィスに割り当てられた資金は、残りが£2以下になるまで、使わなければならない。資金の用法は以下の通り。

  • 造船所Shipyardの船を艤装fitする。銀行に£3を払い、1枚の造船所Shipyardを選んで、そこに置かれた船1枚を取り、3つある海域のうちひとつ選んでそこに置く。造船所の所有者の許可は不要。
  • ザ・カンパニーの船の購入。造船所に船が無い場合は、銀行に£5支払い、ザ・カンパニーの船1枚をサプライから取って好きな海域に置く。
  • 追加の船のリース。銀行に£2払い、サプライから追加船を1枚取って好きな海域に置く。追加船は短期リースの船であり、このターン終わりの維持更新フェイズでサプライに戻す。

 

◇ IV-4.軍務の活動 Military Affairs

 

軍務は士官や連隊をアーミー間で動かし、新たな士官を割り当て、指揮官Commanderを割り当てる。

まず、アーミー間の輸送を2回行える。一回の輸送では、士官1枚または連隊1枚を、ひとつのアーミーからべつのアーミーへ動かせる。移動した駒は常に、移動先のアーミー枠の上半分に置くこと。

次に、見習士官をすべて、見習士官から三枠のアーミーに割り振る。割り振った新任の士官はすべて、各アーミー枠の上半分に置くこと。

最後に、各アーミーにつき、ひとりのプレイヤーが現在の指揮官のプレイヤーよりも多くの駒を置いている(あるいは指揮官が空きになっている)なら、新たな指揮官を任命する。そのアーミー枠に置いている駒の枚数が最多であるプレイヤーを(複数いるならその中から一人選んで)指名する。そのプレイヤーの士官から1枚を、そのアーミー枠の指揮官マスに移す。前任の指揮官は士官に戻し、そのアーミー枠の上半分に置く。

 

◇ IV-5~7.州の運営

ボンベイ州、マドラス州、ベンガル州の順番で、州の運営を行う。

運営の順番が回ってきた州の長官Presidentは、まず、自分自身と、自州の指揮官、そして自州が管理下に置く各地域の知事の行動順を決める。

州長官は、自分の行動順になったら、貿易Tradeアクションを実行し、これにより、ザ・カンパニーのために収入を生み出す。

指揮官Commanderと知事Governorはアクションを行わなくてもかまわないが、州長官は自州の指揮官と自州に属する各知事に対して、行動を行う機会は与える必要がある。各ポジションは、一つのアクションをすべて終えてからしか次のアクションを始められない(アクション済であることを示すためにファミリーメンバー駒を裏返しても良い)。貿易アクションは、他のポジションのアクション中に割り込む形にならなければ、州の運営中どのタイミングで行っても良い。

州長官が空きの場合、指揮官や知事の行動順を決めるのはチェアマンの役割になる。チェアマンは地方同盟の購入や貿易アクションは行えない。

 

◇ 貿易(指揮官の行動) Trade

貿易アクションにおいては、その州の母港から順に、オープンしている注文を満たしていくことができる。指揮官や知事のアクションの前にやっても後でやってもかまわない。手順は以下の通り。

  1. 貿易を行いたい地域(ひとつでも複数でも)を宣言する。自州の本拠地域Home Region(母港のある地域)は含めなければなない。また、十分な船がなくて貿易が行えない州や、つながっている注文がクローズしていて注文を満たせない州は宣言できない。
  2. 判定を行う。£1払うごとにダイス+1個。自分の本拠地域ではない地域を1つ宣言しているごとにダイス-1個。

成功したら、州の海域に置いてある船1枚につき1つ、書記官を取って空いている注文マスに置く。書記官は置ける限り置かなくてはならないが、宣言していない地域には置けない。最初の書記官は州の母港(マスが太線になっている)に置くこと。2枚目以降の書記官は、すでに置かれた書記官に点線で隣接するマスに置く。注文をひとつ満たすごとに、そのオーダーに書かれている額だけ、ザ・カンパニーの残高を増やす。

  • 書記官不足。全ての書記官が出払い、船はまだ追加のオーダーを受けられるだけ残っているという場合、書記官のかわりに「満たされた注文Filled Order」トークン(「クローズした注文」トークンの裏面)を置いて、注文が満たされたことを示す。
  • 他の州の本拠地域(母港のある地域)では(その州の長官が空きであろうと)注文を満たせない。
  • 1ターンにできる貿易は1回のみ。

その後、州長官のプレイヤーは、満たした注文1つにつき£1を銀行から受け取り、自家の金庫に置く。

また、オーダーを満たすために自家の書記官が置かれたプレイヤーはそれぞれ、1枚につき£1を銀行から受け取り、自家の金庫に置く。

書記官を置いたマスが、別州の書記官が置かれたマスと点線で隣接していた場合、どの書記官がどの州に属するか示すため、その点線にディバイダを置く。

 

◇ 指揮官 Commander

 

指揮官はまず、自州の長官Presidentに対して、地方同盟の購入を要請できる※。購入できる地方同盟駒はそのアーミー枠(の下半分)に置かれているもので、購入したらこれをアーミー枠上半分に移す。購入費は同盟駒に書かれており、費用は州の金庫から出る。

※要請の手順が具体的には記されていないが、単純に、指揮官の行動順のはじめに、指揮官が州長官に購入を要請することができ、購入の要請に対して州長官はただちに承認または却下を宣言しなければならない、という形で行うものと考えられる。

  • 地方同盟は一時的なアーミー駒として扱われる。地方同盟のストレングスはふたつの目的で用いられる。ひとつは戦闘配備Deployアクション、もうひとつはインドフェイズのイベントによってインドに起きる脅威から身を守るためだ。各駒は買ったターンに一回しか使用できず、ストレングスを複数の目的に割り振ることもできない。

続いて、戦闘配備Deployアクションを、望む回数だけ(先立つものがあれば)実施できる。

戦闘配備 Deploy

戦闘配備は以下の手順で行う。

  1. 対象となる地域を1つ選ぶ。自州の本拠地域(母港のある地域)、自州の管理下にある地域、自州と隣接する地域(自州の管理下にある地域に隣接する地域)から選択可能。(成功しても効果が無いような州は選べない。従って、ザ・カンパニーが管理する地域は、そこにクローズした注文や社会不安が置かれていないと選べない)
  2. 判定。士官や連隊を1枚消耗exhaustさせるごとにダイス+1個。加えて、地方同盟を1枚消耗させるごとに、その地方同盟に書かれた数だけのダイスを得る。消耗させた士官や連隊や地方同盟は、そのアーミー枠の下半分に移す。対象の地域のストレングスぶんだけダイスを差し引く。選んだ地域が帝国の一部だった場合、同じ帝国に属する全ての地域のストレングスを足し合わせた分だけダイスが差し引かれる。(なお、ザ・カンパニーが管理する地域は、防御においてはストレングスがないものとみなし、ダイスを差し引かない)
  3. 消耗させられた士官1枚ごとに、その士官の所属する家はダイスを1つ振る。6が出たら、その士官は死亡扱いとなりサプライに戻される。この処理は連隊については行われない。

戦闘配備が成功したら、まず、以下のルールにより、略奪したものを分け合う。地域から略奪できる金額は以下の合計で決まる。

  • 塔の階層(=ストレングス)1階につき4
  • 略奪トークンによる修正(管理/略奪トークンが略奪トークン側を向いている、つまりザ・カンパニーに管理されていなかった場合のみ):+3から+9

これを、戦闘配備に参加して生き延びた士官で、以下のルールにより分け合う。まず、指揮官自身に£1。次に、指揮官の家の士官それぞれにつき£1。以降はこれを時計回りに、全プレイヤーについて行う。(途中で金がつきた場合、全士官に£1が行き渡るまで、銀行から金銭を継ぎ足す)。まだ金が余っているなら、消耗させた連隊および地方同盟1枚につき£1を銀行に納める(地方同盟はストレングスに関係なく一枚£1)。まだ余っていたら、もう一周、指揮官自身に£1を払うところからやりなおし、これを何周でも、金がなくなるまで繰り返す(二周目以降は、途中で金がなくなっても銀行からの金銭の継ぎ足しは無い)。

略奪品の分け合いが終わったら、以下の手順で戦闘配備成功の手続きを進める。

  1. トロフィーの獲得。指揮官は、対象の地域の塔の階数1階につきトロフィーを1枚、獲得する。その後、塔と屋根を撤去する。それが(帝国の)首都だった場合、同じ帝国の全ての旗を抜き取ってサプライに戻す。
  2. 注文の賦課。クローズした注文を全てオープンし、社会不安キューブ(その地域に置かれた橙のキューブ)を全て取り除く。
  3. 対象の地域がザ・カンパニーに管理されていなかった場合、その地域の管理/略奪トークンを、地域シンボルが描かれた面を表に向けて、指揮官が属する州の枠に置く。これにより、この地域はその州に従属する。その地域に知事Governorオーバーレイを置くこと。最後に、その知事のオフィスカードをサプライから持ってきて空きオフィスに置く。これでこの地域はザ・カンパニーの管理下に置かれる。(なお、侵略対象となった地域に象が置かれており、この象が別の地域のほうを向いていた場合、この象を、その侵略対象になった地域の真ん中に置く。これにより、この地域はザ・カンパニーに対して反乱の意図があることになる。)

戦闘配備が破滅的失敗になった場合、指揮官(の属する家)は自分の持つトロフィーの半分(端数切り上げ)をサプライに戻した上で、指揮官もサプライに戻す。

 

◇ 知事 Governor

 

戦闘配備アクションの結果、地域がザ・カンパニーの管理下に置かれると、その地域の知事のオフィスが用意される。

知事は、徐々に減っていくダイスプールを使って、統治Administerアクションを行う。まず、オフィスカードに記されただけのダイスを受け取る(MADRAS, BENGAL, DELHIの知事は4、その他の地域の知事は3)。その後、統治アクションをまず1回行う。

統治 Administer

プールに残っている数のダイスを使って判定を行う。ペナルティはない。

成功したら、まず£1を銀行から受け取って自家の金庫に置いた上で、以下の3つのうち1つを実施する。前回の判定が失敗に終わった上で今回は成功したというのであれば、さらに追加で£1を受け取る。

  • ザ・カンパニーの船の建造。船が作られ利用可能になるためには、統治アクションに2回成功する必要がある。1回成功し、建造を選んだ段階で、ザ・カンパニーの船をサプライから取って、自らの地域に置く。この地域に置かれた船は建造中であることを意味し、この段階では効果を持たない。2回目に成功したら、この船を自州の母港につながった海域に移す。これでその船が利用可能になる。
  • 連隊の任命。サプライから連隊を1枚取って、自州のアーミー枠に置く。
  • 徴税。銀行から£2を受け取り、これをザ・カンパニーの残高に加えるか、あるいは自州の金庫に入れる。分けて両方に入れることはできない。1ターンに2回以上徴税を行った場合、2回目以降は社会不安キューブ(橙のキューブ)を1個ずつその地域に置く。

判定が失敗したら、社会不安キューブ(橙のキューブ)をその地域に1個置く。
ここまで終わったら、結果の如何に関わらず、プールからダイスを1つサプライに戻す。

望むなら、破滅的失敗を起こさない限り、ダイスが無くなるまで、またはこれ以上やりたくないと思うまで、統治アクションを続けて行ってよい。

 

◇ IV-8.中国貿易監督 Superintendent of Trade in China

 

貿易長官Director of Tradeの「中国への特命公使Special Envoy to China」アクションが成功するか、国会の「中国使節 Envoy to China」法案が可決したら、このオフィスが設置される。設置されたらただちにチェアマンによって、書記官から任意に雇用が行われる。

州の金庫と異なり、中国貿易監督の金庫には船しか置かない。運輸部長Manager of Shippingや貿易局長Director of Tradeは、中国貿易監督の枠に、そこが海域であるかのように、船を送り込むことができる。嵐や消費やイベントや法案によって船の置かれた海域が問題になる場合、ここに置かれた船は東の海Eastan Seaにあるものとみなす。
このオフィスは、ベンガル州長官Presidency of Bengalの次に運営を行う。

中国貿易 Trade in China

中国貿易は、ケシのアイコン※が描かれた地域をザ・カンパニーが最低ひとつは管理していないと行えない。中国貿易を行う場合は、成功判定する。このオフィスの金庫に置かれた船1枚ごとにダイス+1個。この判定は一回しか行えない。

(※製品版では別のアイコンに差し替えられている。ベンガルBENGALに2つ、デリーDELHIに1つ、ハイデラバードHYDERABADに1つ、マドラスMADRASに1つ書かれている)

成功したら、ザ・カンパニーが管理する地域に書かれたケシのアイコンひとつにつき£4、ザ・カンパニーの残高が増加する。その後、中国貿易監督(の家)自身も、同アイコンひとつにつき£1を銀行から受け取る。

 

◇ (IV-2.)総督 Governor General

 

総督は、同名の法案が可決したら設けられる。この法案が通ったら、すべての知事は直ちに年金生活者になる。すべての知事オーバーレイをマップから撤去する。また、建設中の(地域に置かれた)ザ・カンパニーの船もマップから撤去する。以降は新たな知事オフィスは作られない。

