古代ローマの新しいゲーム Neue Spiele im alten Rom / 総督 Prokonsul

©Reiner Knizia, 2002
This is an excerpt from "Neue Spiele im alten Rom - Japanese Edition (ISBN4-9901416-0-1)" published by us (Late Toccobushi Game Club / SAWADA Taiju) under the license of Dr. Reiner Knizia.

3-5人用/45分

共和制の初期から、ローマ人は隣人の扱いに非常に長けていることを証明してきました。同盟諸都市がローマの市民権を提供され、すぐに戦敗国から忠実なる属国へと変わっていったのです。征服した土地が広がると共に、総督の指導下にローマ属州が創られました。高官がローマの職務から属州における総督管理下の職務へと転任させられたのです。拡大する一方のローマの運営は、かつてないほどに複雑なものになっていきました。

「総督」は、この本の中では最大級のゲームです。ルールは相当に複雑で、時間も比較的長くかかります。交渉の機会が多いため、プレイヤー個々の貢献によってゲームが円滑に解決するのです。

各プレイヤーはそれぞれ貴族家系に扮し、最も豊かな属州における総督の地位を得ようとします。ゲーム盤は共和政ローマ初期の属州を示しています。各属州の人事において、各プレイヤーはカードを用い、家系の人間の持つ影響力を行使します。総督になるためには、まず候補者として推薦され、それから属州の職務に指名されなければいけません。巧みな交渉が求められます!

用具

ゲーム盤に加えて、プレイヤーはそれぞれ一色、1〜9と12のカードを受け取ります。また、それぞれのプレイヤーにつき、カードと同色のポーン一つとカウンター五つが必要になります。最後に、黒のポーンひとつとチップがいくらか要ります。

準備

ゲーム盤をプレイヤーの間に広げます。ここにはローマの初期の属州が示されています。全ての属州には数字が書かれており、これは総督の職務者にとっての、属州の価値を示しています。

一人のプレイヤーが全プレイヤーのポーンを自分の手の中に入れ、ポーンを混ぜてから、一度に一つずつ、手の中を見ずに取り出します。このポーンはゲーム盤上の五つのマスに、引いた順で左から右へと置いていきます。プレイヤーが五人未満だった場合、残ったマスは空いたままにしておきます。このポーンの並び順が、ゲーム中に起こる同点時の解決手段になります。

それぞれのプレイヤーは自分のカウンターを、全員に見えるようにして自分の前に置き、自分の色のカード十枚を手札とします。各プレイヤーは初期支給額として、合計額が20になるようにチップを受け取ります。このチップはゲーム中は隠しておきます。残ったチップは金庫として置いておきます。これでゲームを始められます。

ゲームの流れ

ゲームはそれぞれ独立した複数のラウンドによって行われます。各ラウンドの開始時に、黒のポーンを七属州のうちのどこかに置きます。ラウンド中は全ての事が、この属州を巡って行われます。要約すれば、ラウンドは以下のように進んでいきます。

はじめに、プレイヤーはそれぞれカードを一枚選んで、同時に公開します。高いカードを出したほうから順に、各プレイヤーは家系の人間が総督の地位を得られるように、嘆願を行います。立候補者の誰かが選挙中、他の貴族からの充分な支援を受けた時点で、そのプレイヤーがラウンドを勝ち取ったことになり、対応する属州にカウンターを置くことができます。

使ったカードは裏を向けて脇に置いておきます。ラウンドを勝ち取ったプレイヤーが別の属州を選び、そこに黒のポーンを置きます。そして次のラウンドが始まります。

十ラウンドが終了し全てのカードを使い切ったら、プレイヤーは全員、自分のカードを手に戻してゲームを続けます。どのプレイヤーも再び、1〜9と12の全種類のカードを使えるようになるわけです。

カードの公開

各ラウンドの開始時に、プレイヤーはそれぞれ自分の手札からカードを一枚選び、それを自分の前に裏向きにして出します。全員の準備ができたら、カードを全て一斉に表にします。貴族家系はこのカードを、総督人事に介入するために使うのです。

公開されたカードの値を合計し、合計値をはっきりと宣言します。ラウンドを獲得するためには、プレイヤーはこの合計値の過半数を掌握せねばなりません。この過半数となる値も宣言しておきます。これで全てのプレイヤーが、均等な情報のもとに交渉を始められるわけです。

自分のカード一枚だけで既に過半数を抑えているようなプレイヤーがいた場合は、そのプレイヤーが直ちにラウンドを獲得します。

嘆願の順序

誰も直接に過半数を獲得できなかった場合は、嘆願によりラウンドの行方が決まります。こちらの場合の方が普通でしょう。

最も高いカードを出したプレイヤーから嘆願を行います。このプレイヤーが嘆願に失敗したら、二番目に高いカードを出したプレイヤーが嘆願を行い、以下同様に、一番低いカードを出したプレイヤーまで続いていきます。最後のプレイヤーも嘆願に失敗したら、最初に嘆願を行ったプレイヤーが、このラウンドを獲得します。従って、いかなる合意もなされなかった場合でも、各ラウンドは必ず誰か一人が獲得します。

複数のプレイヤーが同じ値のカードを選んでいた場合、ゲーム盤上五つのマスの上に置かれたポーンが左に並んでいるほうから順に手番を行います。この方法によって嘆願権を獲得した同点のプレイヤーは、自分のポーンを一番右に移動させ、そして他のポーンはそれぞれ左にずれて空いたマスを埋めます。ですから、同点の場合にどの貴族家系が先手を取るかというのはそれぞれの場合で異なってきます。

