アリストテレス『詩学』第十二章(松浦嘉一訳) ※書きかけ

■■ 第十二章 ■■

 トラゴーディアの組織的要素として取扱はれる、諸部分に就いては、前章に於いて、述べ終つた。然しその量、即ち、外形的に、如何なる部分部分に分けられるかと言へば次のやうな部分に分けられる。序詞(プロロゴス)*1、挿曲(エペイソディオン、「幕」)、結尾(エクソドス)並びに登場歌(パロドス)と間《あひ》の歌(スタシモン)との二つに分れた舞謡曲(コリコン、即ちコーラスの舞謡歌)の部分とである。この登場歌と間《あひ》の歌とは、すべてのトラゴーディアに共通に用ひられるが、舞台(スケーネー)に於いて歌はれる歌謡と、哀悼歌(コモス)*2とは、トラゴーディアのあるものにのみ存する。序詞とは、コーラスの登場歌に先んずる、すべての部分を言ふ。挿曲とは、全き舞謡曲と舞謡曲との間に挟つた、すべての部分を言ふ。結尾とは、最後の舞謡曲の後に来るすべての部分を言ふ。舞謡曲の部分に於ひて、登場歌とは、コーラスが歌ふ最初の叙述すべてを言ひ、間《あひ》の歌とは、短短長格韻脚もしくは長短格韻脚を含まない舞謡曲の部分を言ふ。哀悼歌とは、コーラスと俳優との合唱で歌はれる所の慟哭《どうこく》の歌を言ふ。トラゴーディアの構成要素として用ひられる諸部分は前に挙げられたが、その量、即ち如何なる区分に分けられるかは、今、述べた所である。


■訳注


■編注

旧字体新字体の変換のほか、常用+人名用の範囲に含まれない漢字等を、以下のように変換またはルビ振りした:
・慟哭:(ルビ振り)