貿易局長のカードを保持するプレイヤーは、これを総督カードに差し替え、リボン上の貿易局長の枠の上にも総督オーバーレイを載せる。貿易局長のオフィスカードに載った疲労キューブは総督にそのまま引き継がれる。知事のオフィスカード全てと貿易局長のオフィスカードは撤去し、以降登場しない。総督の雇用は貿易局長と同じルールで行われる。衰弱のルールも他のオフィスと同じ。

総督は州長官の採用権を持ち、ザ・カンパニー運営フェイズでは、これまで貿易局長が行っていた役割を担う。貿易局長の金庫は以降、総督が使う。以降、ザ・カンパニーに対する攻撃により地域を失うことがあった場合、地域喪失のルール(後述)には従うが、知事排除のステップ(後述)はスキップする。

総督の手番では、まず、ザ・カンパニーが管理する地域ひとつにつき£3、ザ・カンパニーの残高を増やす。

続いて、総督は、以下に述べる政務アクションを実行する。1回成功したらそれ以上は行えないが、破滅的失敗が起きない限りは何度失敗してももう一度試みてよい。

政務 Govern

以下の手順で行う。

  1. 成功判定。£1支払うごとにダイス+1個。ペナルティはない。
  2. 判定で6の目がひとつ出るごとに、ザ・カンパニーの管理する地域「すべてに」、社会不安キューブを1つずつ置く。

判定が失敗したら、ザ・カンパニーの管理する地域すべてに、社会不安キューブを1つずつ置く。

判定が成功したら、総督(の家)は、ザ・カンパニーが管理する地域ひとつにつき£1を受け取る。続いて、ザ・カンパニーが管理するそれぞれの地域につき、必ず、以下のうちひとつを選んで実行する。

  • 総督の船の建設。ザ・カンパニーの船を1つ、サプライから取って任意の海域に置く(中国貿易監督の枠でもよい)。
  • 総督の連隊の任命。サプライから連隊を1枚取って任意のアーミー枠に置く。
  • 総督の徴税。ザ・カンパニーの残高を£2増やすか、自分以外の任意のオフィスの金庫に£2を置く。その後、ザ・カンパニーの管理する地域から1地域選び、社会不安キューブを1つ置く。同一手番に徴税を複数回行う場合、そのたびに別の地域に社会不安キューブを置く必要がある。

 


■ V.ボーナス Bonuses ■

 

各プレイヤーは、保有する工房1枚につき£1、船が艤装済の造船所1枚につき£1を、銀行から受け取る。

 


■ VI.歳入 Revenue ■

 

歳入フェイズでは、ザ・カンパニーが支出を払い、ザ・カンパニーへの期待を確認し、そして配当の支払いを行う。

このフェイズ中、ザ・カンパニーの評価Standingは頻繁に再調整される。評価マーカーが評価トラック上の左端のマスまで行くと、ザ・カンパニーは失敗したことになり、直ちに最終決算に進む。

 

◇ VI-1.支出 Expenses

 

まず、債務トラックで示された数値1につき£1、連隊1枚につき£1、アーミー内の士官1枚につき£1(指揮官は含まない)、各海域にいる船1枚につき£1を、残高トラックから差し引く。

支出を支払えない場合、これを支払うため、緊急ローンを直ちに組まなければならない。債務トラック上、一つ先に進めて£5を得た後(すでに最も先まで進めている場合はそれ以上進めないが£5は受け取れる)、必要な支払いを全て行い、その後で残高をゼロにする(一回の緊急ローンで足りない場合は、緊急ローンを複数回行うこと)。なお、同一ターンに1-2回の緊急ローンを組んだ場合は評価トラック上の評価を1下げ、3回以上組んだ場合は2下げる。

 

◇ VI-2.期待チェック Check Expectations

 

次に、この段階で、ザ・カンパニーの残高が、現在の評価トラック上に記されている期待残高額に満たない場合、評価トラック上の評価を1下げる。

 

◇ VI-3.配当の支払い Pay Dividends

 

最後に、チェアマンは配当の支払いを行っても良い。1回行うごとに、ザ・カンパニーの残高から、株仲間のそれぞれに£1ずつ支払う(チェアマンも株仲間である点に注意)。残高が続く限り何回行っても良い。このターンに支払った配当の総額が、現在の評価トラック上に記されている期待配当額よりも多い場合、評価トラック上の評価を1上げる。

 


■ VII.インドのイベント Events in India ■

 

このフェイズでは、嵐ダイスを振って嵐の処理を行った後、インドでのイベントを何回か行う。

 

◇ VII-1.嵐ダイス The Storm Die

 

嵐ダイス1個を振る。出た目によって、どの海域の船が影響を受けるか、そしてこのターンでインドのイベントが何回起こるか決まる。

(目は、E/2, W/2, S/3, all/1, -/4, -/4 の六つ。スラッシュの左が嵐の起きる海域、右がイベント回数)

  • 3つある海域のいずれかの目がでたら、その海域の船が嵐の対象になる。その海域にいる船(ザ・カンパニーの船や追加船は除く)はそれぞれ、サイコロを1個振ること。なお、嵐が三つ記された目が出た場合は、全ての海域の船(ザ・カンパニーの船や追加船を除く)が嵐の対象になり、それぞれサイコロを1個振る。この1個振った出目が1-2なら何も起きないが、3-4の場合、その船は疲労する(すでに疲労していた場合は沈没)。5-6が出た場合は直ちに沈没。沈没した船は造船所に、疲労していない面を向けて戻す。

 

◇ VII-2.イベント処理 Events in India

 

嵐の処理の後、嵐ダイスに記された回数だけ、インドのイベントを行う。1回のインドのイベントは、イベントタイルの山から1枚めくり、そのめくったタイルに書かれたイベントを行う。イベントは基本的には特定の1地域で発生する。イベントに特記のない限り、タイルをめくったことで新たに山札の一番上になったタイル背面に書かれている地域が、そのイベント発生地域となる。

  • イベントの処理によって、注文がクローズする場合がある。書記官が置かれている注文がクローズしたら、その書記官はサプライに戻る。「満たされた注文」マーカーが置かれていた注文がクローズしたら、そのマーカーを裏返し、「クローズした注文」の面を表に向ける。
  • 波及 Cascade。ある地域の注文のいずれかをクローズすることになったが、その地域の注文がすでにクローズしていたという場合、「波及」が発生する。その地域に直接接続する注文は全てクローズする(すでにクローズされていたら、その注文と同じ地域にある、クローズしていない最も北側の注文をクローズする。同地域の注文が全てクローズしていたら、さらなる波及が発生する)。イベントタイル1枚の解決で各地域に発生する波及はそれぞれ1回まで。ただし、ひとつの地域が、複数の波及の影響を受ける場合はある(ある地域に隣接する地域が複数あり、そのそれぞれで波及が発生した場合のことを言っている)。
地域喪失 Region Loss

イベントによってザ・カンパニーの管理下の地域に対する攻撃が発生し、それにより、その地域へのザ・カンパニーの管理権が失われる場合がある。これが発生するごとに、以下の順を追って地域喪失の処理を行う。

  1. 指揮官の汚名の処理を行う。その地域を管理していた州のアーミーの指揮官(のプレイヤー)は、自家のトロフィーの半分(端数切り上げ)をサプライに返す。また、その指揮官はサプライに戻される。
  2. 士官の敗走。そのアーミー内にいる士官はそれぞれサイコロ1個振る。6が出たら、その指揮官は撤去する(サプライに戻す)。
  3. 知事の撤廃。その地域に知事がいた場合、その知事のオフィスカードは未登場オフィスの山に戻し、知事になっていたファミリーメンバーはサプライに戻す(疲労キューブが載っていたらこれもサプライに戻す)。
  4. 地域の権威の復古。知事のオーバーレイ、ザ・カンパニーの船、その地域の社会不安キューブ、これらを全てをサプライに戻し、かわりに屋根駒と塔階層駒をひとつずつ取ってきて重ね、その地域に置く(この処理が「侵略危機Invasion Crisis」の成功によって発生したものであれば、適切な色形の旗を屋根に刺すこと)。この地域の管理/略奪トークンを、略奪面を伏せる形でその地域に置き直す(この地域に対する略奪はもう発生しない)。この地域内の注文は全てクローズする(元々全てクローズしていたら、波及が発生する)。
  5. ザ・カンパニーの屈辱。この段階で、ザ・カンパニーの評価を、このターン中に喪失した地域の数だけ下げる。もし同一ターン中に喪失が2地域で起きていた場合、1地域目の喪失処理で1下がり、2地域目の喪失処理ではさらに2下がるので、合計3下がることになる。これで評価が最低まで下がったらザ・カンパニーは失敗となる。(インドのイベントフェイズの終わりまで処理した上で、最終決算を行うこと。)
象の行進 Elephant's March
  • イベントの処理の後に象が動く場合がある。「侵略危機 Invation Crisis」が成功した時の処理の場合、象は常に、その成功した首都地域に移動する。そうでなければ、イベントタイル山の一番上のタイル背面に書かれた地域に移動する。象を移動した後、以下の手続きで、象をその地域のどこに置くか決める。
  • その地域がザ・カンパニーの管理下にある場合、象はその地域の真ん中に置く。
  • その地域が別の地域の支配を受けていた場合、象は支配地域との境界に、その支配地域に頭を向ける形で置く。
  • その地域が主権地域である場合、めくったタイルに記されている記号(丸か三角か四角)に対応する境界に、地域の外側に頭を向ける形で置く。本来頭を向けて置くべきさきの地域がすでにこの地域の支配下にあるという場合は、そこから時計回りに見て一番近い、この地域の支配下にない地域に頭を向ける形で置く。なお、境界を接する全ての地域を支配下に置いているという場合、めくったタイルの象リダイレクト矢印に記された記号に対応する境界に、この地域、つまりこの帝国の首都に頭を向けて置く。

 

◇ イベント詳細

 

Turmoil 混迷

イベント発生地域の最も北にあるオープンの注文をクローズする。

Windfall たなぼた

イベント発生地域、およびそれに接する全地域で、注文の上に置いた自分の書記官1人につき£1を銀行から受け取る。

Shuffle シャッフル

まず象の行進の処理を行う。その後、このタイルを、山の残りと一緒にシャッフルして伏せ山にする。その後、すでにめくられた捨て札を伏せてシャッフルし、先ほどシャッフルした伏せ山の上に重ねる。なお、山が完全に尽きており象の行進の対象地域を決められない場合、山を作り直した後で象の行進を行う。

Leader リーダー

イベント発生地域が主権地域の場合、塔の階層を1増やす。そうでなければ、「めくったタイル自体に記されている地域で」反乱が発生する。ストレングス修正値はタイル右側に記されている通りの値とする。通常はこのイベントは象の移動を起こさないが、象が反乱発生地域の真ん中にいて、かつその反乱が成功した場合に限り、象の行進が発生する(記号はタイルに書いてある)。

Peace 平和

(イベント発生地域は象で決める)象が立っている境界をまたぐ点線に直でつながった注文をすべてオープンにする。加えて、象に触れている両地域のうち、ザ・カンパニーの管理下にない地域の塔階層を+1する(象が地域の中央にいる場合、その地域の注文をすべてオープンにし、その地域の社会不安キューブを全て取り除く。その後、象の行進を行う。

Crisis 危機

(イベント発生地域は象で決める)象の尻尾側の地域が攻撃側地域、頭の地域が防御側地域となって、危機の処理を行う。危機の処理後、象の行進を行う。攻撃側地域が主権地域の場合、この危機を「侵略危機 Invation Crisis」として扱う。攻撃側地域が被支配地域の場合、この危機を「反乱 Rebellion」として扱う。

  • 侵略危機 Invasion Crisisでは、攻撃側のストレングス(にタイルに書かれた修正を入れた値)と防御側のストレングスを比較する。攻撃側も防御側も、帝国なら被支配地域のストレングスも全て足すこと。攻撃側のストレングスが防御側より高ければ攻撃成功、そうでなければ失敗。攻撃が失敗した場合、攻撃側の塔階層を1削る。攻撃が成功した場合、防御側地域に旗が立っていたならこれを抜いて、攻撃側の旗(の小さい版)を代わりに立てる。攻撃側がまだ帝国でなかったのであれば、このタイミングで帝国になる(ただし、もう旗の色のストックが無い場合は、帝国は成立せず、防御側に旗を立てない)。なお、防御側の地域が帝国の首都だった場合、同帝国に属する全ての地域の旗をサプライに戻すこと。
  • 反乱 Rebellionでは、防御側が帝国であったとしても、攻撃対象となる1地域のストレングスしかカウントしない。攻撃側のストレングスが防御側より高ければ攻撃成功、そうでなければ失敗。反乱が失敗した場合、首都から塔階層を1削る。反乱が成功した場合、攻撃側地域は主権地域となるので、攻撃側地域に立っていた旗を抜く。加えて、攻撃側地域に存在していたオープンの注文は全てクローズする(波及も発生しうる)。