嘆願の流れ

カードが公開され目標となる過半数の値が決まったら直ちに、管理された整然たるゲーム進行のために、コミュニケーションに関する厳格なルールを守らなければならなくなります。

プレイヤー間の話し合いは全て禁止されます。嘆願を行うプレイヤーだけがものを言い、自分の状況分析を提示し、自分に総督の職務を与えるよう説得することができます。他のプレイヤーは嘆願に対してコメントしてはいけません。双方向的な交渉は認められません。

嘆願を行うプレイヤーは必ず他のプレイヤーを一人選び、任意の内容の約束、またはチップの支払いという形によって、具体的な提案を述べます。提案を受けたプレイヤーは、「イエス」または「ノー」の回答を除き、コメントを行うことはできません。他のプレイヤーは、自分の舌がどれほど動きたくてたまらないと主張していようと、黙っていなければなりません。

選んだプレイヤーに提案が拒絶された場合、続く嘆願において、このプレイヤーにはそれ以上の交渉を持ちかけることはできません。嘆願する貴族家系の支援を拒絶したという事実には後戻りが効かないのです。

他方、選ばれたプレイヤーが提案を受諾した場合は、嘆願を行ったプレイヤーは約束しただけのチップを、家系の金庫から取ってきて渡します。見返りに、嘆願を行ったプレイヤーは、受諾したプレイヤーの公開カードを受け取り、自分自身のカードに添えて置きます。但し、嘆願を行ったプレイヤーには、それ以上の約束を守る義務はありません。

嘆願中のプレイヤーがまだ過半数を獲得できていないのであれば、一人また一人と別のプレイヤーへのロビー活動に移ることができます。

この手順は、嘆願を行うプレイヤーが過半数を獲得してラウンドを勝ち取るか、あるいは全員にロビー活動をし尽くしてしまうかするまで続きます。

プレイヤーが他の全員に話を持ちかけ、それでも過半数に到達しなかったのであれば、このプレイヤーの嘆願は失敗に終わることになります。この場合でも、このプレイヤーは集めたカードを全て残しておきます。

そして次のプレイヤーが嘆願を開始します。しかし、すでに自分のカードを明け渡したプレイヤーは嘆願を行うことができず、また手番の流れからも排除されます。

複数のカードを持っているプレイヤーに提案を行う場合、この提案は常に全てのカードが対象とされ、提案が受諾されたら必ず全てのカードが明け渡されます。何枚かだけ渡して残りは持っておくということはできません。

総督の候補指名と選出

必要な過半数を獲得したら直ちに、そのプレイヤーは自分のカウンターを一つ、黒のポーンが立っている属州に置くことができます。このプレイヤーは属州統治の候補者指名を受けたことになりますが、しかしまだ総督に任命されたわけではありません。カウンターが足りなかった場合、つまり既に五つ全てのカウンターを盤上に置いていた場合は、カウンターを置くことなくラウンドは終了します。

すでに自分のカウンターが一つ置かれている属州で過半数を獲得した場合は、プレイヤーは遂にその属州の総督の地位を獲得します。新しい総督には、属州の価値に等しい額のチップが国庫から授与されます。この当選したプレイヤーは、自分のカウンター一つを使って、属州の価値が書かれているところを覆います。他のカウンターは全て、この属州から撤去して元の所有者のところに戻します。この属州の体制は確定したので、以降は黒のポーンをここに置くことができなくなります。

各ラウンドの最後に、ラウンドを獲得したプレイヤーは別の属州を選び、そこに黒のポーンを置きます。カウンターは置かれていても構いませんが、総督はまだ選出されていない属州でなければなりません。勿論、七属州のうち六州で総督が任命された後は、最後の決定が行われるまで黒のポーンは七番目の属州に留まります。

連結された属州

隣接する属州のいくつかは、数字の5が書かれた特殊な記号によって連結されています。一人のプレイヤーがこの連結した属州の両方で総督に任命された場合、そのプレイヤーは国庫から追加で5のチップを受け取ります。

勝利条件

全ての属州において総督の職が決せられたら、ゲームは終了となります。プレイヤーは自分のチップを公開し、最も裕福なプレイヤーが勝利します。

自由交渉

標準ゲームにおける厳格なコミュニケーションのルールを和らげようということならば、ここに紹介する、時間のかかる変形ルールをきっと採用することになるでしょう。

誰の目にも明かな第一の変更点は、ロビー活動の手順において双方向の交渉を許可することです。支持を求める嘆願に対して応答することができるようになります。このルールでも、他のプレイヤーは全員黙っていなければいけません。

更に踏み込んで、全プレイヤー間の自由交渉を認めることもできます。必要な過半数の票を支配するような連合が形成され、ラウンドの勝者が承認されたら、そのラウンドは直ちに終了します。

この最後の変形ルールでは、意見の一致無しには勝利者が決定しないので、ゲーム盤上のポーンは不要です。ここで決定無しにラウンドを終了させるようにすることも可能です。一番および二番目に高いカードを出したプレイヤーしか過半数を作ることができないというようにすれば、ゲームに刺激的な対立を生じさせることができます。

短縮ゲーム

時間が押している場合、非常に短縮された「総督」を遊んでみることもできます。ゲーム開始時に、各プレイヤーは1から7までのカードを受け取ります。各属州に黒のポーンは一度しか置かれません。ラウンドを勝ち取ったら即座に総督になります。ゲームは7ラウンドで終了となります。