侵略であれ反乱であれ、ザ・カンパニーが管理する地域への攻撃が発生すると(これを「元々の危機 Primary Crisis」と呼ぶ)、社会不安キューブが載っている全ての地域で反乱の危機が発生する。これらの処理については以下のルールを適用する。

  • 処理順:まず、元々の危機から処理する。次に、ボンベイ州アーミーArmy of Bombayの指揮官からはじめて下に向かう順で、各指揮官が、自州の管理下の地域からの攻撃を処理する(ひとつの州の管理下の複数地域で攻撃が発生している場合、その処理順は同州の指揮官が選ぶ)。なお、指揮官が空きの州については軍務Military Affairsが代理で処理し、それも空きならチェアマンが代理で処理する。これら代理の指揮官は、戦闘の結果によってトロフィーを得たり失ったりしない。
  • 攻撃側のストレングスについて。元々の危機については、通常通りに計算した後、その地域に載っている社会不安キューブひとつにつき+1。それ以外の地域での危機については、反乱のストレングスは、その地域に載っている社会不安キューブの数と同じとする。
  • その地域が属する州の指揮官Commanderは、危機を潰すため、攻撃側のストレングスと同じだけのアーミーを消耗exhaustさせなければならない。それができない場合も、可能なだけ消耗させること。この場合、この反乱または侵略は成功し、地域喪失の処理が行われる。潰えたFailed場合は、その地域(元々の危機については、それが侵略危機である場合には、攻撃側の地域)における社会不安キューブを全て取り除き、州の指揮官はトロフィーを一枚受け取る。
  • 元々の危機が侵略危機であり、またそれが潰えた場合、攻撃側の地域の塔階層を(可能なら)1削る。侵略が成功した場合は、前述の帝国の形成や拡大のルールを適用すること。
Foreign Invasion 外国の侵略

嵐ダイスを振って、目に対応した地域(WならボンベイBombay、SならマドラスMadras、EならベンガルBengal)で侵略危機の処理を1回行う。全地域の目が出たら、3地域それぞれで一回ずつ侵略危機の処理を行う。嵐のない目が出たら、山札の一番上のタイルの地域で侵略危機の処理を行う。

侵略の攻撃側のストレングスについては、サイコロを1個振って、その出目の値とする。通常の侵略危機のルールに加え、侵略が成功した場合は、対象地域のオープンの注文を全てクローズし(波及の処理もあるなら行う)、その地域の屋根に旗が刺さっているならこれをサプライに戻し(それが首都地域だったら、同帝国の全地域の旗をサプライに戻す。ザ・カンパニー管理下の地域なら、塔屋根をサプライから取ってその地域に置き直す)、その地域のストレングスを、侵略側のストレングス(つまりサイコロの目)の半分(端数切り捨て)とする。

このイベントでは通常は象は動かないが、侵略を受けた地域の真ん中に象がいた場合に限り、象の行進を行う(記号は丸とする)。

 


■ VIII.国会 Paliament Meets ■

 

◇ VIII-1.法案の選択

 

首相のプレイヤーは、法案カードの山から1枚ずつ、最大3枚までめくり、めくったものの中から、審議にかける法案を1枚選ぶ。ただし、めくったカードがジレンマDilemmaカードだった場合、新しいカードをめくることはできず、かならずそのジレンマを審議にかけなければならない。新しいカードをめくる前に議論などを行ってもかまわない。めくられたものの審議にかからなかったカードは捨て札になる。

審議にかける法案を選んだ直後に、首相は、ダイヤルの腕を時計回りまたは反時計回り(どちらかにするかは任意に選んでよい)に、選んだ法案カードの下部に記されたアイコンのマスに到達するまで回し、そこで止める。

法案には必ず、政策の結果と対象が書かれている(加えて法案自体のテキストも書かれている)。法案が可決したら、政策の結果を、対象に対して適用する。対象は例えば、一種類の事業、ザ・カンパニーの株、報賞、などがある。

政策の結果は以下の三種類に分けられる。

  • 税金 Tax。各プレイヤーは、対象となるものひとつ保有しているごとに£1、銀行に払う。払えない場合は、その対象物はサプライに戻される(対象物がチェアマンだった場合も例外では無い)。艤装済の造船所がサプライに戻る場合、その造船所に対応する船はサプライには戻らないが、その船が盤上に出ている間は、その造船所をファミリーアクションのフェイズで取得してはならない。なお、首相ダイヤルのうち、一部のマスには窓税アイコン(窓の絵)が記されている。首相ダイヤルが窓税アイコンを指しているときに、審議対象の法案が可決したら、自家が報賞枠に置いているファミリーメンバー1人につき、その枠に書かれた窓税アイコン1つごとに£1、加えて所有する事業それぞれに記されている窓税アイコン1つごとに£1、以上を合計した額を銀行に払う。窓税を払えなかった事業やファミリーメンバーについては、サプライに戻される。
  • ボーナス Bonus。対象となるものひとつ保有しているごとに£1、銀行から受け取る。
  • パワー Power。対象となるパワーマーカーを、パワートラック上、すぐ上にあるパワーマーカーと位置を入れ替える。対象となるパワーマーカーがすでに最上位にいるなら、それ以外のパワーマーカーを任意にふたつ選び、その位置を入れ替える。

続いて、首相は、その法案のテキストを読み上げ、票数トラック上のポーンを、カード右下部に書かれた初期票数に対応する位置に置く。首相は票決に移る前に、議論のための時間をある程度取ること。

 

◇ VII-2.票決 Voting

 

首相からはじめて時計回りに、賛成または反対に、任意の数の票を入れる(票の入れ方はすぐ後で説明する)。一周回ったら、首相はそこで票決を終了してもよいし、もう一周回してもよい。首相は何周でも回して良いが、一周の間にだれも一票も追加で入れなかったら、それ以上は回すことはできない。

票を入れる手番のプレイヤーは、自分のプレイエリアにあるカードを1枚タップするごとに1票入れることができる(票決が終わったら、タップしたカードはすべてアクティベート=アンタップされる)。また、自家の金庫にある金銭を任意の額だけ銀行に支払えば、£1につき1票入れられる。票を入れるごとに票数トラック上のポーンを動かす(前述の通り、票数トラックは無限に延びているものとして扱う)。なお、反対票を入れたプレイヤーは、自分が何票入れたか、任意の方法で記録しておくこと。

前述の通り、票決の手番は複数回まわってくることがある。いったん反対票を入れたプレイヤーは、賛成側に鞍替えすることはできない(逆は可能。ルールには明示されていないが、すでに入れた賛成票数は、鞍替えしたからといって反対側の票に変わるわけではないものと思われる)。手番のプレイヤーが反対票を入れたことで、そのプレイヤーが(この票決のための累計で)単独最多の反対票を入れたプレイヤーになった場合、そのプレイヤーは、「反対派リーダー」マーカーを受け取る。

合意があれば、誰かの代理として票を入れる、ということができる(相手側がすでに一回は票を入れている必要がある)。これは「反対派リーダー」の決定において、誰の票として入った票かが重要になるために存在するルール。なお、首相は反対票を入れられないし、反対派の代理にもなれない。ただし、首相が約束「Vote with my enterprises as if you owned them私の事業を、君が所有するかのように使って票を入れてよい」を切っている場合、それによって首相の所有する事業の票が反対派に入ることはある。

 

◇ VIII-3.投票後の処理 Resolving the Vote

 

賛否同数または賛成多数なら可決となり法案は可決する。反対多数なら否決。否決の場合、その法案カードは捨て札となる。その法案がジレンマなら、「否決の場合 If Failed」効果を適用する。その後、反対派リーダーが次の首相となり、首相ダイヤルを受け取る。最後に、この新首相が、首相ダイヤル上、指されているマスを1マス右隣か左隣に動かし、その効果を適用する。

可決した場合、その法案のカードを、ゲーム盤の近く、他の可決した法案の横に(可決した法案の一覧として)置く。首相は可決法案トークンを1つ受け取る。首相ダイヤル上で指し示されている政策の結果を適用し、加えて、直ちに、可決した法案(テキスト)の効果を適用する。

 


■ IX.維持更新 Upkeep & Refresh ■

 

報賞枠にいるファミリーメンバーそれぞれにつき、その報賞枠に記された維持費を支払う。維持費を支払えない場合、そのファミリーメンバーはサプライに戻し、勝利点も戻す。(維持費を払うために他のプレイヤーの助力を請うてもよい)

その後、以下のお役所仕事を行う(最終ターンには不要)。

  • 書記官をすべて、もとの州の枠に戻す。
  • 「満たされた注文」トークンと、州のディバイダを、全てサプライに戻す。
  • 追加船をすべてサプライに戻す。
  • 消耗した士官と連隊をアクティベートする(枠の上部へ移動させる)。地方同盟は全て消耗させる(枠の下部へ移動させる)。
  • ターンマーカーを次のターンにすすめ、第一フェイズから行う。

 

 

■ 名声カードと恐喝カード ■

 

規制緩和やファームに関する文面はこの抄訳では省いているので注意。

 

◇ 恐喝カード

 

  • 1.The Prime Minister's Ear「首相の耳」(パワー2) 任意のターン、ファミリーフェイズ開始前ならいつでも使用可。任意の2つのパワーマーカーの位置を入れ替えられる。
  • 2.Company Fraud「ザ・カンパニー詐欺」歳入フェイズ開始時に使用。自分のオフィス持ち1枚につきダイス1個振る。最も高い目に等しいだけ、ザ・カンパニーの残高を減らし(ゼロまで減らせる)、減らした分だけ銀行から受け取って自家の金庫に入れる。
  • 3.Letters of Introduction「紹介状」(パワー1) ファミリーメンバーを引退させる時に使用(最終決算時にも使用可能)。他のプレイヤーが全員が持っている配偶者による割引の総額を自家に適用できる。
  • 4.Scandal on Leadenhall Street「リーデンホール通りの醜聞」(パワー2) 場札から取得時、または任意のターン、歳入フェイズ終了後ならいつでも使用可。州長官・知事・総督を除く任意のオフィス(おそらく1つ指定)を空きにさせる(引退の処理は行わせない)。
  • 5.Scandal in India「インドにおける醜聞」(パワー2) 場札から取得時、または任意のターン、歳入フェイズ終了後ならいつでも使用可。州長官・知事・総督のうち1つ任意に選び、空きにさせる(引退の処理は行わせない)。
  • 6.Hiring Preference「雇用の好み」(パワー1) 雇用処理時、自分が候補であるときに使う。雇用権者は必ず自分を選ぶ。縁故主義のルールを無視するためにこのカードを使うこともできる。
  • 7.Envoy to the Mughals「ムガールへの使節」任意のターン、インドのイベントフェイズ開始前ならいつでも使用可能。象をルール上可能な任意の位置に置き、象の尻尾が向いている地域のオープン注文のうち最も高額な注文に等しい額を銀行から受け取る。
  • 8.Mercantile Connection「商業的コネクション」(パワー1) 州(またはファーム)による貿易判定の直後に使い、元の判定に使ったダイスの半分(端数切り捨て)の個数で強制的に再判定させる。ダイス数が0になった場合は判定失敗。
  • 9.Diplomatic Connection「外交的コネクション」(パワー2) 指揮官の判定の直後に使い、元の判定に使ったダイスの半分(端数切り捨て)の個数で強制的に再判定させる。ダイス数が0になった場合は判定失敗。
  • 10.Man on the Inside「潜入者」(パワー1) 恐喝カードが使われたとき、そのカードの効果をキャンセルするために使用(最終決算時に使われた紹介状Letters of Introductionはキャンセル不可)。キャンセルされたカードは、自分の(潜入者を出したプレイヤーの)プレイエリアに置く。

 

◇ 名声カード(配偶者カード)

 

  • 11.Mr. Rochester (勝利点2、引退費2減) ファミリーアクションで書記官を入れられなくなる。(Tenure Limits Lawによる追加書記官は可)
  • 12.Esther Summerson (勝利点2、引退費1減) 恐喝カードを獲得も保持もできなくなる。今持っている伏せられた恐喝カードは捨てるか取引に出すこと。使用済の恐喝カードは全て捨て札にする。
  • 13.John Thorpe (勝利点2、引退費2減) 工房を購入も保持もできなくなる。今持っているものは捨てるか取引に出すこと。
  • 14.Violet Effingham (勝利点3、引退費1減) 造船所を購入も保持もできなくなる。今持っているものは捨てるか取引に出すこと。(盤上に出ている艤装済の船はそのままでよい)
  • 15.Joseph Sedley (勝利点2、引退費1減) 株の購入希望も行えないし保有もできなくなる。自分がチェアマンだった場合、そのファミリーメンバーをいったん役員会に移して空きにする。その後、今持っている株を全て削除するか取引に出すこと。
  • 16.Becky Sharp (パワー2) 名声カードを取る時、場札の代わりに山から1枚取ってもよい(ただし、場札が空の場合は、山からも取れない)。
  • 17.William Collins (勝利点2、引退費1減) ファミリーアクションで(見習)士官を入れられなくなる。(Army Spending Lawによる追加士官は可)
  • 18.Lady Glencora (勝利点2、引退費2減) 自家のガラスの機会マーカーを取り除く。同一アクション選択時のボーナスアクションが得られなくなる。(空きオフィスが4以上ある場合や法律による追加アクションは得られる)
  • 19.Lord Highgate (勝利点3、引退費2減) 8点および12点の報賞枠しか使えなくなる。
  • 20.Lady Newcome (勝利点3、引退費2減) 自家の事業は票を産まなくなる。自家の約束カード「Vote with my Enterprise」はゲームから取り除く(すでに誰かに対して切った状態であっても)。こちらから誰かに渡した事業も、その同じターンでは、票を産まない。

 

◇ 名声カード(事業系)

 

  • 21.Shipbuilders「造船技師」(運輸系) 運輸部長が追加船やザ・カンパニーの船を1つ購入するたび、£1を銀行から得る。
  • 22.Tax Collectors「徴税吏」(製造系) 首相の合意があれば、いま審議中の政策に、追加で窓税アイコンが1つ記されているかのように扱える。票決開始前にこの効果の適用有無を決めること。また、反対派リーダーとして否決を勝ち取った際、自分が決定する政策に、追加で窓税を適用してよい。
  • 23.Labour Newspaper「労働系新聞」 (製造系) 製造系または運輸系の政策に投票する際、(タップすると)4票を産む。
  • 24.Foundry「鋳造所」 (製造系) 誰かが工房を購入するか連隊をアーミーに加えるごとに、銀行から£1を受け取る。
  • 25.Stock Broker「株ブローカー」 (社会系) 株をもとめる際、どのマスも費用£1とみなす。他プレイヤーも、このカードの所有者の許可があれば、このカードの効果を使える。
  • 26.Social Magazine「社交雑誌」(社会系) 社会系またはザ・カンパニー系の政策に投票する際、(タップすると)4票を産む。
  • 27.Scottish Castle「スコットランドの城」 (社会系) パワー3。窓税アイコン2
  • 28-30. Rotten Borough「腐敗選挙区」【3枚ありいずれも同じ】 (社会系)タップすると3票を産む。

 


■ 法案カード ■

 

規制緩和やファームに関する文面はこの抄訳では省いているので注意。また、「規制緩和 56.DEREGULATION」カードについては、項目自体を載せていない。

 

  • 31.Calico Acts「印度綿布輸入禁止令」(運輸系、初期票1賛) 《追加アクション:ファミリーアクション実施後、工房を1つ購入可》可決したら(直ちに)、製造系事業1つ持っているごとに£2を得る。歳入フェイズ開始時に、ザ・カンパニーの残高が£7あるごとに、£1を差し引く。
  • 32.Envoy to China「中国使節法」(運輸系、初期票3否) 中国での貿易は、輸出アイコン1つにつき£5の価値になる。中国貿易監督Superintendent of Trade in Chinaオフィスを、まだ設立していないなら、設立する。
  • 33.Army Spending「軍費法」(税金系、初期票4否) 《追加アクション:ファミリーアクション実施後、(見習)士官を1人入れられる》(直ちに)各アーミーに連隊を2つずつ置く。
  • 34.Board of Control「管理委員会法」(パワー系、初期票0) ターンに1回、チェアマン以外だれも行動していない状態で、首相はオフィス持ちを(おそらく1人)取り除いて良い。取り除かれたファミリーメンバーはサプライに戻り、オフィスカードは空きオフィスに行く。
  • 35.Debt Restructure「債務繰延法」(税金系、初期票3否) 《追加アクション:ファミリーアクション実施後、1株をもとめることができる》ザ・カンパニーの債務を、左端(ゼロ)に戻すことができる。
  • 36.Inclosure Acts「囲い込み令」(ボーナス系、初期票3否) 報賞枠上の各ファミリーメンバーは、ボーナスフェイズに自家に£1をもたらす。
  • 37.Tenure Limits「任期制限法」(パワー系、初期票0)《追加アクション:書記官を入れる以外のファミリーアクションを実施後、1人書記官を入れることができる》チェアマンはロンドンシーズンの最初のステップで必ず引退する。
  • 38.Sepoy Recruitment「印度兵徴募法」(ボーナス系、初期票3否) 歳入フェイズにおいて、ザ・カンパニーは連隊の費用を払わない。ザ・カンパニーへの攻撃の際、社会不安キューブが1つあるごとに、その攻撃側のストレングスが+1される。
  • 39.Ship Subsidy「造船臨時税法」(税金系、初期票3否) 《追加アクション:ファミリーアクション実施後、造船所を1つ購入可》プレイヤー用の船を艤装する際、£2を運輸部長のオフィス金庫に支払う。
  • 40.Trade Regulations「貿易規制法」(運輸系、初期票1否) 各州長官のボーナスは、ザ・カンパニーの残高に加える。
  • 41.Zamindar Taxes「ザミーンダール税法」(株仲間系、初期票2否) 各知事のダイスプールが1増える。統治判定に失敗すると社会不安キューブは1個でなく2個増える。総督がいる場合、政務判定に成功するとボーナスに£3が追加される。政務アクションに失敗すると、各地域の社会不安キューブが1個でなく2個増える。
  • 42.Treasure Reform「財務改革」(株仲間系、初期票3否) 略奪したものはすべてザ・カンパニーの残高に加える。
  • 43.Govener General「総督法」(運輸系、初期票1賛) 貿易局長は総督になる。知事はすべて年金生活者になる。貿易局長と各知事のオフィスカードは箱に戻す。各地域内に置かれた建造途中の船はすべてサプライに戻す。
  • 44.Industry Subsidy「産業臨時税法」(税金系、初期票3否) 機会マーカーが工房に載っていない状態の場合、工房購入アクションでは£5でなく£3の支払いで購入できる。(Calico Acts 印度綿布輸入禁止令での工房購入には適用されない。なお、機会マーカーのないプレイヤーは常にこの効果を得られる)
  • 45.Writer Privileges「書記官特権法」(製造系、初期票3否) インドの注文に置かれた書記官1一人につき、プレイヤーは追加で£1を得る。Writer Graft Reform書記官汚職是正法が可決している場合、同法は廃止(捨て札)する。
  • 46.Window Tax Repeal「窓税廃止法」(社会系、初期票5否) 《追加アクション:ファミリーアクション実施後、贅沢品を購入できる》窓税の支払いは不用になる。ただし、Tax Collecter(徴税吏)事業カードを持つプレイヤーは、同カードの指示通りに、窓税アイコン一つ分の税を足すことができる(おそらく、それによる税の支払いは発生する、の意)。
  • 47.Military Oversight「軍事取締法」(株仲間系、初期票5賛)軍務の行動直後、首相は望むなら指揮官を1人選び、これを士官に降格させた後、通常の雇用のルールに沿って直ちに新規の指揮官を雇用できる(縁故主義のルールも適用される)。
  • 48.Writer Graft Reform「書記官汚職是正法」(パワー系、初期票0)書記官ボーナスはザ・カンパニーのトラックに入る。(たなぼたイベントの金は引き続き書記官の自家に入る)書記官特権法が可決したら、このカードは捨て札になる。
  • 49.Company Aids Government「ザ・カンパニーによる政府支援」(パワー系、初期票1賛) 株に掛かった勝利点が増える。つまり、+1/-1点ではなく+2/-2点になる。また、ザ・カンパニーの債務に関する毎ターンの出費が1につき£1ではなく£2になる。
  • 50.Royal Protection「王室の庇護」(社会系、初期票3否)ザ・カンパニーが緊急ローンを組まなければならなくなったら、チェアマンはこのカードを捨て札にして、このローンを拒否し、残りの出費をキャンセルできる。緊急ローンによる評価下落は避けられるが、期待を満たさないことによる評価下落は避けられない。
  • 51.DILEMMA:Public Demands Impeachment「ジレンマ:公衆による弾劾要求」(パワー系,初期票1賛) まず首相がオフィス持ちを1つ選ぶ。可決時:そのオフィス持ちをサプライに戻し、対応するオフィスカードを空きオフィスに移す。否決時:ザ・カンパニーの評価が1下がる(これによりザ・カンパニーが失敗に終わることもある)。
  • 52.DILEMMA:Old Ideas Made New!「ジレンマ:古い発想から新しいアイデアが」捨て札山から法案を1枚任意に選ぶ(ジレンマも選択可)。なお、このターンにめくったカードはまだ捨て札山に行っていない点に注意。票決後、全ての法案の捨て札と、このターンにめくった法案カード、そしてこのカードをシャッフルして、山札に加える(どう加えるかは書いていない)。捨て札山にカードがない場合、このカードは無視し、このカードは山に戻して、新しい法案カードをめくる。
  • 53.DILEMMA:RELIEF DEMANDED FOR INDIAN FAMINE!「ジレンマ:インドの飢餓に対する救済要求」(税金系、初期票1賛)可決時:この政策の結果を2回適用する。否決時:インドの混迷Turmoilイベントを、母港のある地域それぞれで起こす。加えて、ザ・カンパニー管理下の全地域で、社会不安キューブを1個載せる。
  • 54.DILEMMA:MASSES DEMAND FRANCHISE!「ジレンマ:大衆の参政権要求」(社会系、初期票1賛)可決時:腐敗選挙区Rotten Boroughsカードは1票にしかならなくな理、金で票を入れるための費用が£1ではなく£2になる。否決時:何も起きない。
  • 55.DILEMMA:WAR AGAINST FRANCE!「ジレンマ:フランスとの戦争」(税金系、初期票1賛)可決時:首相は追加船以外の船を3つ、それから士官および連隊のなかから3つ選び、選んだ船を造船所ないしサプライへ、士官や連隊はサプライに戻す。否決時:嵐ダイスを1回振って、出た目に対応する地域で外国の侵略イベントを1回行う(嵐のない目が出たら侵略は起きない)。

 

 

■ 帝国のオリジン・ストーリーを読む ■

 

帝国に関するゲームは数多い。そのほとんどが、その帝国の存在と統一性を当然視している。これによって綺麗なデザインに近づける一方、悪しき歴史にも近づくことになる。完全な形で突然湧き出てきた帝国など存在しない。その血統は、運営の流儀がそうであるのと同様に、汚いものだ。『ジョン・カンパニー』はこの複雑さを受け入れ、大英帝国のオリジン・ストーリーの小さな部分を伝えようと試みている。このゲームでプレイヤーは、上流社会で地歩を占めようとし、イギリス東インド会社をその目的のための手段として見ている、野心あふれるファミリーに扮する。ある面では、これは帝国のありふれた登場人物たちについてのゲームであり、卑しからぬ善意の人々がいかにしばしば自らの前途のため真の邪悪に手を染め得るのか、ということについてのゲームでもある。

とはいえ、ゲームができることは限られている。ゲームは我々のシンパシーを操作し、そうでなければ遠くの物事に感じられていたはずのものを間近に捉えさせることについては抜きんでている。これをおこなうべく、ゲームはしばしば、物語や理屈上の効果のため、歴史的記録を歪曲する。『ジョン・カンパニー』も例外ではない。これは本質的には歴史フィクションだ。願わくは本作が、その主題を顕にし、プレイヤーがさらに深くこれを掘り下げることを促進するものであってほしい。

ザ・カンパニーについて学ぶのであれば、すばらしい開始地点がいくつもある。最良の一巻本はいまでもジョン・ケイ John Keay『The Honourable Company』(1991) だ。一次資料に興味のある向きは、バーバラ・ハーロウBarbara Harlowとミア・カーターMia Carterの編による『Archives of Empire』の驚くべき第一巻 (『Archies of Empire, Volume I. From The East India Company to the Suez Canal』2003) に目を通すべきだ。ザ・カンパニーが与えた損害やその政策の多くの潜行性の半減期について理解したい人には、シャシ・タルールShashi Tharoorの鋭くも輝かしい『Inglorious Empire』(2018) を見てほしい。十八世紀半ばにおけるザ・カンパニーの劇的な勃興の文脈についてのより良い理解を望むなら、ウィリアム・ダルリンプル William Dalrymple『略奪の帝国 The Anarchy』(2019, 邦訳2022) をご覧いただきたい。ダルリンプルの本は美しく書かれており、ひきつけられる。

ザ・カンパニーを可能にしたファミリーについての物語をもっと探求したい人には、マーゴット・フィンMargot Finnとケイト・スミスKate Smithの編による『The East India Company at Home, 1757-1857』(2018) と、その副読用ブログを見るべきだ(どちらもオンライン上で無料)。また、いくつもの十九世紀の小説を読むことでも多くを得られる。とりわけおすすめは、ウィリアム・メイクピース・サッカレーWilliam Makepeace Thackerayの『虚栄の市 Vanity Fair』(1847-48, 邦訳1914) および『The Newcomes』(1854-55)と、チャールズ・ディケンズ Charles Dickensの『ドンビー父子 Dombey and Son』(1846-48, 邦訳2000)だ。アカデミックな図書館にアクセスできるなら、ジーン・サットン Jean Suttonによる、非常に高価だが面白い『The East India Company's Maritime Service 1746-1834』(2010) もチェックしよう。

さらに深く見ていきたいなら、いかにしてザ・カンパニーが運営され、金を生み出したかについて、その全体図がK.N.チャウデゥリ Chaudhuriの『The Trading World of Asia and the East India Company 1660-1760』(1978) に見つかるだろう。C.A.ベイリ Baylyの『Indian Society and the Making of the Birish Empire』(1998) でうまく補足できる。ゲームよりも前の時代を扱ったものだが、私としてはフィリップ・J・スターン Philip J. Sternの『The Company-State』(2011) もお勧めしたい。ザ・カンパニーの設立について記され、そのふるまいについての大きなパターンが、とりわけ英国の政治の文脈から描き出されている。この物語の後の部分については、ルーシー・サザーランドLucy Sutherlandの『The East India Company in Eighteenth-Century Politics』(1952) で見つかるだろう。

最後に、国家のアイデンティティと文化についてのより大きな疑問について探究することに興味があるなら、まずはベネディクト・アンダーソンBenedict Andersonの『想像の共同体 Imagined Communities』(1983, 邦訳1987)、エドワード・サイードEdward Saidの『文化と帝国主義 Culture and Imperialism』(1993, 邦訳1998-2001)、サリー・マクディシSaree Makdisiの『Making England Western』(2014)から始めるといいだろう。

 


■ 奥付 CREDITS ■

 

ゲームデザイン、グラフィックデザイン、リサーチ: Cole Wehrle

デベロップメント: Drew Wehrle(二版), Chas Threlkeld (初版)

クラウンのデザイン: Richard Wilkins

アート: Janek Lipinski(盤、ポートレート、アイコン、テクスチャー), Arnita Pai (ガンジファ), Amarjeet Bitke (彫刻), Corey DeVore (彫刻)

編集: Travis D. Hill

テーブルトップシミュレーターモジュール作成: Drew Wehrle

プレイテスト: Daniil Afanasev (Otto von Afusbah), Leonard Ash, Mathieu Barsacq, Adam Bell, Vincent Bertoni, Luke Bridwell, Thomas Butler, Trysten Cain, Cat, Aaron Chady, Glen Cupples, Alexander Dimic, Nahvid Etedali, Zane Fisher, Paul Forman, Don Gunnell, Reid H , Haze, Lee Hook, Christian Jensen, Matthew A.Jonassaint, Tom Kassel, Tom Kenny, Vytauta Kubilius, JC Kwok, Drew Lawson, Jason Lindner, Sergio Lopez Fernandez, Jaiden Manacsa, Christopher McKeon, Jon Mott, Brad Neuhauser, Michael Norrish, Olyball, Joshua Orkin Clark, Matthew J. H. Peronto, Alvaro Manuel Recio Perez, Alexander Ploberger, Stephen Rausch, Gareth Roberts, Arden Rogow-Bales, Matthew Rohn, Chip Roush, Andreas Rovio, Guerric Samples, John Schmidt, Ryan Schneider, Charles Simon, Matilda Simonsson, Matthew Smith, Charles Smith,Jason Stone, Cole Swingholm, Karl Sodren, Chas Threlkeld, Liam Trench, Nie Tringali, uropb, Voltaire Valdellon, Arno van de Velde, Nicholas Vetterli, Samuel Vriezen, Russell White, Richard Wilkins, Brian Williams, Don Wilson, Mark Wright, Alex Yeghiazarian.

日本語抄訳:沢田大樹

 

John Company: Second Edition, First Printing, 2022

Game Published by Wehrlegig Games LLC

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読書感想文:『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』小説版の美点と漫画版の問題点

※ネタバレに全く配慮していません。『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』小説版(なろう版第1部~第5部/商業小説版第1巻~第6巻)および漫画版の展開や結末への言及が大量にあります。

 

小説投稿サイト「小説家になろう」に『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』(永瀬さらさ、本編2017-2019)という作品があって、2022年10月にアニメ化されるらしいんですが、なろう小説のアニメ化ってコミカライズ版をベースにすることが多いじゃないですか。「小説家になろう」掲載作品って読者との準リアルタイムのコールアンドレスポンス重視みたいなところがあるらしくて、まとまったものを後から読み直すとなんだかよくわからないものになっていることがままあり、しかも何でか知らないですけど商業小説として出版される際もたいした修正がかからないものだから(これはさすがに編集者がさぼりすぎだと思うんですけども)、コミカライズで色々脚色されたり整理されたりすることで初めて普通の作品として成立する、という例を実際に見たこともあるので*1、アニメが原作ではなくコミカライズ版をベースにすること自体は、それはまあ当然そうだろう、と思います。ただですね、『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』の場合、コミカライズ版をベースにしてしまうと、ちょっと作品の品質に問題が出るような気がしてならないんですよね。

コミカライズ版『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』(原作永瀬さらさ・作画柚アンコ 2018-2019)は、ある乙女ゲームのプレイヤーだった主人公がそのゲームの悪役令嬢に転生憑依し、自分を待ち受ける破滅を回避するべく奮闘するという「悪役令嬢物」ジャンルの典型例と言ってよいだろう作品で、原作小説第1部*2をベースにしています。悪役令嬢アイリーンが第二皇子セドリックと婚約関係にあったところ、ゲームのヒロインであるリリアと恋仲になったセドリックがアイリーンに対して婚約解消を宣告する、その瞬間に主人公がアイリーンに転生憑依するところから話が始まり、色々あった後にアイリーンは第一皇子クロードと婚約、また皇位継承権を失っていたクロードがそれを取り戻して王宮に帰還することで終わりを迎えます。本作は悪役令嬢物の中でも「ヒロインが性悪」パターンの作品で、ゲームのヒロインであるリリアは主人公たる悪役令嬢アイリーンに対して大きな障害として立ちはだかり、大小諸々の嫌がらせを実施し、遂には第二皇子セドリックをそそのかしてセドリックにアイリーンを強姦させようとし、第一皇子クロードを殺そうとします*3。

以上の骨子はコミカライズ版・小説版第1部に共通ですが、大きく異なるのがリリアの設定です。小説版第1部では、ゲームのヒロインであるリリアがなぜ性悪であるのかについての説明は一切ありませんが、漫画版では中盤にさしかかったあたりで、リリアも主人公と同様に転生憑依者であることが示されます。リリアはゲーム世界の中においてもあくまでもプレイヤーとして振る舞い、ゲーム世界内の登場人物に対して人格を認めず、ゲームを攻略しようとする態度で生に臨みます。性悪というか、他の人物を自分と対等な存在だと全く思っていないわけですね。漫画ではアイリーンとリリアが対比的に描かれ、最終的には、ゲーム内存在として他のゲーム内世界の登場人物と対等に共に生きようとするアイリーンがリリアに勝利し、このゲーム世界の「主人公」となることが示されます。

それの何が悪いの、っていうか、小説版第1部は話として致命的な破綻があるじゃん、というのはもっともな疑問で、小説版第1部と漫画版とを単品で比較する限りにおいては明らかに漫画版のほうがきちんとした作品だと言えるんですが、問題はですね、小説版の正伝全5部を通して読むことではっきりと、暗示や示唆ではなく誰の目にも明らかであるような形で描写されるのは、アイリーンとリリアがそういう対比されるような存在ではなく、むしろ同質の存在だってことなんです。

小説版の(転生憑依後の*4)リリアも、「ゲーム世界の中においてもあくまでもプレイヤーとして振る舞い、ゲーム世界内の登場人物に対して人格を認めず、ゲームを攻略しようとする態度で生に臨む」点においては漫画版と同様ですが、なろう版のリリアがゲーム世界内の登場人物に対して人格を認めないのは登場人物が既プレイのゲームと同じことしか口にしない書き割り同然の存在だからであり、ゲームを攻略しようとする態度で生に臨むのは、このゲームをより良く鑑賞するため、とりわけこれまで見たことがないようなゲームの展開を引き出すためです。従って、漫画版におけるリリアの「ゲームを攻略しようとする態度で生に臨む」その態度が現世利益の追求と区別できないものでしかないのに対し、小説版の(転生憑依後の)リリアは現世利益という点ではほぼ無私と言ってよく、自らの生死にもさほど頓着しません。そしてこのリリアが最も愛する人物は当然アイリーンなのですし、

 アイリーンを好きなのかと言い出したリリアに、最初は自分も何か不安にさせてしまったのかと思った。だから何を言い出すんだリリア――そう、不安を取り除いてやろうとした。
 なのにリリアはがっかりした顔をした。
 つまらない男とでも言いたげな目でセドリックを見たあとで、そうよねと嘲笑った。
 ――女の言いなりになるだけの男は、いずれ飽きられる。
 (セドリックの独白。「小説家になろう」版第3部冒頭「ヒーローの攻略法」より引用)

このように自分が書き割りに等しい存在であることに疑問をおぼえ、そこから脱しようとする人物(それは往々にして、リリアへの反抗という形で示されます)に対しては、リリアは漏れなく祝福を与えます。

アイリーンは、小説版正伝全5部においてほぼ常に、ゲームの悪役としてラベリングされた登場人物たちに対し、かれらがゲーム世界内の現実においてどのような問題や願いを抱えているかを(プレイヤーとしての知識をもとに)考え、自らも同じゲーム世界を生きる存在として共に歩くことでかれらを救済していく存在であり続けますが、正伝の後半ではこれと平行して、ゲーム(のシリーズ続編)のヒロインとしてラベリングされた登場人物たちが自我を獲得する過程、そしてそれを祝福するリリアが描かれます。アイリーンは(亜神の力を持ちつつも)人の立場から、リリアは亜神の立場から、同じことをして回っているのだということが、第4部後半と第5部後半の二度にわたってアイリーンとリリアが共闘することによって示されます。

ところで、乙女ゲーム世界への干渉のありかたとして、読者にとって興味深いのは、アイリーンよりもリリアによる干渉のほうです。リリアによる主な干渉の対象であるヒロイン達を束縛するのは無論、乙女ゲームにおけるヒロインとしての行動規範であるわけですが、アイリーンから繰り返し「絵と声は良いがシナリオが雑」と批判されるこの乙女ゲームの世界では、その規範とは例えば男性を立てて一歩下がるような振る舞いであり、あるいは社会のために自己犠牲精神を発揮して(文字通り)死ぬことです。そのような規範を拒絶するのは、ヒロインであるという立場を拒絶することに他ならないため、

 「――嫌よ、できない!!」
 思わぬ声と、神剣が転がる音に、まばたいた。サーラだ。
 神剣を投げ捨て、首を振りながらうしろにさがるサーラに、アレスも驚いた顔をしている。
 「ど、どうしたサーラ。できないとは」
 「い、嫌よ、死ぬなんて」
 「死ぬ?」
 「そうよ! ――神剣を直したら、私、死ぬんでしょう!?」
 (乙女ゲーム第3作のヒロインであるサーラが自己犠牲を拒絶するシーン。「小説家になろう」版第4部38節より引用)

上記のようにゲームの美的な完成度を損なうものであるのかもしれず、周囲の社会やら登場人物に対して様々な迷惑を振りまくものでもあるわけですが、それだからこそ、これによって初めてヒロインは自我を獲得し、リリアの祝福を受ける資格を得るわけです。もちろんこれは、この乙女ゲームが……というかゲーム一般が……現実から無自覚に前提として引き継いでいる価値観が歪んでいて特定の属性を持つ人々(本作の場合はつまり女性ですね)へ犠牲を強いるのを当然視するものであることを告発しているものと読むべきでしょう。

小説版正伝全5部は、この構造を入れ込むために結構な無理をしているという理由もあって、そこかしこで破綻、とりわけ人間関係の連続性の破綻が起きています。前述のように転生憑依前のリリアが何であるのかという都合の悪い疑問に対してろくに回答が示されません*5し、他にもたとえば第二皇子セドリックは前述のように第1部で第一皇子クロードを殺害するためにアイリーンを強姦しようとしたにもかかわらず、第3部では平然とその第一皇子と馴れ合っています*6。しかしこれは、「小説家になろう」のような、完成度の追求という点では非常に過酷な環境の下、難度の高い(かつ、取り組む意義のある)課題を設定したがための破綻として(ある程度までは)擁護されるべきものであり、逆にこのような面倒な課題が設定される可能性を潰して完成度を取った漫画版の選択には素直にはうなづけません。

小説版においてゲームのプレイヤーがリリアに転生憑依するのは第2部の冒頭(「小説家になろう」2017年8月10日投稿)ですが、この第2部時点でのリリアは、第2部を通して描かれる事件を影で操る黒幕ですが、黒幕であることが示されるのみで、描写はほとんどありません。小説版におけるリリアの在り方が決定されるのは引用でも示した第3部冒頭(2018年4月5日投稿)で、一方で漫画版の連載開始はコンプエース誌2018年8月号なので、漫画版の企画時には単純にリリアのキャラクターが定まっていなかったという可能性も十分に考えられ、その意味で「漫画版は原作の解釈を間違えている」みたいなことを言うのはあんまりフェアではないのも確かなんですが、とはいえ、なろう版は(転生憑依後の)リリアのキャラクターに美点が集約されていると言ってもよいくらいの作品なので、やっぱり勿体ないよなあ、と思うわけです。

# っていうか、アニメ版を漫画版ベースの解釈で作っちゃったら、もしアニメが当たったときに続編作れないですよね?

*1:具体的に言うと『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった……』(原作山口悟、作画ひだかなみ、2017-)とかですね

*2:商業小説版第1巻相当。なろう連載2017年5月12日~6月18日、商業小説版2017年9月発売。なろう版正伝全5部と商業小説版第1巻~第6巻は大筋において差異はないので、以降は小説版と書いた場合はなろう版を指すことにします

*3:子細は省きますが、第二皇子セドリックが主人公を傷物にすると第一皇子クロードが激昂して魔物になるので、ヒロインのリリアは魔物になった第一皇子を殺すことができるようになるんです

*4:小説版第1部の段階では、リリアはまだ転生憑依しておらず、単なるリリアというキャラクターです

*5:このことは別種の問題も引き起こしています。リリアが亜神として行うべきことを概ね行い終えた正伝最終第5部後半の主題のひとつは、亜神ではない人としての、つまりプレイヤーではなくこの世界のキャラクターとしてのリリアはどう生きるのか、というものですが、人としてのリリアの因縁についてはそれまでに何も触れられていないため、第5部で亜神リリアが死んだ後に人として生き直すために復活すること自体は良いとしても、直接の死因と言ってよいだろう人としての因縁については、なんかあいつえらい怒ってるけど、くらいの困惑しか感想として持てなくなっています。

*6:本編とファンディスクで人間関係の差異があるのは良くあることではあるでしょうから、商業小説としてリパッケージする際に最低限そういうエクスキューズを入れてごまかすくらいはできたはずだと思いますが、そういうこともしていません

松浦嘉一「あとがき」(アリストテレス『詩学』)

アリストテレス『詩学』(松浦嘉一訳/岩波文庫1949年刊)pp.265-266.

【松浦嘉一 (1891-1967) 死亡後50年経過につき2018年1月より本国(日本)においてパブリックドメイン。】

【文字起こしに関する何らの権利も主張しませんので、ご自由にご利用ください】

 

※新字体に変換。常用+人名用の範囲に含まれない漢字等については、変換またはルビ振りをおこなった(変換したものについては編注を入れてある)。

 

■■ あとがき ■■

 本訳書は大正十三年に岩波書店から哲学古典叢書の一つとして刊行された「アリストテレス詩学」を補修したものである。当時、その訳書が出るや否や、波多野精一先生はそれに子細に目を通しながら、約一ヶ月の間、殆んど毎日、時には一日に二通も、いつも重い封書で、いろいろと教示、鞭撻《べんたつ》、賞賛の言葉を訳者に寄せられた。私は先生が学問に対して持たれる真摯と情熱とに触れて大いに感激した。私は、取敢へず、旧訳書に補正を十頁ほどつけたが、「詩学」の解釈には必読すべきものと先生から教へられたウィラモウィツの「ギリシャ悲劇序論」や、そしてまた、当時私が持つてゐなかつたが其後手に入れたベルナイスやマルゴリウスの書にも十分に目を届かせて、旧訳書を改めたいと念じながらも、他事に紛れて遂に二十数年を送つて了つた。その間、なんとなく、自分のなすべき責務を怠つてゐるやうな思ひが無いわけではなかつた。しかし、ギリシャ語だけはキープしようと「オデュセイア」の邦訳をしたりして道草を食つてゐた。けれども、ウィラモウィツとかベルナイスを落ついて精読することは、どうしても他の仕事の忙しさに妨げられて来た。しかし、終戦後漸くそれらをゆつくり見る機会を与へられ、多年の宿願の補修をなすことが出来た。新しいこの訳書に於いては、「アリストテレス詩学」に関する、私の知る限りに於いて、世界の主もなる研究書に見出される、重要な諸解釈、本文の読方の諸家の異同も主もな点を漏れなく、一々原書に触れて記録することが出来た。このやうな少々うるさい記録は、文庫版としては少々重も苦しくて荷が勝ち過ぎるとは思ふが、外国書の入らない今日、さう不必要なことでもあるまいと信じて敢てそれらを本訳書に載せた。だから、小冊ながら本書には「詩学」に関して知るべき殆んど一切の知識が盛られてゐる。言ふまでもなく私の本訳書のねらひ所は、只、正確な訳出と右のやうな記録とに存することを附記して置く。

 

 

【編注】

※旧字体→新字体の変換のほか、常用+人名用の範囲に含まれない漢字等を、以下のように変換またはルビ振りした:

・賞讃→賞賛
・洩れ→漏れ
・逍〻→少々

 

松浦嘉一「緒論」(「アリストテレス『詩学』)

アリストテレス『詩学』松浦嘉一訳/岩波文庫1949年刊、pp.5-54.

 

【松浦嘉一 (1891-1967) 死亡後50年経過につき2018年1月より本国(日本)においてパブリックドメイン。】

【文字起こしに関する何らの権利も主張しませんので、ご自由にご利用ください】

 

※文中、頁番号参照は章参照に改めた。

※新字体に変換。常用+人名用の範囲に含まれない漢字等については、変換またはルビ振りをおこなった(変換したものについては編注を入れてある)。

 

 

■■ 緒論 ■■

 

■「詩學」とその歷史に就いて

 今日吾吾が有するアリストテレスの「詩学」は此偉大な哲学者がアテーナイの東郊リュケイオンの園で当代の学徒に講義した詩学の要綱だけを書き写した彼自身の覚書、若くは、聴講生の一人が取つたノートを再現したものであると言はれてゐる。
 アリストテレスは、三大悲劇詩人の最初の人アイスキュロスの死後約七十年程、最後の人エウリピデスの死後約二十年程に、生れてゐる。それ故、彼の時代から言へば、ペリクレスが作つたアテーナイの、同時に、悲劇の黄金時代は前世紀の昔のことであつた。アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスの悲劇は、当時においては既に古典であつた。さうして、之等の三大悲劇詩人に続く程の劇作家も出なかつた。喜劇、叙事詩に就いても同じ事が言へる。アリストファネスも既に過去の人であり、ホメロスに続くやうな叙事詩はペリクレス時代にも生れなかつた。アリストテレスの「詩学」は前世紀の赫赫《かくかく》たるアテーナイの文化の鬱勃たる精力が生んだ所の、かやうな芸術品を一応整理し説明すると同時に、其等の作品中の最善最高のものから或る一般的法則を抽象して、これを詩(広い意味に於ける)のテクニークとして若い詩人達に示さうとしたものである。
 歴史的に言へば、アリストテレスの「詩学」は、彼の師プラトンの芸術否定論から生れたものである。プラトンは、彼の哲学の主知的立場から悲劇喜劇を攻撃して、其等は吾吾の魂の中に於いて気高き理性を亡ぼし、劣等なる情緒を旺盛ならしめるものである。すべての芸術は模倣の模倣であつて、実在から三段も遠いものであると言つた。プラトンは戯曲のみならず、ホメロスの詩までも同様の理由から排斥した。プラトンの理想国家に許される詩は市民の子弟教育の資材となるべき限りの詩、即ち神神や英雄に対する讃美の詩歌のみであつた。アリストテレスの「詩学」は、言はば、プラトンの此芸術否定論を反駁したもので、彼の師が何等価値のないものとして排斥した詩を、教育道徳の方便とするやうな従属的地位から独立せしめ、詩それ自身の存在の理由を見付けようとしたものである。さうして、詩はアリストテレスのお陰で、初めて、独立の世界を与えられた。
 アリストテレスの死するや「詩学」は彼の群書の下積みに埋れたまま、幾世紀も世人から忘れられて了つたやうである。西暦三世紀のディオゲネス・ラエルティオスが其第五巻二十一節で「詩学」が二巻から出来てゐることを明示してゐる以外に、吾吾は雅典《アテーナイ》、歴山府《アレキサンドリア》、羅馬《ローマ》の三都時代を通じて、本書に触れた人の名を殆んど聞かない。リチャード・シュートの遺著「アリストートル著書史」に拠ればキケロ(西暦前一〇六~四三)は、就中「修辞学」を二十度も引用してゐるが「詩学」には一言も触れてゐない。プルターク(西暦約四六~一二〇)もアリストテレスの他の多くの書に言及してゐるが、「詩学」には、全然、直接に触れてゐない。古代の人で「詩学」の注釈を書いたといふやうな痕跡は絶無である。
 アリストテレスと共に古代の四大詩学者とも言ふべきホラティウスやプルタークやロンギヌスも詩学の濫觴《らんしょう》たる本書そのものを知らなかつたやうである。ホラティウス(西暦前六五~八)は所謂彼の詩論「アルス・ポエティカ」の処処(例へば其一一九行、一九一行、一九三行、三三三行等参照)でアリストテレスの詩論の思想を顕してゐるが、其等は単に「詩学」の間接の反映であることは、彼自身の言葉からも判断される。彼は「アルス・ポエティカ」二七五行以下に於いて悲劇の起源に対する彼の無知を曝露してゐるが、それは彼が「詩学」を読んでゐないことを暗示すると言へよう。プルタークに関しては、彼自身の詩学とも言ふべき「読詩人論」(De Audiendis Poetis iii)に於いて、吾吾が蜥蜴《とかげ》の絵を悦ぶのは、それが美しいためでなく、模倣されたものだからであると、アリストテレスの「詩学」四章の反映とも認むべきものはあるが「詩学」そのものに直接に触れてゐるといふことは絶無であると言はれる。最後に、ロンギヌスの「崇高論(ペリヒュプソウス)」(西暦一世紀とも或は四世紀とも言はれる)に至つては、其三十二節にアリストテレスに言及されてゐるが、それは「修辞学」に関してゐる。
 「修辞学」がアリストテレスの死後多くの人から読まれ、其姉妹篇たる「詩学」がまるで忘却された理由は、両書の内容に存するやうに思はれる。「修辞学」は弁論術を説き、何時の時代にも有用な学問であるに反し「詩学」は要するに戯曲と叙事詩のテクニークを説いたもので、特殊な時代にのみ顧みられる学問である。
 普通伝へられる所に拠れば、アリストテレス文庫は初めテオフラスツス、次にネレウスの手に相続され、それからトレミイ・フィラデルフスに買上げられてアレキサンダア市に運ばれた。其後羅馬帝国が基督教へと改宗するや、其文庫は羅馬官憲に依つて検閲され、基督教に反する性質の著書は禁圧されたが、尚秘かに読まれつづけ、やがて回教徒が埃及《エジプト》を占領するに至るや、アリストテレスの研究はシリアのアンティオクに移つた。「詩学」が基督教徒の手に依り受難したことも十分想像できる。殊に現存の「詩学」が原本の半分程に過ぎないことは、その後半で説かれた筈の喜劇論が、基督教徒の道徳心に障って、全部破棄されたが為であると推定される。
 西暦三三〇年|羅馬《ローマ》帝国の首都が羅馬《ローマ》から君府《コンスタンチノープル》に遷つた時、希臘《ギリシャ》文学も共に付随して行き、其処で十五世紀の初期まで、所謂其ビザンチウム時代を作つた。吾吾が有する最古の「詩学」の希臘《ギリシャ》テクストParisinus MS. 1741、通常Acと略称されてゐるものは実にこの時代(西暦一千年頃)に出来たものである。さうして、只、その頃に出来たといふ以外に、中世紀の希臘《ギリシャ》人に「詩学」に関する何等の文献あることを聞かない。然しながら、不思議にも「詩学」は東方の国で読者を見出した。「詩学」は八世紀にシリア語に訳され、十世紀と十一世紀の間にAbu Bishar(またはBashar)Mattaに依つて其シリア訳から亜刺比亜《アラビア》語に重訳された。間もなく亜刺比亜《アラビア》の哲学者アヴェロイーズ(一一二六~九八年)が此|亜刺比亜《アラビア》訳に拠つて「詩学」の註釈を書き、其れが希伯来《ヘブライ》語に訳され、之れが再び十三世紀に、ヘレマヌス・アレマヌスに依り「アリストテレスの詩学」の名で羅典《ラテン》訳された。此羅典語の抄訳のみを通して、アリストテレスの「詩学」は僅かに中世に知られるやうになつた。然し、スピンガアン(「文芸復興期の文芸批評史」一六頁)に拠れば、それは此時代の文芸批評界に影響を与へた何等の痕跡もなく「詩学」はダンテにもボカーチヨにも、また殆んどペトラークにも知られてゐなかつた。
 近世に於ける「詩学」の歴史派十五世紀の後半に始まる。此時|君府《コンスタンチノープル》が土耳其《トルコ》人から脅かされたが為に、其処の多くの希臘《ギリシャ》学者が数多の古典文学を携へて伊太利《イタリー》へ逃避したからである。かくして、初めて、伊太利の学者に「詩学」の希臘《ギリシャ》語原文そのものが知られた。一四九八年、希臘《ギリシャ》語からの最初の羅典訳がヂョルヂォ・ヴァラに依りヴェニスに出版され、一五〇八年「詩学」亜原文の初版がアルデュス版の「希臘《ギリシャ》修辞学者」の第一巻として世に出た。然し不幸にして、それは杜撰極まる編纂で、テクストは悪化したと言はれて居る。一五三六年パチはこの希臘《ギリシャ》テクストに羅典訳を添へて出した。一五四八年、ロボルテリは羅典訳と世界最初の註釈とを添へて出した。翌年センニは初めて伊太利《イタリー》訳を出した。続いてマヂ、ヴェトーリ、カステルヴェトロ、及びピコロミニ達の訳註が出た。
 かように幾世紀も隠滅の底に埋れてゐたアリストテレスの「詩学」はヴェニスやフローレンスから矢継早やに出版されるに至つたが、これが直ちに当時|伊太利《イタリー》を中心として起つたルネサンスの文芸評論の根底を形作る運命を持つた。この方面の知識はスピンガアン著「文芸復興期の文芸批評史」から十二分に得られる。
 文芸復興期の伊太利《イタリー》に於ける「詩学」研究はベニに終つたが、其余風を承けたものにネザーランドのライデンから一五九〇年仏人カゾォボンに依り、一六一一年|和蘭《オランダ》人ヘンシュウスに依り、編纂された二つの「詩学」がある。下つて、一六九二年|巴里《パリ》からダシェの仏訳及び註釈と、一七七一年バトゥの「四つの詩学」Les Quartes Poétiques d'Aristote, d Horace, de Vida, de Despréaux)とが出た。
 独逸に於いては一七五五年クルチュスに依り「詩学」の最初の独訳が出た。グーデマン(「アリストテレスの詩学」序文一五頁)に拠ればこの独訳は杜撰で、解釈全然ダシェに因つたものであるが、ゲーテやシルレルが此独訳を通してアリストテレスの「詩学」を知つたといふ歴史的興味あるものである。レッシングが一七六七~八年に亘つて、彼の「ハムブルグの戯曲論」に於いて「詩学」の研究を発表してゐることは人も知る所である。
 英国に於いては、一六二三年|倫敦《ロンドン》からゴウルストンの羅典訳が、一七八〇年|牛津《オックスフォード》からウィンスタンリイの註釈が、一七八九年倫敦からツウァイニングの英訳と弘汎な註釈とが、一七九四年|牛津《オックスフォード》からティリットの有名な羅典訳と羅典語註釈とが出た。
 以上十九世紀初期までの「詩学」の諸版註釈は、近世に於ける該書研究のアルデュス版時代のものと仮に名付けられ得るであろう。即ち、其時代までの「詩学」研究社の何れもが、一五〇八年に出たアルデュス版を、さういふ名と、それが世界に於ける「詩学」原文の初版であるといふ威光とで、其最も信憑《しんぴょう》すべき原文であると誤信し、悉く、此れに基因し、単に意義不明の個処に対し、各自思ひ思ひの些細な改訂を加へたのみで、三百有余年に亘って、編纂者から編纂者へ、学者から学者へ伝へたからである(バイウォータア著「アリストートルの詩学」序文二五頁)。
 近世に於ける「詩学」研究の後期とも言ふべきは独逸のリッタア、スペンゲル、並びにファーレン達のアルデュス版の不良性摘発に始まる。かくして、初めてAc稿本が「詩学」の唯一の典拠たることが世界に認められ今日に及んで来てゐる。其故、近世後期に於ける「詩学」研究は独逸に始まり、さうして、独逸に於いて最も優勢であつた。就中、ベルナイス(Grundzuge der verlorenen Abhandlung der Aristoteles über Wirkung der Tragödie; Breslau, 1857)が悲劇のカタルシス作用に対する新解釈を詳説して、初めて学界を首肯せしめたことは特筆大書すべき点である。
 独逸の「詩学」研究に接踵《せっしょう》して起り、而も円熟老成したる点にて前人の塁を摩すの定評あるものが、一八七三~一九〇九年の長きに亘るバイウォータアの「詩学」研究である。バイウォータアはファーレンの余風を承けて、Acテクストが「詩学」最古の稿本たることを論理明快に唱道し「詩学」中の字句述語の殆んど悉くに対し、アリストテレス若くはその他の作家から、其等に平行するものを引用例示して、初めて、其等の真意義を捉へるといふ、最も堅実な法式に拠つてゐる。然して其等の例証を見るに、あるものは、従来、必ずしも、正当に解釈されてゐなかつた字句の意義を確定し、あるものは、伝統的読方を確証し、従来|擅《ほしいまま》に其れに向つて投げられてゐた危惧を一掃してゐる。
 「詩学」のテクスト研究と解釈に対する世界の主なる貢献は以上の如きものであるが、尚、私はここに、一八八七年英人マルゴリウスが、世界に於いて初めて「詩学」の亜刺比亜《アラビア》訳を世に出したといふ一事を特筆しなければならぬ(Analecta Orientalia ad Poeticam Aristoteleam)。マルゴリウスは、其処で此|亜刺比亜《アラビア》訳の処処を断片的に羅典語訳して「詩学」のテクスト研究に此東洋語の訳書を利用する方法を示した。其れ以来、此|亜刺比亜《アラビア》訳、これまで「詩学」学者がやつてきた所の、意味不明の字句に対する創造的修正のあるものを確証したりして「詩学」研究に重大な役目をするやうになつた。其後マルゴリウスは一九一一年、亜刺比亜《アラビア》訳を全部羅典訳し、それと並べて希臘《ギリシャ》語テクストの一つの改訂版を発表した。尚、彼のこの書(The Poetics of Aristotle)は、「詩学」をアリストテレス学に精通暗記したる者のみに理解できる一つの秘伝書と見る観点から取扱つて、多くの興味ある註釈と示唆とに富むことを附記して置く。
 世界に於ける「詩学」研究の大部分はテクスト研究と解釈とに集中されてきたが、近世、独逸で「詩学」に説かれた持論を骨組とし、これをアリストテレスの他の諸篇に散見する此方面に関する彼の言説で肉付け、さうして、此哲学者の頭に存在してゐた芸術論、否な芸術学を組立てて見ようとする試みが起つた。「詩学」そのものは数多の学者の努力で、殆んど、完全に釈明されたが、単に其所に顕はされた一連の思想の説明のみでは、アリストテレスの所謂芸術学を組織する一団の思想を窺ふことは出来ない。そこで、彼自身の多くの諸篇から材を拾ひ集めて、彼の当然考えてゐた芸術学を築き上げようとするのである。この試みをなしたものが、タイヒミュラアの「アリストテレス研究」(Aristotelische Forschungen, 1869)ラインケンの「芸術上に於けるアリストテレス」(Aristoteles über Kunst, 1870)デゥリングの「アリストテレスの芸術学」(Die Kunstlehre des Aristoteles, 1870)ベルナイスの「アリストテレスの戯曲論に関する二論文」(Zwei Abhandlungen über die Aristotelische Theorie des Drama, 1880)である。一八九四年倫敦から出たブチァの「アリストートルの詩論」(Aristotle's Theories of Poetry and Fine Art)は此部類に属すべきものである。


■異本に就いて

 Acと前に述べた所の「詩学」の亜剌比亜《アラビア》訳と今一種の稿本で数多あるルネサンス稿本との価値上の比較問題に関してはバイウォータア「アリストートルの詩学」序文二七~四七頁に亘って明細に論術されてゐる。
 然し、この問題に対するバイウォータアの立場を明かにする為には、先づ、彼に反対の立場をとつてゐる人、例えばマルゴリウスの立場をはつきり述べる必要があらう。亜剌比亜《アラビア》学者でシリア語までにも精通した彼は、「詩学」の亜剌比亜《アラビア》訳が信頼に足るものであることを明かにする為に、彼に知られた二十三個の現存「詩学」稿本中、その十一個を原稿本で、他の十一個を写真版で調べ亜剌比亜《アラビア》訳と比較研究した。かくして彼に依つて校訂されたギリシャ語テクストと、それに対照して掲げられた亜剌比亜《アラビア》稿本の訳文とは、この著者の最善の信念に拠れば、「詩学」の東西両洋の伝統の全部を洩れなく盛つたものであると彼の序文に記されてゐる。事実、マルゴリウスが初めて世界に紹介した亜剌比亜《アラビア》訳は、処処に優れた読方を持つて居、二十世紀の「詩学」研究に大きな影響を与へた。英国ではブチァに大きな影響を与へ、独逸《ドイツ》のグーデマンやステッヒにも明かにその影響が認められる。この亜剌比亜《アラビア》訳が如何に優れた読方を持つかを読者に示す為に私は只一つ、二つの例証だけを此処に挙げたい。例へば「詩学」Ac稿本第一章一四四七a二九節で、十九世紀時代にユーバアウェブが“epopoia”(叙事詩)を削除し、ベルナイスが“anōnumos”(無名なる)を挿入した修正の正しいことが、十年後乃至は二十年後になつてマルゴリウスの前述の著Analecta Orientalia ad Poeticam Aristoteleam四七頁に於いて、亜剌比亜《アラビア》訳の読方に依つて確証されたのである。従つてバイウォータアもそれらの修正を採用してゐる。
 マルゴリウスは、また、Acをギリシャ稿本中最古のものであることを認めるがルネサンス稿本の或るものは必ずしもAcをそれらの原稿本としてゐないと主張する。就中、彼はAcに次いで最古の十四世紀稿本「リッカーディアヌス四六」がAcから独立した別箇の稿本であることを亜剌比亜《アラビア》訳に拠つて証明できることを主張する。即ち「詩学」のギリシャ稿本中、この「リッカーディアヌス四六」だけが最初の原稿本のある一行を保存し、Acをも含めて他のあらゆるギリシャ稿本は、それを脱落させてゐることを指摘してゐる。即ち「詩学」十六章一四五五a一四行に於いて、下の〔 〕の間に在る文句は「リッカーディアヌス四六」だけに見出されると言ふ。to men gar to toxon 〔enteinen allon de mēdena, pepoiemenon hupo tou poietou kai hupothesis, kai eige to toxon〕 ephē enteinein ho oukh heōrakoi, etc.(この弓を張ることが他の何人にも能はぬといふことは、詩人に依り仮定され、一の仮設とされてゐるのに、しかも彼が未だ見たことのない弓を張ると言つた、云々)。所が、亜剌比亜《アラビア》訳の此節にはこの〔 〕内の文句に近似の言葉が見出され、只その最後が「彼が未だ見たことのない弓を張る云々」ではなくして、「彼の未だ見たことのない弓を再認し能ふと言ふならば誤れる推論である」となつてゐる。それ故、マルゴリウスの「詩学」は「リッカーディアヌス四六」稿本の前期の引用文中の第二のenteinein(張る)を誤訳と認め、Ac稿本の同処に見出されるgnōsesthai(知る)に修正し、結局この節を「オデュセイア」十九巻五八六行にかけて解釈して次のやうに意訳してゐる。「オデュセウス以外の何人もこの弓を張れないと、ホメロスに依つて仮定されてゐるが、ペーネロペイアはこの乞食が未だ見たことのない弓を、オデュセウスは再認しようと考へる。発見が弓を張ることでなされなければならなかつたのに、弓を知つている。といふことでなされるのは誤れる推論である」。誠に無味乾燥な、且つ、全く失はれた一の物語の中に出る変装したオデュセウスの露見を問題にして述べられてゐる為に、意味も明確でない言葉を私が敢て読者に示したのは、数多在るギリシャ稿本中「リッカーディアヌス四六」だけに見出される一行の言葉が、亜剌比亜《アラビア》稿本に依つて確認され得るといふ事実をはつきりさせたい為である。しかも、他のギリシャ稿本がその一行を脱落させてゐると考へるならば、マルゴリウスも強調して言ふ如く、昔の写字生がしばしばやつた手近かに二度出る同語の間に挟まれた文句の見落しで、極めてありさうな脱落である事実に注意しなければならない。
 次にバイウォータアの「詩学」の諸異本に就いての見解の大要は下の如くである。
 亜剌比亜《アラビア》訳が、処処にてAcよりも優れた読方をし居、Acに顕はれたる筆耕上の大なる誤謬を訂正してゐるけれども、尚Acは「詩学」の原文として第一位を要求する。其一理由は、Ac稿本は、元来「修辞学」及び後期アリストテレス派の修辞学上の論文をも含んだ一巻の一部分であるが、之等の「詩学」以外の稿本がすべて優れ、各自第一位の典拠たる性質を備へてゐることである。第二の理由は、Acは五世紀四世紀、もしくは其れよりも古い書体の稿本に溯る誤字を持ち、また、処処に古代の字綴りの痕跡を止めてゐるなどの点である。
 マルゴリウスが初めて世に出した亜剌比亜《アラビア》本は、八世紀に、或る一つの希臘《ギリシャ》稿本からシリア語に訳されたのを、十一世紀に亜剌比亜《アラビア》語に重訳されたものである。それ故、吾吾は此|亜剌比亜《アラビア》文字の裏面を眺めて、Ac稿本より、少なくとも、三百年だけ古い一つの希臘《ギリシャ》稿本(通常Σと記号される)を編み出さとするのである。然してシリア訳は、今日、只、僅かな断片――マルゴリウスに拠れば只一頁だけ――以外に現存しない。従つて、吾吾は、亜剌比亜《アラビア》本から先づシリア文字を推定し、更に、それから希臘《ギリシャ》テクストの姿を見極めようとするのである。ここに吾吾が注意すべきは「詩学」の如き性質の書が東洋語に訳される場合、正確は到底望み難いことである。吾吾は「詩学」が説く悲劇なぞに全然門外漢たる東洋人が誤謬なく之れを訳したとは信ずることは出来ない。且つまた、亜剌比亜《アラビア》の訳者がシリア本を誤訳しないとも言へない。尚、今日現存するただ一個の亜剌比亜《アラビア》本のテクストそのものが、誤写その他で大部分痛んでゐることも推測され得る。それ故、吾吾は、単に、シリア本の原本たる希臘《ギリシャ》稿本がAcよりも三百年も古いといふ理由のみにて、其れが、全体を通じて、Acよりも優れた典拠であるとは言へない。吾吾は、只、其部分部分の価値のみを取らなければならない。今の所、亜剌比亜《アラビア》訳の価値は、ルネサンス時代、もしくは、近世の諸学者の頭脳から出た、テクストの字句上の想像的修正のあるものを確証するやうなところがあるといふ点に存する。
 今一種類現存する「詩学」の稿本はルネサンス稿本でAcに非ざるすべての希臘《ギリシャ》稿本がこれである。通常Apographa(略してapogr.)と称せられ、スペンゲルやファーレンに依り、結局Acの写本であると呼ばれたものである。然しながら、之等のルネサンス稿本の処処に点在する、Acよりも優れたる読方は、一部の学者をして、Acと全然別な、さうしてAcの有する誤謬より脱した、或る希臘《ギリシャ》稿本で、今は世に無きものが十五世紀まで残存したと主張せしめた。さうして、一八八七年|亜剌比亜《アラビア》本と其のある部分の羅典《ラテン》訳とが世に出、それがルネサンス稿本の有する優れた読方を肯定するや、この主張は益々権威を加へた。然しながら、Acより独立したある古い稿本が十五世紀に残存したと証拠立てようとする之等の点は、其事実を反証する諸点に比較するならば取るに足らないものである。
 数多あるルネサンス稿本に就いて、先づ、吾吾の眼に迫る要点は、之等のテクストが各自に違つてゐる点である。ある稿本は、Acより、只一歩のみ逸れてゐるに反し、他の稿本はAcから著しく変化してゐる。ルネサンス稿本の中、ウルビナス四七並びにパリシヌス二〇四〇はAcとの差異の軽微な部類を代表するものと言へよう。前者に於いては、吾吾はAcに対する誠に単純なる、而も必然的な修正を相当に発見する。同時に之等の稿本はAcの有する誤謬と誤写とをそのまま継承してゐる。かやうな事実が因つて起る源は只一つである。即ち、彼等はAcそのもの、乃至は、Acの写本を写したものでなければならない。後者の稿本の基本が前者の系統のものであつたことは明白である。何とならば、吾吾は両者の間に、省略その他Acと違ふ読方の点に、可也、一致を発見するからである。尤も両者の間に相違が無いではない。パリシヌス二〇三八とアルデュス版はテクストの伝統を全然破壊してゐる。筆耕者は勝手極まる省略、増補、悪化を行ひ、Acの難解の個処を読易くしてゐるのである。之等の稿本の有する多数の修正中、吾吾が採用し得るものは甚だ僅少である。単に、三、四の正しい修正を有するといふ事実は決して、修正者が之等の修正を、常時残存してゐた或る稿本中に発見したといふ理由にはならない。それに、当時の写字筆耕者は一般に立派な学者であり、同時に、機に臨み鮮やかな工夫の出来る人達であつたことに思ひ至るならば、彼等の多数の修正中の三、四が的中したことは、左程、怪しむに足らないことである。
 以上に挙げた之等代表的稿本から見たルネサンス稿本の諸相は、之等の稿本が持つ優れたる読方すべてが、筆耕者の想像憶説であつたことを明示してゐる。さうして、数多のルネサンス稿本は、結局、何れもAcを基本としたものと認められる。所が、一八八七年、マルゴリウスに依り亜剌比亜《アラビア》訳の有する読方が発表され、其れがルネサンス稿本の有する優れた読方のあるものを確証するや、この結論に対する疑問がとみに台頭した。然し、優れた憶説が、後に新しく発見された文献に依つて確証される例は珍らしくない。「詩学」に於いてさへも、亜剌比亜《アラビア》訳はファーレンの修正、或は遠くマヂ、ヴェトーリ、ヘンシュウスその他の修正のあるものを確証している。さうして、またルネサンス稿本の有する優れた修正も、細密に調べる時には、それほど天啓的な修正ではない。修正者に批判的創意と、これを自由に発揮する勇気と、さうして、古典文学に対する相当の造詣があるならば、左程困難な修正ではない。最後に指摘すべきは、彼等の優れた読方が一本に纏つて見出されるのでなく、諸種の稿本に散見される点である。もしも、其等の優れた読方が、ある古代の、さうして、優れた一つの稿本に存在してゐたのであるなら、何故に、其等の優れた読方は、かやうに、其のあるものは或る稿本に、他のものは他の稿本にと散在的に保有されるに至つたか解釈に苦しむ所であると。


■諸家の読方の比較

 「詩学」テクストに対する学界の大勢は、Ac*を他のすべての稿本の基本であるとするのであるが、今尚ルネサンス稿本並びにアラビア訳に心を惹かれる人もあるやうである。それ故、Acを他のすべてのギリシャ稿本の基本であると信ずるバイウォータアのテクストと、ルネサンス稿本並びにアラビア訳を、可也信頼するマルゴリウス並びにブチァのテクストとを比較して見る時は、「詩学」稿本に対する世の之等の二種の見解を比較し得られよう。さうして、また、両氏の各テクストの下に掲げられた異読表は吾吾をして、「詩学」テクストに対する従来の諸学者の見解のほぼ全般を一瞥せしめる。それ故、訳者は両氏の異読表に拠つて、先づ、両氏のテクストを比較し次に、之等をマルゴリウス、ティリット、またはステッヒ、グーデマンなどの独訳と比較して見た。下に掲げられた異読表は、かやうな比較の結果発見された「詩学」本文の読方並びに解釈上の相違の中、差異の顕著なるもののみを、章を追うて、列挙したものである。異読の各には、先づバイウォータアの原文に於ける、次に本書の和訳に於ける、其場処を冠した。また、訳者は引用せるギリシャ原文を悉く羅馬《ローマ》字に書換へた(ユィプシーロンをすべてuで現はし、iota subscriptumを横に表はして)。尚、下の異読表には、従来の慣例に倣つて左の略語略符を用ひた。
* Ac:十一世紀に出来た稿本で、他のすべての稿本の基本と認められてゐるもの。
  agogr.:Ac以外の稿本の一つ若くは一つ以上。
  Arad.:「詩学」の亜剌比亜《アラビア》訳。
  Σ:亜剌比亜《アラビア》訳を通して想像し得た、Acよりも遥かに古く、今は世に無き稿本。
  Ald.:一五〇八年のアルダイン版。
  〔 〕:稿本中の字句で、筆耕者の不注意な、若くは不必要な増字並びに重複語と見做され、削除された部分を画する符号。
  〈〉:アリストテレスは、実は、かう言つたのであらうとの想像的補挿の字句を画する符号。
  **:字句の剥脱したる、若くは、剥脱したものと想像される個処を示す符号。
  †:悪化した字句で、未だ、満足なる復旧を見ない部分を示す符号。

【編注:各章の比較は各章のエントリの下に移動した】

 

■本書の和訳とその解説註釈とに就いて

 本書の和訳は、全然、一九〇九年、牛津《オックスフォード》版バイウォータア著「アリストートルの詩学」のテクストと、其練達したる英訳並びに註釈とに其因したものである。訳者は、先づ其テクストを能ふ限り精査し、次に其英訳に向ひ、さうして、これにどこまでも、因りながら尚、措辞に於いて、出来るだけ希臘《ギリシャ》語の持味を出すことに努力した。和訳の此処彼処に出る〔 〕を附した割註は原文に無い字句で、而も読んで分る文章として必要と訳者が認めた補挿句である。之等の補挿句を容れ、また、バイウォータアの英訳に於いて、希臘《ギリシャ》語のままに出てゐる引用句などを和訳するに就いて、一九一三年頃|亜米利加《アメリカ》で出たクーパアの「詩学」敷衍《ふえん》訳が参考になつた。
 Acが現存の他のすべての稿本の基本たることを信ずるバイウォータアの「詩学」の特色は、従来、他の多くの「詩学」学者がAcの難解なる個処に出会う毎に、無造作に直ちに、或はルネサンス稿本に向ひ、或は亜剌比亜《アラビア》訳に向ひ、其等の有する読方を採用したに反し、彼は明正なる考察の下に、従来の修正の非を唱へ、Acにあるままを採用し、而も見事に解釈し去つた点に存する。
 訳者は、バイウォータア及びブチァのテクストの下に掲げられた異読表の示すところに拠つて、ティリット、ファーレン、リッタア、ズゼミール、マルゴリウスその他の「詩学」学者の別様の読方に直接に当つて見、さうしてまた両氏並びにマルゴリウス、ステッヒ、グーデマンなどのテクスト並びに英、独訳を比較して見た。この可也|煩瑣《はんさ》な仕事が訳者に齎《もたら》した果実は、本書の和訳が一層正確になつたことと、今一つ、さうしてそれは最も重要なことであるがブチァのテクストを通して「詩学」稿本に対し、バイウォータアと丁度正反対の見解を有する「詩学」修正者の読方をほぼ窺ひ知つた事である。ブチァはマルゴリウスと同じく、Acが他の稿本よりも優れてゐるとは信ずるが、其れが他のすべての稿本の基本であることを信じない。其理由は、結局、前述の、ルネサンス稿本の優れた読方のあるものは、単に筆耕者の修正としては、あまりに優れたものであるといふ点に帰する。両者を比較すると、バイウォータアがAcのままを採用してゐる個処で、ブチァがルネサンス稿本を採用してゐる例は十を下らない。またブチァは、亜剌比亜《アラビア》訳を非常に信頼してゐる点に於いて、バイウォータアと際立つた対照をしてゐる。バイウォータアがAcのままを採用してゐる個処で、ブチァが亜剌比亜《アラビア》訳を採用してゐる例は五を下らない。
 本書の註釈は、主として、バイウォータアの示唆に依つて出来たものであるが、尚これを補ふに、前紀のマルゴリウス著「アリストートルの詩学」、バトゥ著「四つの詩学」、ツウァイニングの美しく、さうして、珍らしい挿話的註釈、並びに一八八七年|独逸《ドイツ》に出たステッヒ著「アリストテレスの詩学」註釈等の採録を以てした。また必要に応じて、註釈の部に於いて、各章の冒頭に冠した解説はバイウォータア同上の書、ブチァ著「アリストートルの詩論」四版並びに、深田康算博士著「芸文」掲載「アリストテレスの芸術論」、殊にウィラモウィツ著「ギリシャ悲劇序論」に負ふ所多大であつた。ウィラモウィツの著は「詩学」、殊にアリストテレスのトラゴーディアの定義に対する、今日最も権威ある解説並びに批判と考へられるから、本訳書の第六章に於いて、彼の所説の概要を紹介しておいた。
 本書の解説註釈に引説したプラトン対話編はジァウェットの英訳に拠つた。アリストテレスの「政治学」はジァウェットの英訳並びに、ニューマンの註釈に、「倫理学」はチェイズ及びギリスなどの英訳並びにスチュウァトの簡訳と註釈とに、「修辞学」はジェップの英訳並びにコープの註釈に拠つた。註釈中、希臘《ギリシャ》演劇に関してはヘイグ著「希臘《ギリシャ》悲劇」並びに同人著「希臘劇場《アテツクシアタア》」(三版)並びにモールトン著「古代古典劇」二版などに拠つた。また、希臘《ギリシャ》悲劇の梗概に関しては、アイスキュロスはスウォニクの散文訳(ボーンス叢書)に、ソフォクレスはストーの英訳(ハイネマン社)コウルリッヂの散文訳(ボーンス叢書)などに、エウリピデスはウェイの英訳(ハイネマン社)に拠つた。最後に、ホメロスに関しては、主として「イリアス」はダービイ卿の英訳(エブリイマンス叢書)に「オデュセイア」はマリの散文訳(ハイネマン社)に拠つた。

 

 

【編注】

※旧字体→新字体の変換のほか、常用+人名用の範囲に含まれない漢字等を、以下のように変換またはルビ振りした。その他、知名についても適宜ルビ振りをおこなっている:
・堙滅→隠滅
・危懼→危惧
・玆に→ここに
・屡〻→しばしば
・益〻→益々